ウーバーイーツ配達員が配達中に試される「アドリブ能力」【チャリンコ爆走配達日誌】

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2024年12月12日 07:10  週プレNEWS

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自転車のタイヤパンクほか、配達中の突発的な出来事にどう対応する?

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第79回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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配達中に起こったほっこりすることやトラブルなどの出来事、そして組合のことなど、愚痴を交えつついろいろと書いていますが、今回は突発的に起こる、自力で解決しなければならない案件をいくつか紹介します。

夜の配達中に起こることがあるのがタイヤのパンク。昼間と違い視界が悪いことから、路上にある何かを踏んでしまって空気が抜け、車体がガタガタッとなるトラブルは、これまで2回ほど経験しました。

自分の自転車を使われている方で、後ろの荷台にリュックを固定している方はパンクによる揺れで汁物がこぼれてしまう可能性が高いため、やってしまうと大変なトラブルです。また、パンクした自転車を押しながら配達先まで行かなければならないので、リュックに商品を入れた状態でのパンクは大きなダメージとなります。

ですが、私はレンタルの自転車を使っているため、配達中にパンクした場合は注文者にメールで遅れる旨を連絡。その後、自転車を近くの貸し出し場所に返却。レンタル自転車の運営に車体番号とパンクしたことを伝え、別の自転車を借り直せばOK。

バッテリーの残量を見ながら1日に4、5台の電動アシスト自転車を乗り継いでいるため、後部にリュックを固定せず、背中に背負って使っています。そのためパンク直後のガタガタッという衝撃がリュックの中の商品にストレートに伝わることがありません。

パンクによるトラブルよりも対応が大変なのは強風。私がよく配達で行く東京の湾岸エリアは海風にビル風がプラスされたようなとんでもない強さの風が吹き付けることがたまにあります。先ほど書いたように私は巨大なリュックを背負って配達することが多いのですが、横風の強風の場合、このリュックに風が思いっきり当たり、自転車が左右に思いっきり流されます。

横風の強い日、高速道路を自動車で走っていると車体が流されることがありますが、あの流され方とは比較にならないほど、体と自転車が持っていかれます。また、正面から強風を受けた時は、電動アシスト自転車のアシスト力を「強」に設定して思いっきりペダルを踏み込んでいるのに、ペダルがまったく動かず、前に進めないこともあります。

配達中に強風であおられた場合、まずやるのはリュックが飛ばされないよう、肩ひもをしっかり握ること。横風の場合は、橋の手すりにつかまりながらゆっくり渡り切って、風除けのある場所まで進むこと。向かい風の場合は前に進むのを諦めて、一旦後方にある風除けのある場所まで引き下がること。そして風除けの場所に着いたところで注文者に連絡をします。

安全なところまで移動するのに時間かがかかることや、向かい風の場合、逆方向へ行くことになるので、GPSを使って配達員の位置を確認する注文者の方から時間稼ぎをしていると思われ、BADの評価をつけられることもありますが、最近は「ま、仕方ないか。これまで運営に『あのBAD評価はおかしい』と伝えても『評価は変えられません』の一点張りだし」ぐらいの感じで評価を受け入れています。

最近難易度が増しているのが置き配の斜め上案件。住宅地が多い下町エリアに新しく建てられたアパートは、狭い土地でも居住スペースをできるだけ広く作りたいという思いがあるのか、階段や踊り場などの共有スペースをコンパクトにまとめているところが結構あります。

先日も5階建てで各フロア2部屋しかない小型のアパートの5階まで配達に行ったのですが、階段を上がって5階にたどり着くと、フロアが2畳ほどの大きさしかありません。部屋のドアは中から外へと押し開けるタイプ。2部屋同時に扉を開けるとドアとドアがぶつかってしまいそうです。

そんな感じのアパートで「置き配」。しかも注文したのがピザだったため、1段1段の幅が狭い階段に置くこともできません。仕方ないので隣の部屋の人がドアを開けないことを祈りつつ、商品を注文者の部屋のドアにぶつからない場所に置き「このメッセージを見たらすぐに受け取ってください」というメールを送って配達を完了させました。

たまにあるのが土地の分割。広い土地を持っている方が、所有する土地の一部に家を建てて貸し出すパターンが下町エリアでも見られます。土地を売買するのであれば新しい地番が設定されることがありますが、借家の場合、住所がまったく同じというのが主流のようで、配達していると3軒並んでいる家の住所がすべて同じということがあります。

2年ほど前、そんな住所が同じ家が並ぶ家に配達で行ったのですが、同じ住所の家が3軒ありました。しかも表札を見るとすべて同じ名字。どこに配達していいかわからなかったので、注文された方からの注意書きを見ると......。

「【注意】同じ名字の家が3つ並んでいますが、親戚ではないので誤配達はトラブルの原因となります。置き配は間違えずにお願いします。ガレージに赤い軽自動車が停まっています」

時刻は23時過ぎ。スマホのライトをつけて周囲を確認しても赤い車は見当たりません。置き配指定なのでインターホンを押して確認することもできません。注文された方に「赤い車が見当たりません」とメッセージを送っても無反応。電話をしてもつながりません。

3軒の家を見ると、右側の家はガレージに車を停めています。となると、真ん中か左の2択です。さらに観察すると、左側の家は照明が完全に消えています。以上のことから配達先は真ん中の家と推測。家の前に商品を置いて、念の為「真ん中の家に置きました」とメッセージを入れて立ち去りました。その後BAD評価はつけられなかったので、配達先は真ん中の家で間違っていなかったようです。

配達の現場では、このようなことも起こります。運営の皆さん、もしこの連載を見られていたら、注文者用アプリに表記される到着予定時間だけでも幅を持たせていただくよう、仕様を改めていただけたらありがたいです。注文された方も時間に余裕を持たせたほうがストレスが溜まらなくて、お互いにとっていいことだと思います。

文/渡辺雅史 イラスト/土屋俊明

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