世界初3つ折りスマホ「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」に触れる 衝撃の完成度に“未来のスマホ”を見た

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2024年10月10日 06:11  ITmedia Mobile

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深センのHuaweiストア店頭。発売直後ということもあり、3つ折りスマホを触る人々でにぎわっていた

 iPhone 16シリーズに対抗するかのごとく、同時期に発売されたHuawei(ファーウェイ)の3つ折りスマホ「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」。約40万円と高価なスマホだが、発売された中国国内での注目度の高さは折り紙つきだ。今回は筆者が発売に沸く中国深センに渡航し、実機を体験して感じたレポートと3つ折りスマホの可能性について記したい。


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●3つに折れるディスプレイに衝撃 10型タブレットがポケットに入る


 Mate XT ULTIMATE DESIGNでは、本体を閉じた状態で6.4型、一度開くと7.9型、全て開くと10.2型のディスプレイを利用でき、外折りと内折りとそれぞれ異なるヒンジ機構を採用する。


 仕組み的には複数のディスプレイを使うのではなく、1枚の大きなディスプレイを折りたたんでいる。イメージがつかない人は、Galaxy Foldのようなスマートフォンを開いた状態に、カバーディスプレイがそのまま横に広がるものを連想してほしい。実は思った以上に大きいのだ。


 肝心のヒンジは外折り、内折り共に少々固い印象を受けた。Galaxy Z Fold6と比較すると、ディスプレイを開いたり閉じたりする際に「重い」と感じることが多かった。そのため、片手でディスプレイを展開するのは行いにくい印象だ。


 一方でこの固さのおかげか、ディスプレイの角度をしっかり保持できており、端末の自重でディスプレイが勝手に曲がることはなかった。筆者も試しにディスプレイを「Z」の状態にして端末を振ったところ、ディスプレイは動かなかった。


 ディスプレイはUTGと呼ばれる極薄のガラスが使用されており、ある程度の強度を持つ。光の当て方によって折り目は目立つものの、たわみはかなり抑えており、視聴体験としては良好だ。


 ディスプレイもスマートフォン基準の明るいものが採用されているため、10型のタブレット端末として考えるとものすごくディスプレイが明るいのだ。一方でディスプレイのリフレッシュレートは90Hzにとどまるなどの物足りなさはある。次回作以降でのアップグレードに期待したい。


●驚異的な完成度のハードウェア 「スマホ」として使える厚さと重量にも驚き


 ここまでディスプレイを中心に動作感をチェックしたが、Mate XT ULTIMATE DESIGNはそれ以外の性能も高い。


 カメラは5000万画素のメインカメラ、1300万画素の超広角カメラ、1000万画素の望遠カメラ、1600万画素のフロントカメラを備える。このうち、メインカメラは光学式手ブレ補正に加え、絞り羽を持つ可変絞り機構を備える。仕様的にはMate 60シリーズに近いものだという。


 望遠カメラは光学5.5倍。ペリスコープ方式の望遠レンズを採用しており、ズーム性能にも長けている。


 一般的に、折りたたみスマートフォンでは本体スペースの確保や軽量化を理由にカメラ性能は削られがちだが、本機種はフラグシップの名に恥じない高いカメラ性能を持ち合わせている。


 搭載しているプロセッサや通信バンドについては、近年のHuaweiのスマホらしく非公表だ。メモリは16GBとしており、Huaweiの機種としては大容量だ。過去にレビューした機種の傾向から推察すると、中国で製造された独自のプロセッサが採用されていると考えられる。


 通信周りでは中国向けの衛星通信「天通」と「北斗」に対応しており、携帯電話の電波が届かないエリアでも、通話やメッセージの送信が可能だ。


 バッテリーはサイズの異なるものが3つ搭載されており、合計で5600mAhの容量となる。本体を薄型にするためにバッテリーの厚さも1.9mmにするなど、かなり力を入れた部分だ。スマホ本体は66Wの急速充電に加え、50Wのワイヤレス充電にも対応する。ワイヤレス急速充電をアピールする理由は、同社が展開する電気自動車等で充電するニーズだとしている。


 10.2型の大きなディスプレイのスマートフォンを折りたたんでも「普通のスマホ」と呼べるサイズや重量に仕上げたことも驚異的だ。厚さはディスプレイをたたんだ状態で12.8mmと普通のスマートフォンより厚いが、これはiPhoneなどに厚手のケースを装着した状態と大きく変わらない。また、折りたたみスマホのGalaxy Z Fold5のディスプレイを閉じた状態(13.4mm)よりも薄い。


 本体は最薄部が3.6mm、USB端子のある部分でも4.75mmと驚異的な薄さを実現。最薄部が3.6mmという数字は、同社いわくスマートフォンとしては「世界最薄」であり、イヤフォン端子(φ3.5mm)とほぼ変わらない厚さといわれると、そのすごさが分かるはずだ。


 ここまで薄くしただけあって、本体の重量は298gと300gを切っている。ディスプレイを閉じたときは凝縮感のある重さだが、全て展開すると、まるで羽のように軽く感じる。そもそも、10型のディスプレイを持つタブレットで200g台の機種など、比較対象が存在しない。


 ソフトウェアはHarmonyOS 4.2が採用されており、今後はHarmonyOS NEXTへのアップデートも予定されている。現時点ではAndroid OSが根幹にあるため、一般的なスマートフォン向けのアプリが動作するとしている。


