2022年2月に築58年の一戸建て(平家)の空き家を148万円で購入し、リノベーションして暮らしているセセさん。9歳と6歳のお子さんを育てるシングルマザーで、国内外でのインテリアコーディネーターとしての経験をお家作りに生かしています。
古い建物の雰囲気を損なうことなく、明るく暮らしやすいお家に改装していく様子は、Instagram(@sese_goodlife)で発信されています。
後編では、レトロ感をいかしたキッチンのリノベや、広々とした印象のリビングの家具選び、また照明選びのポイントなどについて聞きました。
◆古いキッチンに食洗機を入れた方法
リノベーションをする際、前編で紹介した「断熱」の次にセセさんがこだわったのは、「キッチンに食洗機を入れること」でした。
「業者さんにキッチンのリノベーションの相談をすると、システムキッチンを提案されることが多かったんです。でも、私は古い建物が好きなので、キッチンをすべて入れ替えると、せっかくの雰囲気が台無しになってしまうと思っていました。そこで、既存のキッチンを残したまま食洗機を入れるために、キッチンにカウンターを造作してもらい、その下に食洗機を入れ込めないか大工さんに相談しました。すると可能だということだったので、カウンターの下に配管や電源を持ってきてもらったりする工事を優先して進めてもらいました。
「造作カウンターは、バーカウンターとして使えるように作ってもらい、その下に食洗機と無印良品の食器棚を入れています。高さや幅などはすべて私が決めたので、すごく使いやすいお気に入りの場所になりました」
◆リビングを広く見せる家具選び
明るく開放的なリビングは、6畳とは思えないほど広々とした印象。お子さんや、シェアメイトが一緒に食事をしたり、くつろいだりする憩いの場所になっています。
「ソファやローテーブルなどの家具を低めのものにして、広く見えるようにしています。窓はもともとの大きさよりも広くしてもらいました。窓際にはカフェスペースを設けたかったので、ゆっくりと座れるようなラウンジチェアと、それに合うテーブルを選びました。よく、『旅館みたいですね』と言われます」
「ローテーブルは、HIRASHIMAの直径84cmのものです。とても繊細な作りでモダンな雰囲気があって、下の段にものが置けるのも気に入ったので、10万円以上したのですが清水の舞台から飛び降りるつもりで購入しました(笑)。冬は上にコタツ布団をかけて、ひと回り大きい天板を置き、熱源はないのですけどコタツとして使っています。
ラグはヴィンテージが欲しかったのですが高価だったし、子どもが飲み物などをこぼすと思ったので諦めました。『ヴィンテージ風ラグ』で検索して新品を購入しました」
◆照明は部屋の雰囲気に合わせてチョイス
インテリアに関して、セセさんがもっとお自信を持っているのが照明の選び方だといいます。
「お部屋の写真を見たら、『こんな照明を付けたら可愛いだろうな』とパッと頭に浮かぶんです。楽天市場で販売されている雑貨系照明はだいたい頭に入っていますね。家具がないと照明のイメージが湧かないので、部屋の雰囲気がある程度できてから選んでいます」
「一番気に入っているのはリビングの照明です。レ・クリント(LE KLINT)というブランドのペンダントライトで8万8000円しましたが、これも“清水買い”です。照明は安くて可愛いものも沢山あるのですが、お手頃なものでイメージに合う照明がなかったら、高くても購入するようにしています。カフェスペースの照明は、シェードの上の部分が木製で、チェアの雰囲気に合わせて選びました」
◆子どもたちのキャラクターグッズは一箇所に
広々とした玄関は、明るいブルーの扉に付け替え、壁を珪藻土に塗り替えました。壁には、友人のアーティストからプレゼントされたスカーフが、ハンカチ用の額縁に入れて飾られています。
玄関を入ってすぐの和室(セセさんとお子さんの居室)と、洗面所の間の壁は木製の板で仕切られており、お子さんの学校用具やポケモングッズが掛けられるようになっています。
「もともと、和室と洗面所の間の壁はガラスの引き戸だったんです。それだと、遅い時間にシェアメイトが洗面所を使うと子どもたちが眩しくて起きてしまうので、撤去して板を取り付けてもらいました。リビングにキャラクターグッズを置くとインテリアが台無しになってしまうので、ここに集めるようにしています(笑)」
◆収納が少ないながらも工夫を
「収納が少ないので、和室の床の間にラックを置いて衣装や荷物を置くスペースにしています。あまり物がいっぱいだと見栄えが悪いので、洋服は厳選してできる限り減らしています。押し入れの襖は張り替えに失敗したこともあり、撤去してロールスクリーンを取り付けることにしました。見た目もスッキリして気に入っています」
◆大工さんとうまく付き合うコツ
セセさんは、リノベーションで重要なのは、「信頼できる職人さんの存在」だと振り返ります。
「私の場合は、たまたまいい業者さんに巡り会えたのですが、良い方を見つけるのはすごく難しいです。ただ、1人いい業者さんを見つけられると、その方がつながっている、いい電気屋さんや、設備屋さんを紹介してもらえるんじゃないかと思います。
私はまず業者さんに、全ての希望を優先順位をつけて伝えて、『予算の許す範囲内で実現してください』とお願いしました。すると、材料費を抑える方法を教えてくれたり、『この方法だとこういう仕上がりになるけどできますよ』と提案してくれました。最終的には、予算内で私の希望をすべて実現してもらうことができました」
リノベをスムーズに進めるためには、職人さんとの関係性が重要だといいます。
「実は、私の父親が元大工なので、気難しい雰囲気の職人さんにも、グイグイ自分のやりたいことを伝えられたのかもしれません。職人さんに対しては、いいお客さんでいることを心がけていました。やってくださったことには、心から大喜びして、とにかく言葉でお礼を伝えるようにして、作業中に差し入れをしたりしながら、感謝の気持ちを表し続けることを大事にしていました」
◆シェアハウスで叶える豊かな暮らし
このお家に移り住む前は、お手伝いさんのいる海外の豪邸で暮らしていたそう。築58年のシェアハウスに引っ越すことになり、お子さんたちはどんな反応をしているのでしょうか。
「改装前のボロボロの状態の家に、寒い時期に入居することになったのですが、子どもたちは『このおうち、最高だね!』と笑いあっていました。私は結構落ち込んでいたのですが、その会話に救われたし、絶対いいお家を作るぞ!と改めて強く思いました。
また、シェアハウスでの生活は、子どもたちの成長面や子育て環境としてすごくいいなと感じています。子どもたちはもちろん可愛いのですが、私自身が子どもと一緒に遊んだりするのが苦手で。そんなとき、シェアメイトが一緒にゲームをしたり、遊んだりして関わってくれたりします。もちろん、遊んでくれる人もいれば、遊ばない人もいるので、いろいろな人がいるという学びを子どもたちが得られるのも、シェアハウスのいいところだと思います」
リノベ後のお家の暮らしは、かなり満足度が高いというセセさん。これからのお家作りについては模索中だそう。
「この家を購入する際、移住者を対象にした空き家の改装費用の補助金制度で50万円の補助があったのですが、5年間は居住することが条件だったんです。だから5年間は住むつもりですが、その後のことはすべて決めていません。今後は、古い建物に新しい要素を加えながらリノベしていくコツについて自分の考えを言語化して、もっと多くの方に伝えられたらいいなと考えてます!」
<取材・文/都田ミツコ>
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。