イザベル・ユペール主演『不思議の国のシドニ』で監督を務めたエリーズ・ジラール監督のインタビューが到着。本作製作の経緯や日本での撮影エピソードを語っている。
フランス人作家シドニ(イザベル・ユペール)が日本の出版社から招聘され、未知の国日本を訪れるところから始まる本作。彼女は寡黙な編集者溝口健三(伊原剛志)に案内され、桜の季節に京都、奈良、直島を巡る旅をする。そんな中、亡くなった夫アントワーヌの幽霊が現れ、物語は愛と再生の方向へと進む…。
監督はフランス出身のエリーズ・ジラール監督。なぜ日本の京都、奈良、直島といった地域を舞台にした作品を作り上げたのか。
「プロモーションの一環で日本に訪れることになりました。私は日本の古典映画、特に小津安二郎の作品の大ファンだったので、日本に来ることがとても嬉しかったです。滞在は一週間ほどでしたが、日本の印象は非常に強烈でした。お寺も訪れ、記者会見も行いました。フランスに戻った後、自分が日本の美しさに深く感動していたことに気づき、その感動をすべて書き留めておこうと思い、執筆を始めました」と、長編デビュー作『ベルヴィル・トーキョー』のプロモーションで日本を訪れたのが始まりだったと語る。
そして、本作で使用した日本のロケ地については、「実はその後、2013年にフランスの奨学金で京都に6週間滞在する機会があり、そのときに訪れた場所のいくつかは今回の映画にも登場しています。例えば、岡崎公園の桜は、私が京都に滞在していたときに見た桜ですし、鴨川沿いを散歩した思い出もあります。また、今回の映画で使用した古書店も、京都で滞在中に訪れたことのある場所です」と話す。
なかでも実際の撮影で印象に残っている場所は?との質問に対して、「すべてのロケ地が印象深いですが、特に直島のベネッセハウスが印象に残っています。実は、この作品に登場する寝室のシーンは、私が日本で初めて滞在した部屋で撮影されたんです。その場所で撮影をしているときは、とても感慨深い気持ちになりました」と実際に日本に訪れた際の経験が反映されていることを明かした。
かつて、フランスの映画館で広報として働いていた監督。日本で映画を撮影するにあたり影響を受けた日本の文化や映画を尋ねられると、「私は基本的に、他の監督や作品を意識してインスピレーションを得るということはありません。しかし、元々シネフィルで、好きな監督として成瀬巳喜男や小津安二郎の作品には影響を受けていたと思います。特に、撮影前の準備や執筆時にはその影響を感じます。さらに、編集時には成瀬監督の作品に見られる特徴―クローズアップを避け、風景の中に登場人物を溶け込ませるような表現に影響を受けました」と、日本映画愛についても語っている。
最後には、「この物語を、ぜひあなた自身のことのように感じていただけたら嬉しいです。この映画は再生の物語です。もし今、絶望的な状況にいるとしても、希望は必ずあります。人生のサイクルの中で、必ず良い時期が来るのです」と、日本の観客へメッセージを送ってくれた。
『不思議の国のシドニ』は12月13日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開。
『不思議の国のシドニ』©2023 10:15! PRODUCTIONS / LUPA FILM / BOX PRODUCTIONS / FILM-IN-EVOLUTION /FOURIER FILMS / MIKINO / LES FILMS DU CAMÉLIA
(シネマカフェ編集部)