名選手が必ず名監督になれるわけではない。逆に言うと、現役時代の実績がそれほどではなくても、優秀な指導者になれる。彼はその良いお手本だ。
終盤戦を迎えたJリーグで、各チームの監督人事が取り沙汰されている。中でも僕が一番気になったのは、川崎の鬼木監督が今季限りで退任すること。彼がこの8年間で残した功績は素晴らしいのひと言に尽きる。
鬼木さんは風間監督の退任を受け、2017年にコーチから監督に昇格。すると、それまでなかなかタイトルを取れず、「シルバーコレクター」と言われていたチームに、いきなりリーグ優勝のタイトルをもたらした。攻撃的サッカーと勝つサッカーの両立に見事に成功した。
結局、チームを率いた8年間でリーグ優勝4回、ルヴァン杯1回、天皇杯2回と計7つのタイトルを獲得。Jリーグの歴史でこれだけ勝った監督はいないんじゃないかな。これは皮肉ではなくホメているんだけど、首位を独走しすぎて優勝争いがまったく面白くないシーズンもあった(笑)。
戦術的に見れば、目立った特徴はないかもしれない。ただ、(中村)憲剛や家長、小林といったベテランや、強力な外国人選手を気持ち良くプレーさせ、一方で三笘、旗手、守田、田中といった若手も積極的に起用し、次々と日本代表に送り出した。
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長くやっているとどこかで悪い評判も聞こえてきたりするものだけど、彼に関してはそういうこともなかった。俺が俺がとトップダウンで仕切るタイプではなく、選手に寄り添い、うまく気持ちをつかんでいたのだろう。
ここ1、2年は思うように勝てなくなっていたけど、あれだけ主力の退団や海外移籍が続いたら、誰が監督でも難しいよ。その意味では、穴埋めの補強ができなかったフロントの責任のほうが大きい。
とはいえ、プロは結果がすべて。どんなに過去の実績があろうが関係ない。選手に限らず、監督も一年一年が勝負の世界。たとえばプロ野球でも、昨季リーグ優勝した阪神の岡田さん、オリックスの中嶋さんが今季限りで監督をやめているよね。川崎のサポーターは優しいから解任を求める声はあまり聞こえてこなかったけど、鬼木さんは自分でけじめをつけたんじゃないかな。そういう姿勢はプロらしいよ。
今後は五輪代表の監督になるのではという報道もあったけど、どのチームを率いるにしても期待したいね。
そのほか、川崎以外で気になった人事は、鹿島のポポヴィッチ監督と浦和のヘグモ監督のシーズン途中での解任。ここ数年は両チームとも毎年のように監督を交代していて、「またか」という感じだ。
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鹿島はあくまでタイトルにこだわる気持ちはわかるけど、だったら、まずはそれにふさわしいキャスティングが必要。きちんと補強をすべきだ。(親会社の)メルカリは現場に口を出すなら、お金ももっと出すべき。そうでなければ苦しい状況は続くだろう。
一方、浦和はある程度のお金があるのに使い方がヘタ。たくさん補強をしているけど、似たようなタイプばかりで戦力になっていない選手が多い。負けてもお客さんがたくさん入る環境にフロントが甘えているように見える。
本来であれば、両チームにはJリーグを引っ張ってもらわないと困るんだけど、立て直すのは大変そうだね。
構成/渡辺達也
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