日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。伝説のエロチック映画『エマニエル夫人』が現代に復活!
* * *
『エマニュエル』評点:★1点(5点満点)
いまだ続く植民地主義に辟易
ファッション雑誌カメラマンだったジュスト・ジャカンが監督デビューを飾った『エマニエル夫人』(74年)は、おそらく世界で最も有名なポルノ映画である。
同作がとてつもない成功を収めた背景には西洋諸国における「性の革命」という追い風があり、アート風の装いが「正面切ったポルノはちょっと...」という観客に格好の言い訳を与えたということがあり、また主演シルビア・クリステルのみずみずしい魅力があった。
一方で『エマニエル夫人』は「外交官の奥さんが暇にあかしてエキゾチックな異国の地でセックス三昧」という内容から分かるようにきわめて植民地主義的であり、モンド映画的な見世物性も高かった(なんといっても若い女性が花電車を披露する場面まであるのだ)。
『エマニエル夫人』はそのような時代性と分かちがたく結びついているため、そのまま21世紀の映画としてリブートすることは不可能で、今回の作品のエマニュエルは「夫人」ではなくキャリアウーマンとなり、ポルノ的な見せ場であるはずの場面は機能しなくなり、しかしエキゾチズムとアジア人蔑視だけは温存された。
|
|
まともに台詞のあるアジア人女性の役が売春婦だけ、というのは逆に衝撃的である。
STORY:ホテルの品質調査の仕事をするエマニュエルは、香港の高級ホテルに滞在しながら査察を進める。オーナーからの指令でホテルの裏を調べ始めた彼女は、ホテル関係者や妖しげな宿泊客たちに、禁断の快楽へと誘われていく......
監督:オードレイ・ディヴァン
原案:エマニエル・アルサン
出演:ノエミ・メルラン、ウィル・シャープ、ジェイミー・キャンベル・バウアーほか 上映時間:105分
全国公開中
|
|