●バッテリーの持ちや耐久性に不安も、「5年先の未来」が体験できる


 HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGNは単なる変わり種のスマホでない。「ポケットに入る10型のタブレット」というロマン枠のスマホを、驚異的な完成度で市場に出したことを評価したい。


 本機を触って感じた第一印象は「圧倒的な完成度の高さ」だ。世界初の3つ折りスマホというだけでも衝撃的だが、これを前述してきた卓越したハードウェアで市場に放ったのだから驚きだ。現時点で市場に出せるものとしては最高レベルの完成度と考えたい。


 現時点でこのような3つ折りスマホを出してこられるメーカーはほとんどない。それこそHuaweiと分離独立したHONORしか存在しないと評価したい。


 その理由は、ディスプレイが「外側に折れる機種」と「内側に折れる機種」の両方を展開しているからだ。これらを開発できる技術力、高価でも販売できる高いブランド力があるからこそ、40万円のMate XT ULTIMATE DESIGNは世に送り出せた商品だ。


 その一方で、バッテリーの容量の少なさは直近で改善すべき課題だ。正直なところ、Mate XT ULTIMATE DESIGNのバッテリー持ちは短時間の使用でも「あまりよくない」と感じた。


 ディスプレイの点灯を中心にした体験でも30分でバッテリーが3%ほど消費していたため、実際に動画視聴やゲームなどで利用するとさらに消費すると予想される。確かに5600mAhの容量はスマートフォンとして見れば大容量だが、10型のディスプレイを持つタブレット端末としては心もとない数字だ。


 あとは本体の強度や耐久性に不安が残る。同社の2つ折りスマートフォンにはある防水性能も備えていないため、より慎重な取り扱いが必要に感じた。ディスプレイの開き方にも手順があり、3つのディスプレイを全て開くにはZ字の形状にする必要がある。これを無視して2枚目を開き切った状態で開こうとすると、ディスプレイが破損する可能性があるとメーカーからは説明された。


 一方で、3つ折りスマホの可能性も大いに感じた。展開して10型のディスプレイを持ち歩けるという点では、動画や電子書籍をはじめとしたコンテンツの視聴には大きな威力を発揮する。特に10型のサイズではスマートフォン向けの動画アプリも黒帯が少ない状態で視聴できるため、コンテンツの表示サイズがとても大きいのだ。この点では現状の2つ折りスマートフォンよりも「大ディスプレイ」を実感できる。


 ポケットに収まる究極のエンタメ視聴デバイスとして、3つ折りスマートフォンは君臨するはずだ。


 Huaweiの場合、独自のHarmonyOS NEXTに移行することを考えると、対応する家電や自動車などと組み合わせてより高度な連携、3つ折りならではの特徴的な動作を可能にしてくるだろう。


 専用プラットフォームによる「3つに折れるディスプレイ」に対し、操作UIを柔軟に変更できるアプリの登場。独自プロセッサと専用OSによる高度な最適化によって、少ないバッテリー容量でも長時間使えるようになることが期待される。


 大ディスプレイを生かして家電や自動車を制御するスマートハブを常時表示する、PCやテレビのディスプレイを大ディスプレイに映し出して操作する、といった利用シーンも想定される。この他にも、今からは想像のつかない使い方も可能になっていくだろう。


 そんな携帯電話のカテゴリーに新たな形を提案した「3つ折り」のスマートフォン。まだまだ荒削り感はあるものの、今後の携帯電話の歴史に刻まれ、これからの新たな時代を示すマイルストーンになるだろう。


 2つ折りのスマートフォンは2019年にGalaxy Foldが登場して以降、5年の歳月をかけて世間に浸透した。これと同様に、3つ折りのスマートフォンも今後5年をかけて浸透していくことになるはずだ。


 そして、5年後には早ければ6G通信のサービス開始も予想される。3つ折りスマホはより大容量、低遅延通信をうたう6G通信の時代の「コンテンツ消費」を象徴するスマートフォンになると考える。


 Mate XT ULTIMATE DESIGNは約40万円と高価でまだ一般的な選択とはいえない。それでも、今後数年で競合他社から多くの製品が登場し、20万円台の価格まで落ち着けば「大画面タブレットとスマートフォンを両立させる端末」として、今の2つ折りスマホ並みの知名度を得るかもしれない。


 その理由は「関心度の高さ」だ。実際、販売地域の中国では600万を超える予約注文が入り、製品体験すら予約制ながら都市部を中心に埋まっていた。発売直後の店頭でも多くの人が体験し、実際に購入して使うユーザーを目の当たりにした。高価でも3つ折りスマホへの関心度の高さは想像以上だった。


 この近未来感あふれるスマートフォンに触れれば「5年先の未来」が体験できる。今から10年ほど前にイラストなどで描かれた「ディスプレイの折りたためる未来の携帯電話」の姿は、空想上の未来の話ではない。もう現実世界で手に取って体感できる最先端のスマートフォンなのだ。


●著者プロフィール


佐藤颯


 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。


 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。


・X:https://twitter.com/Hayaponlog


・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/



このニュースに関するつぶやき

  • HUAWEIは、米国からの規制で高度な半導体露光装置等が使えないはずなんだけどハイエンドスマホは作り続けているよね。で、世界初の3つ折りで40万スマホですか。要りませんw
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