※このコラムは『わたしの宝物』2話までのネタバレを含んでいます。
■宏樹のモラハラの原因
妻である美羽(松本若菜)にこれでもかというほどのモラハラを浴びせる夫・宏樹(田中圭)。外ヅラの良さに全てのステータスを全振りして生きている彼の根っこは実は気弱で自信のない、普通の心の弱さを持った人間でした。
会社で上司から後輩を庇ったはずが、自分に火の粉がふりかかり……。後輩は感謝しているかと思いきや、「要領悪い。あぁいう上司いると便利だよな」と裏でとディスられ利用されているという。これが普段からかわいがっている後輩なことも、さらに気持ちに追い打ちをかけます。
上司からも後輩からも追い詰められて限界を感じ、心を患う直前まで来ていた宏樹は偶然カフェ店主・浅岡(北村一輝)と出会います。
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■宏樹の抱えていた本音と闇
浅岡はそのコミュ力で宏樹をカフェに呼び込み、出会ったばかりの宏樹の心をほぐし、本音をするすると引き出して行きます。
頑張って働く宏樹を、妻・美羽も支えようとしてくれているのに、その笑顔が自分を嘲笑っているように感じ、辛く当たってしまうこと。
母子手帳の父親の欄に自分の名前が書かれておらず、ショックだったこと。子どもにも同じように強く当たってしまうのではないかと不安なこと……。
会社で抱えたストレスの逃げ場が家庭であるべきですが、彼にとってはこのカフェが心の拠り所になったようです。ただ、宏樹がストレスを感じるたびにお守りのように握るハンドタオルは、昔美羽が貸してくれたもの。
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「独身時代からいつまで借りパクしてんの?」というほど、長年愛用しているようですが、彼の心の拠り所の一つに、無意識ではあるもののまだ美羽の存在があるようです。
■シングルマザーのリアルを知り、心折れる美羽
冬月(深澤辰哉)との子どもを、宏樹の元でこっそり托卵しようと計画していた美羽は、改めて1人で育てることを考え始めます。それもあって、母子手帳の父親欄には宏樹の名前を書くことができずにおり、離婚届には自分の名前をひっそりと書き込みます。
自分自身もシングルマザーの母の元で育った美羽。実際に自分を1人で育て上げた母に尊敬の意味も込めて感謝を伝えると、そこから漏れ出るリアルな本音に美羽は一気にやられてしまいます。
「(母である)自分が死んで美羽が1人になることが怖かった。貧乏で苦労かけて、ひとりぼっちにさせて、美羽には寂しい思いばかり……」と、1人で子どもを育てることの苦しい現実を受け、美羽は「自分には無理だ」と、一気に心に不安に襲われます。
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■最低の言葉が美羽にとっての最高の提案となる奇跡
そんな中、宏樹と美羽は話し合いの場を持ちます。本当は離婚を切り出そうと考えていた美羽ですが、宏樹から先に思わぬ言葉の数々を投げられ、風向きが変わることとなるのです。
宏樹は「本当に子ども欲しい?」と問うなど、ほぼレイプ同然で妊娠したことや母子手帳に宏樹の名前がなかったことで、美羽が「望まない妊娠に戸惑っている」ように感じていたのでしょう。全ての理由が「本当は父親が別の人だから」などとはもちろん知る由もありません。
そして続くのは父親として最低な言葉の数々。
「新しいプロジェクトが始まるから今より忙しくなる。家庭のことは何もできないし、するつもりもない。何も求めないでほしい。金で苦労はかけない。ただ父親の役目はできない」
病む間際とはいえ、ここまで全て放棄するとは「どんだけキャパ狭いんだよ!」と吐き捨てたくなるほどの言葉の数々ですが、これが逆に美羽にとって渡りに船になるのです。
1人で育てる上での大きな課題である「金銭面」と、托卵する際の課題である「罪悪感」。お金だけ援助してくれるとなれば、美羽の不安は解消される上に、宏樹が父としての役割を放棄し、子どもに関わらないのであれば托卵の罪悪感も生まれません。
自らATMとしての立候補ありがとう。選任決定です。まさにモラハラ転じて福となす状態!
■クズだからこそ安心してクズになれる
宏樹がクズであるからこそ、こちらも安心してクズになれるというもの。托卵して生きていくことをはっきりと決意した美羽は、離婚の言葉を飲み込み、母子手帳にも宏樹の名前を書き込みました。
しかし、宏樹は美羽の母の借金まで返していたんですね。今はモラだけれど、昔はもっと優しい人間だった彼を、会社がこうさせてしまったのかもしれません。
宏樹の上司は彼をリーダーに任命するのにも、名誉なことにも関わらず、「やらないなんてないよな?」と、不自然なまでに無理やり圧を与えてくることや、後輩の「パワハラにビビってやたら俺らに優しい」という言葉が気になります。
以前宏樹本人も、ハラスメントで何かトラブルでもあったのでしょうか?
■ふっか死なへんで〜
亡くなったと思われていた冬月がまさかの生存。重傷を負って今は意識がないようですが、生きていてよかった。となると回復すれば美羽を迎えにくることになり、宏樹のもとで托卵して生きていくことを決めた美羽の気持ちをかき乱すことになるでしょう。
また、「父親の役目はできない」と宣言していた宏樹ですが、いざ子どもを前にすると涙を流し、新しい感情が生まれていたようです。
徐々に子どもへの愛情も芽生えれば、万が一美羽が離婚を切り出した際の親権問題にも発展しますし、托卵の事実が表沙汰になるようなことがあれば、そのショックはひとしおでしょう。
冬月の今後と宏樹の気持ちの変化にも期待です。
(やまとなでし子)
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