個性豊かなペンギン同士の関係性が目を離せないと話題の「すみだペンギン相関図」2025年度版が公開された。「すみだペンギン相関図」とは、すみだ水族館で暮らす56羽のマゼランペンギンの関係性をチャート化したもので、2021年より毎年更新されている。ペンギンたちの個性は実に豊かで、それがゆえに恋愛模様もややこしさ満載。そうした中、今年は初の"すみだ生まれカップル"が成立し、すみだペンギンを推す人々(ファンネーム:羽毛さん)をほっこりさせている。5年目を迎えてますます熱く盛り上がる、すみペン推し活。飼育スタッフの春日さんと、企画広報チームの山口さんに、相関図の作り方や推しペンとの出会い方、最新版の見どころなどを聞いた。
【画像】今年はほっこり、すみだ生まれカップルも爆誕「すみだペンギン相関図2025」■きっかけは飼育員の“井戸端会議”、50羽以上のペンギンは関係性がすごく複雑
毎年12月上旬頃に館内とホームページで公開されている「すみだペンギン相関図」。この時期に更新するのには、実は理由があった。
「マゼランペンギンの恋の季節(繁殖期)は2月頃。気の早い子はすでに大きな声で鳴いていたりと、求愛アピールが激しくなっている子もいます。これからの時期は1年でも特にペンギンたちの個性が豊かになって、見ていて飽きないですし、"推しペン"と出会っていただくにはぴったりの時期なんですよ」
2021年に初公開されて以来、かつては禁断の恋や略奪愛といった"昼ドラ並みのドロドロ感"が話題を集めていたが、今は平和になったという「すみだペンギン相関図」。その作成のきっかけは飼育スタッフたちの"井戸端会議"だったという。
「私たちの仕事のひとつは、ペンギンたちの健康管理。元々飼育スタッフの間では、履歴書みたいな形で1羽1羽の日々の様子を共有していました。でも履歴書だと、ペンギン同士の関係が記録しづらかったんです。しかも50羽以上もいると関係性もすごく複雑で。バックヤードでは飼育スタッフ同士でしょっちゅう『今日、○○と△△が一緒に寝てるの目撃しちゃったんだけど』、『でもあの子、◇◇と夫婦になったばかりじゃ…』、『え、浮気!?』みたいな会話が繰り広げられています(笑)」
■ペンギンの夫婦関係や浮気はどこから? 気になるペンギン相関図の作り方
ペンギンが増えるにつれて、ややこしさも増す関係性。訪れる人に、ペンギンたちの個性を知ってもらい“ペンギンを見に”ではなく、“きなこに会いに”来てもらいたいという思いから作成されたのが、「すみだペンギン相関図」だった。ペンギン1羽1羽の性格や特徴なども添えられた「相関図」は、一般公開されるとたちまち話題に。やがて特定のペンギンを推すファンも現れたことから「ペンギン相関図」も毎年更新されるようになったという。
「相関図の作り方は、まず前年度版に新しく成立したカップルなどを付箋で貼っていくところから始まります。そして最終的にチャートにまとめるのですが、今年はペンギンたちのゴタゴタもいろいろありまして(笑)、付箋も例年以上にいっぱいに。大幅アップデートされた2025年度版の相関図をぜひ楽しんでいただきたいです」
ところで「すみだペンギン相関図」には"夫婦"や"カップル"といった記載があるが、これはどのように認定しているのだろうか。
「ペンギン同士はちゃんとステップを踏んで仲を深めていくんです。2羽で羽繕いし合っていたら"いい感じ"になる可能性大。それが頻繁になって2羽で泳いだりなど、一緒にいる時間が増えて、やがて同じ場所で寝たらラブラブですね。交尾行動をしたらカップル成立。卵を産んだら夫婦認定しています」
とは言え、めでたく夫婦になってもいろいろあるようで……。
「人間でも『どこから浮気?』という基準は人それぞれですよね。ペンギンも同じで、別の子と一緒に寝てても本妻の貫禄を見せる子もいれば、羽繕いだけでブチ切れる子もいます」
そんな春日さんが最近、心配なのがチェリー×ススキ×サワーの三角関係だ。
「もともとチェリーとススキは、大の仲良しの女友だちだったんです。ところがチェリーがススキの夫・サワーのことを好きになってしまったみたいで。以来、チェリーがススキに喧嘩をふっかけるようになってしまったんですよ。そんな子じゃなかったのに…」
そうしたペンギン同士のいざこざに、飼育スタッフはどこまで介入するのだろうか?
