前回優勝の8号車ARTA、新加入した松下信治のマインドの変化とチームとのケミストリー。SUGO戦でも注目の1台に

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2024年09月20日 20:00  AUTOSPORT web

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前回、スーパーGTでシビックの初優勝を飾った8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT。2戦続けての活躍なるか。
 前回、スーパーGT第4戦富士で見事、ホンダシビック・タイプR-GTの初優勝を飾った8号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT。サクセスウエイトの面で有利な条件が揃っていたとはいえ、予選ポールポジションからの圧倒的な優勝には、野尻智紀、松下信治、そしてチームのメンテナンスを担当するTEAM MUGENのポテンシャルが十分に発揮された結果でもあった。シーズン序盤にはミスやアクシデントが続いたが、そこからのどのように巻き返したのか。松下信治と8号車を担当する一瀬俊浩エンジニアに聞いた。

 今季、8号車ARTAに加入した松下信治。定評ある速さで開幕戦の岡山の予選Q1でもトップタイムを狙えるパフォーマンスを見せていた最中、松下は最終コーナーで飛び出して四輪脱輪のタイム抹消、8号車はピットレーンスタートとなった。2戦目の8号車は上位を走行中に駆動系トラブル発生と、まったく結果が出せていない状況だった。当然、新加入した松下も苦しいタイミングで歯痒い思いを抱えていた。

「そうですね。やっぱりミスもあったし、なんて言うのかな、『できるはずのことができない』というのが、やはりドライバー的には一番つらいですからね」と、第4戦の優勝後に語った松下。

「でも、苦しい時間はあったんですけど、僕はいつもそうなんですけど、やっぱり失敗している時こそ、何か得るものが本当にある。GTで勝ちましたけど、低い姿勢というか、それは謙虚という意味じゃないんですけど、そういう時の方が得られるものが多い。今回(第4戦富士)も最初のペースのセーブの仕方とかもまだまだ課題はあるので、頑張りたいなとポジティブな思いがあります」と続けた松下信治。

 その姿勢、マインドの変化には、チームメイトは育成時代のアドバイザーだった野尻智紀がチームメイトとなったからなのか、それともARTA MUGEN という8号車に入った影響からなのか。

「去年までのリアル・レーシングでも、ものすごくしっかりやってくれましたけど、8号車はエンジニアの数が多くて、エンジニアのキャラ、チームの求めていることと僕が求めていることが最初はわからなかったですけど、慣れてきてどんどん深くなって、今はいい状態にあるのかなと思います」と松下。

 第4戦の優勝会見でも、二人一組のGTならではの戦い方について松下が話していた内容が新鮮だった。

「ドライバー同士で若干、ドライビングスタイルや好みが違うので、そういうところをお互い一歩譲り、合わせていくことで、レースペースが最終的により速くなるのを今回見た気がした」と松下。

 このことについて、さらに詳しく聞いてみる。

「やっぱり、不得意とかじゃないですけど『ここのコーナーはこっちの方が速いね』とかはあって『ぶっちゃけ、どっちに合わせた方がクルマ的に速いの?』と言う話し合いをしてきました。そこは本当にエンジニアも含めてコミュニケーションを良くして、今はすごくうまくいっているのかなと」と話す松下。

 8号車担当の一瀬エンジニアも、その松下の話の内容に同意する。

「松下選手と野尻選手の差と言いますか、結構、運転が違うんですよね。それぞれ速いコーナー、遅いコーナーが若干ありまして、富士では野尻選手の得意としている部分が多く出ていました。セットアップとしては、ふたりが満足する100パーセントのクルマを追い求めるのですけど、やっぱり動かし方の違いからの挙動の差が出てしまいます」

「富士で言うと比較的、野尻選手がバランスが良くて、松下選手に100パーセント自信を持って走れるクルマを提供できていないという現状がありました。そこを追い求めていくと、予選のQ1とQ2でビックチェンジをしないといけなくなるので、それは現実的ではないので、申し訳ないけど運転の方で合わせて欲しいと」

「ラウンド2、ラウンド3が終わった段階でその状況を発見していたので、僕だけではなくてエンジニアチームみんなでデータを見て、大雑把な言い方ですと『この走り方はここがプラス、ここがマイナスだからここのコーナーは野尻選手スタイル、ここは松下選手スタイルで走ろう』と。もちろん、それで合わせに行ってもできる/できないがありますが、ドライバーとエンジニアとしての方向性がいいところに収まるようになって、前回はそれがうまく機能したなと思っています」と、一瀬エンジニア。

 今週末のSUGOに関してはサクセスウエイト52kgということから燃料リストリクター制限が1段階入ることになるが、チャンスがないわけではなさそうだ。

「SUGOで言うと、ふたりの差は出にくいんじゃないかなと思っています。もちろん、上位を狙っていかないと、36号車(au TOM'S GR Supra)、100号車(STANLEY CIVIC TYPE R-GT)にもビハインドの状況ですからね。少なくとも表彰台は狙っていきたいなと思っています」と一瀬エンジニア。

 松下も、現在のチーム、そしてエンジニアに大きな期待を持つ。

「TEAM MUGENはSF(スーパーフォーミュラ)でも一番強いチームのひとつですから、やっぱりエンジニアの引き出しの多さとかデータの見方とかいろいろ強い部分があると思うので、そういうところはすごく助けになっていると思います」

 野尻と松下、そしてチームが融合していい状態にある8号車ARTA、今回のSUGOでも上位に来るようなら、チャンピオン争いとしても目が離せない存在となる。

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