上位モデルのQuest 3ではなく、5万円以下で買える「Quest 3S」という選択肢はアリか? 実機を試した

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2024年10月08日 06:11  ITmedia PC USER

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フロントパネルに三眼×2のレンズがあるMeta Quest 3S

 10月15日にVR/MRヘッドセット「Meta Quest 3S」が発売されます。久々に登場する5万円以下のエントリー向けモデルに市場の注目が集まっていますが、発売に先駆けて開催されたメディア向け体験会に参加してきました。


【その他の画像】


 あくまでファーストインプレッションではありますが、初めてのVR/MRヘッドセットデビューに最適かつ、「Meta Quest 2」からの買い替えにも適したモデルだと感じました。これはコストパフォーマンスに優れたVR/MRヘッドセットです。


●Quest 3のプロセッサにQuest 2の表示系を合わせたエントリー機


 2023年に発売された上位モデル「Meta Quest 3」は、かなり完成度の高いVR/MRヘッドセットとなりました。さらに上位の「Quest Pro」を超える要素も多く、次世代モデルとしての役割を果たすフラグシップモデルです。


 しかし、価格が上昇したことから、発売当初の売れ行きは悪かったというウワサがまことしやかに流れたものです。そこで新たに企画されたのが、低価格路線のQuest 3Sというわけです。Quest 3/Quest 2とスペックを見比べてみましょう。


 多くのセンサーを搭載しているVR/MRヘッドセットですが、もっとも重要視するべきはプロセッサの処理能力です。快適な動作をつかさどる要素となるため、できるだけ新しいSoCを採用しているモデルを選びたいところ。


 その点、新たに登場するQuest 3Sは、Quest 3と同じ「Qualcomm Snapdragon XR2 Gen 2」を採用しています。このプロセッサはスタンドアロン型VR/MRヘッドセット用としては2024年10月時点でミドルクラスです。


 ただし、最新ハイエンドプロセッサの「Snapdragon XR2+ Gen 2」を採用した製品は市場にまだ発売されていないため、市販のスタンドアロン型VR/MRヘッドセットの中では最先端を行くモデルといっても間違いではありません。


 Quest 3SはQuest 2と同じく低価格であることを目指したモデルです。そのモデルにQualcomm Snapdragon XR2 Gen 2を採用したということは、Metaが考える現在のVR/MRヘッドセットのスペックは、ここが基準ラインであることを意味しているのでしょう。


 つまり快適なMR/カラーパススルーや複数アプリを同時に動かすマルチタスク、これからMetaがユーザーに提供していきたい新機能を提供するために、必要最低限なプロセッサがQualcomm Snapdragon XR2 Gen 2になるということですね。


 代わりにコストダウンの源となったポイントが表示系です。ディスプレイパネル解像度やレンズの仕様が、1世代前のQuest 2と同じになりました。IPD(瞳孔間距離)の調整機構も手動かつ3段階であり、Quest 2と同じパーツを使っているのだろうかと思えてくるほどです。


●エンタメ用途であれば思う存分楽しめるフレネルレンズ


 2020年発売のQuest 2と同等の表示系を採用しているあたりは気になります。2024年の価値基準で見たときの映像クオリティーはいかがなものでしょうか。


 体験会の会場では他モデルとの比較ができなかったために、あくまで筆者の記憶と照らし合わせての主観となりますが、悪くはありません。


 確かにパンケーキレンズを使っているQuest 3との差はあります。周辺視野はにじんで見えるところがあるし、強い光が見えるシーンではやや飽和してコントラストが低下します。でもQuest 2の表示系はゴッドレイが起きにくいし、スクリーンドアも感じにくい。安価なレンズを使ってはいるけれども、映像の見え方そのものは、SNSなどで指摘されているほど悪くないんですよね。


