2024年シーズンは6回行われるスプリントの最後の一戦となったカタールGPでのスプリント。ランド・ノリス(マクラーレン)はまず、スプリント予選(SQ)でジョージ・ラッセル(メルセデス)を0.063秒差で抑えて、ポールポジションを獲得。19周のスプリントでは最後まで首位を守り続けたが、ファイナルラップの最終コーナーを立ち上がった際に、2番手につけていたチームメイトのオスカー・ピアストリ(マクラーレン)に勝利を譲った。
直前には担当エンジニアのウィル・ジョセフが、「ランド、このままの順位で行ってくれ」と指示を送っていた。にもかかわらずノリスは独断で、チームメイトに勝利を譲った。その行動は、まだマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とドライバーズタイトルを争っていた第21戦サンパウロGPでのスプリントで、ピアストリに優勝を譲ってもらったことへの恩返しだった。
「途中から、彼に勝利を譲らなきゃと思ってたんだ。スプリントでの優勝は、特に目指してない。ワン・ツー・フィニッシュでチームが最大ポイントを取るのが一番の目的だったし、それは果たせたからね」と、チェッカー後のノリス。
それでもそのままトップチェッカーを受けるのがレーシングドライバーの本能というものだろうし、そもそもチームも「そのまま行ってくれ」と無線を飛ばしていた。それにも関わらずチームメイトにきっちりと借りを返すところが、いかにもノリスらしい。
前戦ラスベガスGPでドライバーズタイトル制覇の夢敗れたノリス。だがむしろそれで気持ちが吹っ切れたのか、あるいは初めてタイトル争いの重圧がいかに厳しかったということか、今週末のノリスの表情は実に明るい。それはスプリント終了後、決勝レースに向けて行われた予選で、フェルスタッペン、ジョージ・ラッセル(メルセデス)に及ばず3番手に終わった後も変わらなかった。
「これが精一杯だったよ。上位2台に比べると、速さも足りなかった。タイムはしっかりまとめられたんだけどね。ただフロントロウが獲れなかったとはいえ、レースペースは悪くない。明日(の決勝レース)は、また違った展開になると思うよ」と、語ったノリス。
ノリスの明るさは、決勝レースへの手応えもおそらくあるのだろう。コンストラクターズタイトルを争うフェラーリとの差は、マクラーレンがスプリントでワン・ツー・フィニッシュを果たした一方で彼らが4、5位に終わったことで30ポイントまで広がった。
決勝の結果次第では次戦/最終戦アブダビGPを待たずに、コンストラクターズタイトル制覇を果たすかもしれない。実現すれば、マクラーレンにとって実に1998年以来26年ぶりの頂点への返り咲きとなる。
ふたりのドライバーの関係の良さ、チームの“行け行けムード”、そして何よりノリスの心底レースを楽しんでいる姿を見ると、案外あっさり決めてしまうかもしれない。