海外メディアの報道で振り返る、約4カ月間F1パドックを賑わした『ハースとトヨタ提携』の噂の解答

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2024年10月11日 14:20  AUTOSPORT web

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ハースF1マシンのリヤウイングに入れられたTOYOTA GAZOO Racingのロゴ
 TOYOTA GAZOO Racing(TGR)とハースF1は10月11日、車両開発と人材交流において協力関係を結ぶことに合意し、基本合意書を締結した。

 TGRとハースF1の提携の噂の発端は6月15〜16日に決勝が行われたWEC世界耐久選手権第4戦『第92回ル・マン24時間レース』だった。ハースF1の小松礼雄チーム代表がTGR WECチームを訪れていたことが目撃され、SNSの投稿など一部で憶測が飛んだ。それでも、この時点では各国のニュースサイトも極端に目立った報じ方はしなかった。

 ただ、翌月の7月5〜7日に開催された2024年F1第12戦イギリスGPのハースF1のガレージにて、トヨタ自動車の加地雅哉TGRモータースポーツ担当部長/技術室室長の姿が国際映像に捉えられると、TGRとハースF1に関する憶測や噂が、瞬く間にF1パドック内を駆け巡った。ハースF1の小松チーム代表はすぐに、「単に親しい友人として招いただけ」であり、「(トヨタとの全面提携とか)話してません」と、全面的に否定したが、憶測は止まることはなかった。

 イギリスGP明けの7月9日には、ハンガリーのモータースポーツ情報サイト『Formula.hu』が「アルファロメオがザウバーに行っていたようなスポンサー契約が締結される可能性がある」とし、さらには「ハースF1は2016年のチームデビュー以来、イタリアのダラーラ社によって製造されてきたが、私たちの情報によると2025年からケルンにあるTGRに部分的、または完全に(製造が)引き継がれる可能性があるという」と記したことで噂が再燃。

 一方、ドイツの老舗自動車雑誌『auto Motor und Sport』のWeb版は7月15日に、2023年夏に自社風洞施設が完成したマクラーレンに代わる新たな風洞顧客をTGRが探しているだけとした上で「トヨタがF1への関与を増やす計画はないだろう」と、噂を否定するニュアンスの記事を掲載し、一旦は噂の勢いも弱まりを見せた。

 その後も、7月16日にF1oversteer.comが報じたような「トヨタのF1復帰は商業的に理にかなっている」といった、風洞の利用や、着々と価値が高まりを見せている現在のF1へ復帰する経済的メリットに触れる記事が各国で見られたが、若手育成を含めた人材交流という具体的な提携内容にまで踏み込んだ記事はなかった。

 なお、オートスポーツwebでは7月20日にF1ジャーナリストの柴田久仁夫氏のコラムにおいて「中堅チームで、そのうえ日本人である小松チーム代表が率いるハースは提携先として最適だ」と、この噂を取り上げている。

 ただ、噂の発端から約4カ月後の10月11日に、実際にTGRとハースF1から発表された基本合意の内容は、多くのメディアが予想した車両開発といった技術分野だけに留まらなかった。自動車産業の発展に貢献することを目指し、TGRのドライバーがハースF1で走行経験を積み、TGRのエンジニア、メカニックがハースのテストに参加し、走行データなどの膨大なデータの解析ノウハウを学ぶということも含まれていた。

 車両開発や人材交流は、パワーユニット供給やフルワークスによるF1復帰といった大胆な予想と比べるとわかりやすいインパクトではないかもしれない。しかし、2009年シーズン末のトヨタのF1撤退以降、世界最高峰であるF1での走行機会、F1でのエンジニアリングノウハウ、メカニカルノウハウを得る機会が限られる状況となっていたTGRの人財にとっては、より大きなチャンスを得ることに繋がる合意であることには違いない。

 TGRドライバー、TGRのエンジニア、メカニックがWEC世界耐久選手権やWRC世界ラリー選手権のみならず、F1世界選手権という世界一速いクルマが走る領域で、今まで以上に存在感を強める日を心待ちにしたい。

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