それは本人も驚く、謎の失速だった。F1第21戦サンパウロGPスプリント予選のSQ1の1回目のアタックを終えて、SQ2進出圏内の14番手にいた角田裕毅(RB)は、満を持して2回目のアタックに出る。特にひどい渋滞があったわけでもなく、3つのセクターでいずれも自己ベストを更新して、コントロールラインを駆け抜けていった。
しかし、タイムは1分11秒121と奮わず、アタックを終えた時点で12番手に終わった。直後にタイムアタックを行っていたフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)、オリバー・ベアマン(ハース)、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、エステバン・オコン(アルピーヌ)、バルテリ・ボッタス(キック・ザウバー)、フランコ・コラピント(ウイリアムズ)の5台のマシンが角田のタイムを上回ったため、角田は18番手に落ち、SQ1脱落となった。
「タフなスプリント予選でした。自分のラップはかなりよかったと思いますし、通常であれば、SQ2を通過できるだけのペースがあったはずですが、残念ながら、ペースが足りませんでした。周回タイムにこれほど差があるとは驚きです」
スプリント予選を終えた直後、角田は予想外の結果に驚きを隠さなかった。
スプリント・フォーマットは今シーズン6回予定されており、サンパウロGPは5回目だった。サンパウロGP前までのスプリント予選で、角田がSQ1で脱落したのは、今シーズン最初の中国GPの19番手だけで、その後はマイアミGPで15番手、オーストリアGPで14番手とSQ2に進出。アメリカGPでは9番手に入っていた。したがって、角田がサンパウロGPのスプリント予選の18番手に驚くのは無理もない。
この日のスプリント予選ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)やルイス・ハミルトン(メルセデス)なども、思うようなパフォーマンスを発揮できなかった。その理由として考えられるのは、バンピーな路面だが、この理由は角田には当てはまらない。なぜなら、角田自身「バンピーな路面は僕たちのクルマの得意とするところ」と語っているからだ。その証拠に、チームメイトのリアム・ローソンはSQ3に進出している。
アメリカGPでトップ10の速さがあったマシンが2週間後に18番手となると、疑われるのはその2週間に起きた出来事となる。角田のマシンはメキシコシティGPの予選でクラッシュ。さらに日曜日の決勝レースでもアルボンと接触した後、バリアに突っ込むというクラッシュに見舞われていた。
レーシングディレクターのアラン・パーメインはこう語る。
「ユウキはSQ1で思うような走りができず、18番手に終わった。これから、ユウキのマシンを徹底的に調査する予定だ」
すでにマシンはパルクフェルメ下に入っているため、現場でできることは限られている。18番手からのスタートという状況を考えた場合、モノコック交換を行い、ピットレーンスタートという戦略も考えられなくはない。