愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「世界が注目する“アメリカ雇用統計”と“自民党総裁選”の気になる政策」を解説

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2024年09月19日 20:10  TOKYO FM +

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愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「世界が注目する“アメリカ雇用統計”と“自民党総裁選”の気になる政策」を解説
本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

9月11日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「世界が注目する“アメリカ雇用統計”と“自民党総裁選”の気になる政策」というテーマでお話を伺いました。


(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保



◆先月に続き月初に大きく動いた日本の株式市場 その要因は?

浜崎:それでは今回、宗さまには「世界が注目する“アメリカ雇用統計”と“自民党総裁選”の気になる政策」についてお話しいただきます。

やしろ:日本の株式市場は先月8月初めの乱高下に続き、今月9月に入ってまたすぐに大きく動きましたが、なぜこのタイミングなのでしょうか?

宗正:先月8月の初めに、日経平均株価は史上最大の下げ幅と上げ幅を連日で記録しました。そしてまた、9月に入ってすぐに大きく動き始めた。株式市場を動かす要因は常にいくつかありますが、今はその1つがアメリカの景気後退懸念です。アメリカの景気は後退するのかしないのか、それを判断する指標として世界が注目しているのが、アメリカの雇用統計です。

アメリカの雇用統計は、毎月第1金曜日にアメリカの労働省が発表します。夏時間の時は日本時間の21時30分、冬時間の時は22時30分に発表されます。その内容を見て、(投資家などは)アメリカの景気は今後どうなるのかと予想します。アメリカの景気は、日本の株式市場にも影響を与えますから、それもあって最近は月初の第一週目、特に週末から株価が大きく動いています。

アメリカの景気(GDP国内総生産)の約7割が、個人の消費活動なんですよ。収入が安定しなければお買い物はできない、つまり雇用情勢の影響が大きいわけですよね。そしてアメリカのGDPは世界のGDPの約2割を占めていますから、世界経済も動かしますし、世界中が注目するということです。

やしろ:世界中が注目するアメリカの雇用統計ですが、その内容と特に見るべき点について教えてください。

宗正:アメリカの雇用統計には、文字通り雇用情勢に関わるデータが10項目以上含まれています。

やしろ:そんなにあるんですか?

宗正:中でも注目されているものが3つあります。1つが非農業部門の雇用者数。農業部門を含まない雇用者数です。そして2つ目が失業率で、3つ目が平均時給。

非農業部門の雇用者数について、なぜ農業部門を含まないかというと、農業に従事する人の数は景気にあまり左右されないからです。雇用者数が増えれば増えるほど景気は良いという見方になります。

そして2つ目の失業率。失業率の計算方法は国によって異なります。アメリカの場合、失業者の数を労働人口で割って算出します。失業者の数は「16歳以上の働く意思を持つ人(働く意思はあるが職についてない人)」をカウントします。働きたくない人は最初から職を求めていませんから、「失業者」とは言わないわけです。労働人口は、失業者数と就業者数を足し合わせた数です。

そして3つ目の平均時給。これはイメージしやすいですよね。平均的な時給が上がれば上がるほど、個人消費が拡大しやすくて景気にも良いだろうという見方です。

やしろ:アメリカの雇用統計とマーケットの動きはどのように関係しているのでしょうか。

宗正:大事なことは、事前の予想水準と実際に発表された数字に、どれ位の開きがあるかということです。マーケットは、事前に予想した数字を瞬時に織り込んでいきます。世の中の投資家が「大体これくらいだろうな」と予想した瞬間から織り込んでいる、だから実際に出た数字と開きがあるとそこでまた動くわけです。要は事前の予想と比較して、発表された水準や内容は良かったのか悪かったのか、それを反映する形で株式市場や金利、為替市場は動きます。

例外的な動きもあるので一概には言えませんが、雇用統計の内容が事前の予想よりも良ければ株価は上がりやすい。雇用統計が改善して景気が過熱していると判断できれば、アメリカの政策金利の引き上げにつながるわけです。逆だと、政策金利は引き下げ。アメリカの政策金利が引き上げられるということはドル高につながりますから、つまり円安・ドル高になりやすいということです。

◆総裁選では「金融所得課税の強化」を訴える候補者も

やしろ:そして国内では自民党の総裁選の候補者も出揃い、いよいよ盛り上がってきました。候補者が訴える政策で、宗さま的に気になるものはありますでしょうか。

宗正:金融所得課税に関わる政策ですね。「金融所得課税? そんな税金払ってないよ」という人も多いかと思いますが、実はほとんどの人が払っているんですよ。例えば銀行預金。預金も利息が付くと課税されていて、実は税金を払っています。自動的に引かれるので気付きにくいだけです。

やしろ:株や投資信託などの投資収益にかかるものとは違うのでしょうか?

