2019年4月1日にスタートした働き方改革(中小企業は2020年スタート)。残業時間の規制や有給休暇取得の義務化の影響もあり、長時間労働者の割合は減少傾向にある。若い人材の確保のためにも、企業にとって残業しない・させない文化の定着は不可欠だ。
しかし、この流れに過剰に迎合する現場もある。「仕事が終わっていないのに定時で帰る」と言い出す部下がいるのだ。管理部門も「残業時間」に神経をとがらせている。上司は、この問題にどう向き合えばいいのだろう?
そこで今回は、仕事が終わっていないのに帰ろうとする部下に、どう向き合えばいいのか解説する。組織のマネジメントに悩む多くのリーダーや管理部門の方々に、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
●成果と残業削減の対立構造
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現場に入ってコンサルティングしていると、実際にこのようなシーンに直面することがある。この問題は「成果に対して責任を持つ者」と「時間外労働削減に責任を持つ者」との対立からくるものと私は受け止めている。
つまり「とにかく仕事をやり切りなさい」と指示する上司と、「とにかく残業せず帰りなさい」と指示する管理部門との対立構造だ。
「成果」と「残業ゼロ」、そして「ワークライフバランス」。この3つは本来、対立するものではない。むしろ高い成果を上げている人ほど残業をしないものだ。家庭や余暇の充実が仕事への活力を生むからだ。
●「成果軽視」の危険性
しかし残業ゼロとワークライフバランスだけを追求すると、成果が置き去りになる危険性がある。この“置き去り度”は放置するとエスカレートし、「ノルマ主義は若者の心を蝕む」という風潮にまで発展する。最悪の場合、
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「目標なんて達成しないほうがいい」
「プレッシャーをかけて若者が離職したほうがダメージが大きい」
とまで言い出す上層部も出てくる。このままいくと、今問題となっている「ゆるブラ(ゆるいブラック)」組織へまっしぐらである。
優秀な若者ほど、自分が成長できる職場で働くことを希望している。成果を置き去りにした「ワークライフバランス」の追求はやめよう。
●まず上司がすべきことは何か?
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どのようにしたら定時までに仕事を終えることができるのか。そのノウハウや技術を伝えるのもいいが、その前に上司は仕事に対する姿勢をしっかり伝えよう。
今回の場合は「三面等価の法則」だ。仕事には、必ず責任と権限と義務が同じ分だけある、という法則である。
「責任」とは、任された職務を全うすること。「権限」とは、職務を全うするためにリソースを活用する権利のこと。そして「義務」とは、仕事の進捗状況を報告・説明する義務のこと(説明責任とも言う)。
この「責任と権限と義務」を常に心掛けてもらうのだ。具体的には、以下のように言ってみてはどうか?
「仕事を任された以上は、その仕事をやり切る責任がある」
「その仕事をやり切るために、分からないことは先輩や上司に相談する権限がある」
「その仕事がやり切れるかどうか、進捗状況を報告する義務がある」
慣れない仕事であれば、定時内にやり切れないこともあるだろう。
しかし、先輩や上司に相談もせず、進捗状況も報告せずに「定時になったから帰ります」と言うのは無責任すぎる。これはハッキリと伝えるべきだ。
●「見通し」と「認識合わせ」を意識しよう
一度言っただけで、人の価値観、考え方が変わることはない。何度も啓蒙(けいもう)することで、部下の考えは変わっていく。
組織のメンバーである以上、任された仕事は完遂する責任がある。もし自分の今の力でできないのであれば、組織の誰かに協力を仰がなければいけない。そういった判断も一つ一つ上司に報告する義務がある。
こういう姿勢になってから、作業効率を高めるコツやスキルを伝授していこう。依頼した仕事がどれぐらいの時間で終わりそうか? はじめに見通しを立てさせるのだ。
●仮説を立てるクセをつけさせる
「まず、手を動かしてみます」
「自分なりに、やってみます」
という姿勢はよくない。一つ一つに仮説を立てるクセをつけさせるのだ。部下が立てた見通しが甘いのであれば、
「そのリスト情報はどこから持ってくるの?」
「現状分析をせずに資料作成するのはよくないよ」
このようにアドバイスしよう。仕事を始める前に「認識のズレ」をなくしておくのだ。
「ありがとうございます。こうすれば16時ぐらいに終わりそうですね。いったん15時に中間報告します」
実際に部下が作業を始めたら、本当に見通し(仮説)を立てた通りになるのか、後で「気付き」を共有してフィードバックしよう。そうすることで、成長スピードも速くなるはずだ。
●「ダメ出し」の文化から決別しよう!
昔は上司や先輩から、いちいち「見通し」のことなど触れられず、
「まずは手を動かせ」
「自分のできる範囲でやって」
などと言われたものだ。そしてうまくできないと、
「誰がこんなやり方をしろと言った?」
「もっと頭を使えよ」
とダメ出しをされた。しかし、そんな突き放した指導は今のご時世、絶対にやめたほうがいい。組織のためにも、上司がラクをするためにも、一人一人の部下が正しく成長したほうがいいのだ。
従って、いったんやらせてからダメ出しをするようなやり方ではなく、仕事を依頼する前に丁寧に質問し、考えさせ、認識合わせをすることだ。
そういう指導を怠ると、部下も自分なりにやり、自分なりに終わりの時間を決め、自分なりの判断で帰宅するようになっていく。
スキルのみならず、仕事に対する姿勢を啓蒙することも上司の務めだ。今回紹介した「三面等価の法則」はとても大事な概念なので、ぜひ活用してもらいたい。
著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
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