→・手が届くMRヘッドセット「Meta Quest 3」実機レビュー 買わないと決めていた記者の心が揺れ動いている


 特にVRゲームで遊んだり、映画やアニメを見ているときは何ら問題がありません。低価格機で得られる視界としては十分なクオリティーです。


 注意するべきは小さい文字を読まねばならないシーンです。体験会のデモでブラウザ画面を見るシーンがありましたが、URLなどの文字を読むとなると、クリアな視界のMeta Quest 3の方が明らかに勝っています。


 VR/MRヘッドセットメーカーは今、空間コンピューティングデバイスとしての使い方をアピールしています。Metaも同様で、Quest 3Sもビジネス用途のユースケースがあると伝えています。でも個人的な印象としては、マルチウィンドウ/マルチタスクな使い方をするなら、パンケーキレンズを使ったMeta Quest 3を選んだ方が良いな、と感じますね。


●MR/カラーパススルーのクオリティーは高い


 Meta Quest 3Sはカラーパススルーを可能にする眼を手に入れました。フロントカメラで捉えた現実世界を、デジタル情報と共にカメラ越しに表示する機能です。


 Quest 2のパススルーはモノクロでダイナミックレンジが低く、積極的に使いたいと思えるものではなかったのですが、Meta Quest 3SのビデオパススルーのクオリティーはMeta Quest 3級です。深度センサーは不採用となったため、近くのものを見たときの補正力に差が出るかもしれませんが、実際に使ってみると十分納得がいくものです。


 ビデオパススルーFPSシューティングゲーム「SPATIAL」のプレイシーンをご覧ください。Quest 3Sを被っている記者たちが一体何をやっているのか分からないと思うのですが、プレーヤーの視界には銃やバズーカを持つ敵プレーヤーと、身体を隠す壁が映っています。


 勢いよく首を振ってもパススルーの映像とデジタル情報が自分の眼に吸い付くように追従しているので、酔いにくいというメリットもあります。視界が切り替わりがちなVRゲームよりも、VR/MRヘッドセットに慣れるためのトレーニング用としても活用できそうじゃないですか。


 なお、Metaの説明ではQuest 3を発売してから製品の実利用時間が伸びているとのこと。ユーザーはQuest 3によって良質なカラーのパススルーを利用できるようになったことで、MRゲームやアプリの利用者が増えていると判断しているそうですよ。


●通気性の良いフェースクッションは大発明


 Meta Quest 3Sと同時に発表された、フィットネスゲームに適したQuest 3およびQuest 3S用のフェースクッションも展示されていました。没入感は標準付属のフェースクッションの方が上ですが、こちらはご覧のように通気性に優れており、動きながら使ってもレンズが曇りにくいというメリットがあります。


 VR/MRヘッドセットを用いて運動をしている時のレンズ曇りは、大きな悩みの1つでした。いちいちVR/MRヘッドセットを外してレンズを拭かねばならないのですが、そのときに運動のモチベーションが下がって「今日はもういいか」と感じてしまうんですよね。


 その問題を解決してくれそうなこれらのオプション。Metaの素晴らしき発明品と言ってもいいでしょう。部屋の周囲が見えやすくなるので、狭い部屋でVR/MRヘッドセットを使いたい方にとっては安心感を得られるものだし、Meta Quest 3ユーザーで待ち望んでいた方も多いでしょうね。


●長く使えそうなVR/MRヘッドセットが5万円以下! これはチャンス


 イヤフォン端子がない、IPDの調整が3段階のみ、視野角がちょっと狭く感じるなど、コストダウンするための苦労の気配をあちこちに感じられるQuest 3Sですが、それでも、このモデルのコストパフォーマンスは高いと断言できます。


 むしろ、円安の日本でよく4万8400円という価格で販売できたものだと、拍手したい気持ちもあります。


 映像美を重視する方は従来通りQuest 3を狙った方がいいのは確かですが、これからVR/MRヘッドセットを購入する人には強くオススメできます。使いすぎてバッテリーが劣化してきたたり、コントローラーのスティックに不具合が出てきたりしたQuest 2ユーザーの乗り換えとしても推奨したいですね。



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