宗正:投資対象は異なっていても、金融商品から得た所得にかかる税金のことを金融所得課税といいます。これが一律20.315%。株も投資信託も預金も、収益の約5分の1を税金として納めています。

やしろ:金融所得課税が仮に強化された場合には、どのような影響があるのでしょうか。

宗正:今回の自民党総裁選では、「金融所得課税を強化する」という候補者と、「いやいや、まだそれは早いんじゃないか、逆効果になって税収を減らしてしまうのでは」という意見の候補者がいます。

課税強化は、現在の20.315%からさらに税率を引き上げることを意味します。そして強化された場合にはどのようなことが起きるかというと、外国人投資家は日本の株式市場に投資しなくなってしまうでしょうね。株式をたくさん持っている日本の富裕層が、もっと税率の低い諸外国に出て行ってしまう可能性もあります。

ちなみに現職の岸田総理も、今から3年前の2021年10月の総裁選では、「金融所得課税の強化」を打ち出していました。ところが岸田総理の当選が確実視された途端、日経平均株価は6日間で約1,800円も下がってしまった。今は株価が日々大きく乱高下しているので「6日間で1,800円って大したことないじゃん」と思う人もいるかもしれませんが、当時は大きかった。それだけマーケットにマイナスのインパクトを与えてしまったので、結局、岸田総理は在任中に手をつけなかったんですよね。

やしろ:一方で政府からは投資をどんどん、私たちに推奨するような発言や動きもありました。新NISAも始まりましたし、このタイミングで投資を始めた方も多いと思います。そうした方たちにとっては、総裁選で総理が変わって、急に税率が上がるっていうことも可能性としてはあるということですよね。

宗正:あり得ますよね。ただ、この国は少子高齢化がどんどん進んでいます。生産年齢人口は減り続けて、社会保障費は増えていくわけですよ。つまり、何らかの税収を増やす必要があります。

◆富裕層への課税強化は“大した額にはならない”?

やしろ:新たな税収を確保するために富裕層、いわゆる高額所得者に対する課税を強化する方法も選択肢の1つだと思うのですが、いかがでしょうか。

宗正:足りない分は、富裕層に納めてもらう。実はこれって、過去から検討されてきてはいるんです。「1億円の壁」という単語があります。所得が増えれば増えるほど、累進課税で所得税率は上がりますよね。ところが合計所得が1億円を超えると、そこをピークに今度は逆に税金の負担率は下がっていく、そんな傾向があります。

ちなみに累進課税はどれくらい凄いのか、課税所得4,000万円以上の富裕層で最大税率45%。そこに住民税の10%が加わりますから、最大で55%の課税。「結局は税金で半分持っていかれるけどね」なんて言っている人がいますよね。決して大げさな話ではなくて、あれは事実なんですよ。

やしろ:すごく取られているなという感じはします。でも、ちゃんとお金を持っている人から取ってくれているな、という気もします。

宗正:今の発言、世のお金持ちを敵に回しましたね(笑)。

やしろ:本当ですよね(笑)。でも個人的な意見ですけれど、お金を1億2億、それ以上稼いでいる方が少しだけ多く払ってくれて楽になる人が増えるんだったら、それが良いなと思っちゃいます。

宗正:そういう検討も過去にはされてきました。ところが今お話ししたように、合計所得1億円をピークに、税金の負担率が下がる傾向があります。なぜかと言えば、この国の富裕層・お金持ちは、株式投資などの金融所得の割合が高いからなんです。株式投資で得た収益には、先程お話したように20.315%しか課税されない。

超富裕層を対象にした増税策も検討されてはきましたが、この国の全体人口に占める超富裕層の割合はそこまで高くない。だから彼らに重税を課しても、結局、税収全体に占めるインパクトは大した額じゃなかった。

「じゃあ、どこから?」となると、結局は人口の一番厚いところから税収を確保という政策にどうしてもなってしまたのが、ここまでの流れなんですよね。

やしろ:もうちょっと世の中って、上手くお金を回せたりしないのかな? と思いますが難しい問題なんですね。

宗正:そうですね。たった1つの政策の中にも、そこから生まれる課題や自分自身への影響って、今のような考え方をしていけばかなり拡がります。そうなった時に、どうすれば対処できるのか? という、特に生活設計や人生計画を普段から考えておく必要があると思いますね。

やしろ:ありがとうございます。ということで「宗正彰の愛と経済と宗さまと」、AuDeeにて、毎月10日20日30日に配信でございます。

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もっといろいろな経済のお話が聞きたいという方は、宗さまのAuDee(オーディー)「宗正彰の愛と経済と宗さまと」でも聴けます。毎月10日、20日、30日に配信していますので、そちらもぜひチェックしてください。


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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月〜木曜17:00〜19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ〜)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/

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