【フェンシング】取り戻した「楽しむ」江村美咲、パリ後の復帰戦で日本一「今日が私の理想です」

＜フェンシング全日本選手権＞◇最終日◇16日◇静岡・沼津市総合体育館◇女子サーブル、男子フルーレ

パリ五輪（オリンピック）の女子サーブル団体で「種目初」の銅メダルを獲得した江村美咲（25＝立飛ホールディングス）が、日本一に返り咲いた。

2年ぶり4度目の優勝に涙。五輪に選手、監督で出場した父宏二さん（63）の3度を超えた。

準々決勝、準決勝で銅メンバーの高嶋理紗、尾崎世梨を連破。パリでは失っていた「楽しむ」理想像を取り戻し、次の28年ロサンゼルス五輪で個人、団体とも金メダルへ再出発した。

涙があふれた。笑顔が戻った。江村が帰ってきた。決勝で小林かなえに15−8で完勝。「つらすぎた」というパリの重圧、その日々の練習相手だった小林への感謝がこみ上げる。

客席の父宏二さん、弟で4年後のロスを一緒に目指す凌平から祝福される粋な演出に「今日はすごくワクワクして楽しめた」。

銅のチームメート高嶋に15−11、尾崎には15−7。8月は練習日ゼロでも、モットーを取り戻した世界女王は強かった。

男女を通じて日本初の世界2連覇も、金メダル最有力と騒がれた個人で3回戦敗退。旗手の重圧も含め、当時は「分からない」と放心状態だった。

約1カ月半が経過し「一番の理由は体調」と答えを導き出した。

「選手村で熟睡できた日が1日もなく、本来の動作ができなかった」

結果「楽しむ」気持ちまで失い、心身のバランスが決壊した。

鎖を外すため掲げた。舞台は異なるが「パリのリベンジを全日本で」。

東京五輪の後は燃え尽き症候群に陥ったが「楽しむ」を再インストールし、ロスへ「個人、団体で金という目標が残った。リベンジしたい」と前進した。

控えめなタイプだが、珍しく断言も出た。

「今日が、これが私が理想です！」

復帰戦から、信じる正しい道に戻ることができた。【木下淳】