“元TBSアナ、38歳おひとり様”で地元に出戻った私の後悔「もし戻れたら…」

0

2024年09月16日 09:00  女子SPA!

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

女子SPA!

『朝ズバッ!』時代、25歳頃の私
 2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(当時は小林悠として活動)。

 TBS退社後は一般男性と結婚、アナウンサーとしての活動を休止し、表立った活動はほとんどありませんでした。2024年8月31日、自身のインスタグラムで婚姻関係の解消を報告。故郷である北海道に“出戻り”、38歳で再スタートを切ったアンヌさんが、現在の心境を綴ります(以下、アンヌさんの寄稿)。

◆“元アナウンサー”でも世の中そんなに甘くない

 アラフォー、おひとり様、今年故郷北海道へUターンをしまして可愛いゴールデンレトリバーと静かに暮らしております、アンヌ遙香と申します。

 私はかつてTBSでアナウンサーとして仕事をしておりました。当時は小林悠という名前で仕事をしておりました。

 情報番組『朝ズバッ!』ではみのもんたさんに鍛えられ、ラジオではプロレスラーの方に技を生放送でかけていただき「〇〇が顔にあたりました」の名実況を残させていただきました(気になる方はネット検索を)。仕事は本当に本当に大好きでしたが、思いもよらず体を壊してしまい、泣く泣く退職。

 8年ほどSNSなどにもほとんど触れずに生活して参りました。このたびいろいろありまして、故郷北海道にゴールデンレトリバー1匹を連れて帰郷。20年ぶりに実家にて父親と同居。そして北海道にてフリーアナウンサーやスクール講師として改めて再始動を果たしています。

 元アナウンサーなんだから、人生イージーモードなんじゃないの? 何をやっても自分の名前をうまく使ってゴリゴリ押していけばお金になるでしょう? と一部の方は思われるかもしれませんが、世の中そんなに甘くないのが実情。

 8年、もしかしたら9年かもしれませんが……のブランクというのは本当にシビアで、私の気持ちとしてはもう一度北海道にて、一からデビューをし直しお仕事をいただいているという感覚なのです。

◆局アナ時代にはわかっていなかったこと

 どの仕事でもそうかもしれませんが、ただひたすら日々の仕事に追われ、「眠すぎる……早く帰りたい……!」と思いながら、足を引きずるようにして出勤し、勤務が終わったら一目散に家に帰って、気づいたら床で寝落ちしている……なんていう生活を繰り返している間は、自分の今の仕事が果たして好きなのかどうか、そして今の自分は幸せなのかどうか、そんなことに思いを馳せる暇もないわけです。

 特に早朝の番組をやっていた頃なんて、1分1秒、疲労困憊の中、自分の体を起こし続けさせると言う感覚に精一杯で、アナウンサーという好きな仕事をしながらお給料をいただいているという現実のありがたさが、まったく、まったくわかっていなかったのです。

 会社を辞めてしばらくしてからやっと気づいたのは、実は……本当に仕事が好きだったということ。

 アナウンサーという仕事は、場合によっては、自分のプライバシーなども週刊誌に暴かれたり、私生活を自ら体を張って削ってまでテレビやラジオへネタを提供したりという、OLなのにかなり特殊な業種と言ってもよいでしょう。そんな生活は自分に向いていないんだ、そもそもアナウンサーなんて、自分にはまったく向いていなかったんだと一時は絶望に近い感情にさいなまれていたこともありました。

◆退社後、初めて自社以外のラジオ番組を聴いてみたら

 ですが、会社を辞めたあと、初めてNHKラジオを聞いたときにやっと気づくことができたんです。それまでの私は自社以外のテレビやラジオを客観的に見たり、聞いたりする余裕すらなかったのですが……。

 その時は『すっぴん!』という番組が放送されていて、アナウンサーの藤井彩子さんが番組に出演されていたのをよく覚えています。肩の力の抜け方といったら……とにかく、面白いことを言ってやろうとか、ここを盛り上げなければいけない!とか、私がずっと仕事で思い続けてきたおかしな邪念のようなものを一切感じさせないお仕事ぶりを発揮されていたのです。

 ただ純粋にアナウンサーとしての仕事を淡々とこなしながらも、ちょっとした言葉の端々からユーモアが垣間見えて、それが非常に心地良いのです。私はそこで初めて、ああ、アナウンサーの仕事ってこれでよかったんだなぁなんて、やっとわかった気がして。

 どうして現役時代にそんなことも気づけなかったんだろうと後悔することもありました。そして今こそ、自分がもしアナウンサーに戻れたら、とてつもなく良い仕事ができる気がする……。そんなふうに厚かましくも思ってしまったり。

 すべては無いものねだりだとわかっています。いざ自分がその環境に置かれれば、もうちょっと休みたいだの、プライベートが充実していなくて疲れているだの言い出すに決まっているのです。状況が変化するたびにさまざまなジレンマが浮かんでくるであろうということは、どの職種も一緒だとはわかっています。

 でも、体を壊したり、東京での20年の生活を手放し北海道に戻ったりと、経験を積んだ私が今思う事は、本当にアナウンサーという仕事は私にとって愛しくてやまないお仕事だったということ。お恥ずかしい限りですが今さら気づいている私。

 一方で退社後の生活もそれは本当に素晴らしいものだったし、どんな経験も私にとってなくてはならないもので、すべてが今の私につながっているということを、当たり前ですが再認識している今日この頃です。

◆半額のお刺身で漬け丼を

 そうそう。おひとり様の方、1人用のお食事、自炊はどうされていますか?

 新生活を営む故郷北海道は食材が豊富で、最高においしいのは皆さんがご存知の通りですが、ただ、1人分のご飯を作るというのが私は本当に苦手。むしろ自分だけのために料理をしようなんて気がサラサラ起きないのです……。

 最近になって、仕事帰り半額のお刺身を買って漬け丼にして食べるということにはまり始めていますが……自分だけのためにおひたしを作ったりとか、今後もう絶対ないだろうなあ。

 札幌での一からのスタート、さて、さて、これからどうなるか。

<文/アンヌ遙香>

【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道生まれ。お茶の水女子大学大学院修了。2010年、TBSに入社。情報番組『朝ズバッ!』、『報道特集』、『たまむすび』などを担当。2016年退社後、現在は故郷札幌を拠点に、MC、コメンテーター、モデルとして活動中。文筆業にも力を入れている。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中

    ニュース設定