MT至上主義ライダーも満足できる? ヤマハ「MT-09」のY-AMT仕様に乗る!

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2024年09月13日 11:30  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ヤマハ発動機がバイク用の自動変速機「Y-AMT」を開発し、「MT-09」に積んで発売する。MT(マニュアルトランスミッション)が当然とされてきたモーターサイクルを、なぜAT化するのか。メカはどんな構造で、実際に走ったらどうなのか。発売前にサーキットで行われた試乗会で話を聞き、乗ってきた。


いろいろ出てきたクラッチレスMT、どこがどう違う?



モーターサイクルのトランスミッションはMTが当然とされてきた。スクーターの多くがCVT(無段変速機)なので、操る楽しさのために生まれたモーターサイクルに自動変速機は不要という考えが主流だったのかもしれない。



ただ、最近は変化が見られる。



まずは「クイックシフター」の普及だ。スロットルが電子制御化されたことをいかし、発進・停止以外のクラッチ操作を不要とする機構である。



ホンダは欧州の小型車(クルマ)に採用例が多い「デュアル・クラッチ・トランスミッション」(DCT)をツアラー系の車両(バイク)に搭載している。さらに2024年4月には、クラッチ操作を自動化する「Honda E-Clutch」(Eクラッチ)を「CB650R/CBR650R」に投入した。


そして今回は、ヤマハがモーターサイクル用自動変速機「Y-AMT」(ヤマハ・オートメーテッド・マニュアル・トランスミッション)を市場に導入する。同社としては、国内向け生産が終了している大型スポーツツアラー「FJ1300AS」に搭載されていた「YCC-S」(ヤマハ・チップ・コントロール・シフト)に続くものだ。


ちなみに輸入車では、BMWに同種のトランスミッションがある。「ASA」という名称で、アドベンチャーのフラッグシップ「R1300GSアドベンチャー」に搭載しているが、こちらは価格が約350万円なので、別世界の乗り物という印象が強い。



多くの人にとって、まず気になるのは、ホンダが展開している2つのトランスミッションとY-AMTとでは、何がどう違うのかということだろう。



MTと同じギアボックスを使っている点は3つとも同じだ。



DCTはギアを奇数と偶数に分け、その名の通り2枚のクラッチをそれぞれに使い、変速の瞬間に一方のクラッチを切ると同時にもう一方をつなぐという仕組みとなっている。



残るEクラッチと今回のY-AMTは、クラッチは1枚のまま、変速操作に合わせてクラッチとスロットルを電子制御している。



ちなみにクイックシフターは、スロットルを制御するだけでクラッチは動かさない。シフトペダルの動きに合わせてスロットルを瞬時に閉じることができれば、ギアの回転をフリーにして噛み合わせを変えられるからだ。ただし、発進と停止はクラッチがなければできないので、完全にクラッチレスにはできない。

AT限定免許でも乗れるヤマハのY-AMT



Y-AMTとEクラッチの違いで最も目立つのは、Eクラッチにはクラッチレバーとチェンジペダルがあり、Y-AMTにはないことだ。



ヤマハのエンジニアに聞くと、実はこれが、AT限定免許でも運転できるかどうかの判断基準になるという。つまりY-AMTはDCT同様、AT限定免許でも運転可能なのだ。


さらに、Eクラッチは必ず変速しなければいけないのに対し、Y-AMTにはATモード(自動変速)があることも大きな違いだ。ただし、これはAT限定免許の条件ではないという。



チェンジペダルで行っていた変速は、左グリップにある「+/-」のスイッチを人差し指と親指で操作して行う。MTとATの切り替えは、右グリップのスイッチを人差し指で操作する。このあたりはDCTに近い。


「Y-AMT」搭載モデルでサーキットを走行!



Y-AMTは実際に乗るとどうなのか。サーキット(袖ヶ浦フォレストレースウェイ)で試してみた。


Y-AMTを最初に搭載するバイクは、888ccの水冷直列3気筒エンジンを積む「MT-09」だ。クラッチとギアボックスを動かす2つのアクチュエーターはともにエンジンの後方、ギアボックスの上の空間に並んで収まっていた。


キーはモーターサイクルでも採用例が増えているスマートキーで、メーターの手前にあるスイッチを回してオンにし、右グリップにあるスタータースイッチでエンジンを始動する。



メーターにはギアポジションだけでなく、MT/ATの違いも表示される。ATモードになっていることを確認し、左グリップの「+」スイッチを押して1速に入れ、スロットルをひねって走り出し、ピットロードからコースに出た。


発進はスムーズで、その後のシフトも滑らかかつ瞬間的にやってのける。シフトアップのタイミングは絶妙で、ブレーキを掛けると自動的にシフトダウンもしてくれるので、さらにギアを落としたいと思うことはなかった。



緩いコーナーではシフトアップすることもあるが、これはライダーのスピードが足りなかったからだろう。ライディングレベルの低さを恥じたが、ショックはほとんどないので全く怖くなかった。


ビギナーだけでなくベテランにもメリットあり?



勝手に変速することに抵抗がある人は、MTモードを選べばいい。こちらも、変速はショックなく瞬時に行われる。自分がとても上手なライダーになったような気分だ。



ドライブモードの切り替えもあって、ATモードで「D」から「D+」にすると、スロットルのレスポンスが鋭くなるだけでなく、各ギアで引っ張ってからシフトアップするようになる。クルマのATのスポーツモードに近い。



試乗会には、クラッチレバーとチェンジペダルを備えたMT仕様もあった。乗り換えてコースに出ると、いかに自分が適当な変速操作をしているかを思い知らされた。



気持ちが集中しているときはスムーズにシフトできるが、コーナーの進入でブレーキなど他のことに気を取られていると、ショックが出てしまうこともあった。雨の日は転倒につながる可能性もある。Y-AMTは楽なだけでなく安心でもあるのだ。



筆者が所有する2輪車のうち、ホンダ「スーパーカブ」は、自動遠心クラッチを使っているけれどライディングも楽しめる1台に仕上がっている。それを知っていたので、Y-AMTも違和感なくすんなりと受け入れることができたが、おそらくMT至上主義者にも受け入れられるはずだ。



MTのダイレクトなレスポンス、エンジン回転とスピードの伸びの一致、変速時のメカニカル感はそのままに自動化しており、MTに限りなく近いフィーリングとイージーライドを両立しているからだ。「感動創造企業」を理念とするヤマハらしい機構である。



Y-AMT搭載のMT-09は136.4万円。クラッチ付きMT-09より9万円高い。車両重量は196kgでわずか3kgの増加だ。



これからモーターサイクルに乗ろうという人にとっては敷居が低くなるだろうし、筆者のようなベテランライダーにとっては安心・安全な走りにつながるという点で、Y-AMTはとても価値あるテクノロジーだと思った。



森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら(森口将之)

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