和歌山県立医大付属病院(和歌山市)で働いていた放射線技師の40代男性が10年前に自殺したのは、職場でのストレスが原因だとして、男性の妻らが医大側に損害賠償を求めた訴訟の判決で、和歌山地裁が計約7300万円の賠償を命じていたことが明らかになった。
高橋綾子裁判長は医大が男性の健康を守る義務に反していたと認め、「職場は心理的に安心できる環境にはほど遠く、人間関係上のストレスに常時さらされていた」と判断した。判決は昨年12月13日に言い渡され、確定した。
判決によると、男性がいた部署では2013年、部下へのいじめやサービス残業の強要、管理職同士の不仲などの問題が浮上。医大が管理職を指導した後も、部下の人格を否定するような言動があり「クラッシャー上司のいる職場」と感じている職員もいたという。
男性は同僚のミスで上司から厳しい叱責を受けたり、膨大な業務を命じられたりした。新人の教育や上司へのトラブル報告が重なり、自らもミスをした15年4月に命を絶った。医大は死亡約3カ月後に「自殺の原因となる事実は認められなかった」と結論付けた。
判決はこうした経緯を踏まえ、「ストレスのかかる職場環境で男性を疲弊させた」と指摘した。職場内でコミュニケーションが図られていたなどとする医大側の主張について、「職場の人間関係の問題を前提としておらず、安全配慮義務の履行に当たるとは言いがたい」と批判した。
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そのうえで、医大側の義務違反と男性の死亡に関連性があると認定。今後の就労によって得られたはずの逸失利益や慰謝料などの支払いを命じた。遺族側は命令額とほぼ同額の計約7900万円を請求していた。
一方、地方公務員災害補償基金県支部は20年6月、男性の死亡について民間企業の労災に当たる「公務災害」と認定している。
西村好晴病院長は毎日新聞の取材に「判決を真摯(しんし)に受け止め、ご遺族に深くおわび申し上げるとともに、再発防止へ向け職場環境の改善に全力を尽くしてまいります」とコメントした。【安西李姫】
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