韓国の尹錫悦大統領が「非常戒厳」を一時宣言したことを受け、韓国に進出している日系企業や、観光客らへの影響が懸念されている。現時点でツアーのキャンセルなど大きな混乱は確認されていないが、一部企業では現地への出張を厳選する動きも出ている。
「戒厳令が解除されても不安は残るが、(いまさら)キャンセルするわけにもいかない」。ソウルへ3泊4日で旅行に行く栃木県の会社員女性(27)は出発前の成田空港で不安げに話した。
ただ、現時点で旅行者への影響は限定的のようだ。旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)は非常戒厳の発表を受けて現地スタッフが観光地を中心に状況を確認したが、「観光客もたくさんおり、いつもと変わらない」としてツアーを催行。日本旅行(東京)は韓国滞在中の旅行者に対し、「デモが起きている地域には近づかないように」と注意喚起した。
日本航空によると、4日朝の羽田―ソウル(金浦)線の予約率は8〜9割程度で、目立ったキャンセルもなく通常通り運航した。ANAホールディングスも航空便の運休やキャンセルは出ていないとしている。
外務省によると、韓国の在留邦人は4万人強、日本企業の拠点は約3000カ所に上り、既に対応を始めた企業も出ている。伊藤忠商事は週内の韓国出張について厳選することを決定。大手損害保険会社の三井住友海上火災保険は、日本人駐在員を含むソウル支店の全従業員(計49人)について在宅勤務とした。デモの拡大などに対する不安の声も出ており、各社は状況を注視し必要に応じて対応策を検討する考えだ。