「流血沙汰に発展しそうだったら、健康管理の意味でも『まあまあ、頭を冷やしなさい』という感じで間に入ることはあります。ですが、結局はペンギン同士で決着をつけないと収まらないので、見守るしかないですね。ちなみに前述のサワーは揉めごとの仲裁がとても上手で、そんなところもモテる秘訣かもしれないです」
■飼育長推しも? ペンギンだけじゃない、すみだ水族館の推し活事情
そうしたペンギンたちの動向に熱い視線を注ぐのが「羽毛さん」たちだ。羽毛さんとは、すみだ水族館のペンギンを推してくれている人たちのファンネームで、SNSには多数の「#羽毛さん日誌」が投稿されている。
「羽毛さんたちの投稿で気付かされることも多く、私たちも『#羽毛さん日誌』は日々読ませていただいています。最近、特に羽毛さんたちが注目してくださっているのが、すみだ水族館で生まれた同士の初のカップルのわっしょい×つむぎです。ややこしい恋愛模様が繰り広げられる中、幼なじみから順当に愛を育んだ"わしょつむ"が『尊い!』と羽毛さんたちも、暖かく見守ってくださっています」
姫オーラを漂わせている子や、常にオラついている子、写真を撮られるのが大好きな子(カメラを向けると止まってくれる)などなど、個性豊かなすみだ水族館のペンギンたち。箱推しはもちろん、特定のペンギンを推す人も増えているようだ。
「いわゆるアイドル顔というんでしょうか。さくら、しらたま、こうめといった、小さくて丸っこくて目のくりくりしたアイドル顔の子に人気が集まりやすい傾向があります。SNSでは、あめの投稿も多いですね。ぷえっぷえっという赤ちゃん返りした鳴き声が可愛いと評判です」
すみだ水族館では相関図のほかにも、20問の診断に答えるだけで推しペンが見つかる「推しペン診断」や、ペンギンが腕に付けているカラーバンドの色で個体識別ができる「ぺんたごん」といった、推しペン活動をさらに楽しめるシステムをホームページで展開している。
「今では本当にたくさんの方が推しペン活動をしてくださるようになりました。推しペンと同じバンドをつけたぬいぐるみを抱っこして、水槽を覗いているお子さんを見かけるとほっこりしますね。羽毛さん同士のカップル成立もあるようで、水槽の前でブライダルフォトを撮ってくださった方もいました。中には飼育長の推し活をされている方もいて。飼育長の名前入りうちわを持参して来館された時にはびっくりしました(笑)」
オットセイやチンアナゴ、ウミガメなどを推す人もいて、ますます捗るすみだ水族館の推し活。2024年版からは英語版の「すみだペンギン相関図」も公開され、推しペン活動もグローバルに広がっていきそうだ。
「当館は海外からのお客様も多く、最近は『アンズはどこ?』などと聞かれることも増えました。相関図はホームページで公開していますので、気になる子がいたら来館していただいて、相関図に書かれていることの"答え合わせ"をしていただけたら。飼育スタッフにも気軽に声をかけていただけたらうれしいです」
取材・文/児玉澄子
【プロフィール】
すみだ水族館 飼育スタッフ 春日さん
推しペン:こうめ♀
プールにいるといつもそばに寄ってきてくれて、仲良しだから。あごを乗せてくれるところもたまらなくかわいい。
企画広報チーム 山口さん
推しペン:ももは♀
すみだ水族館の広報になって、初めて生まれるところから携わった子で思い入れが深い。生まれる前からかわいくて、生まれてからも、大きくなってもかわいい。