「実際のところ、日枝さんはしてやったりじゃないかなと思いますね。世間の風当たりも強い。そこにきて、物言う株主から“独裁者”として認定されたわけですからね」
一般紙の社会部記者は、何やら含みのある口調でそのように話す。
日枝の独裁性をあぶり出した中居
日枝さんとは、ご存知フジ・メディア・ホールディングス等の取締役相談役を務める日枝久氏(87)のこと。中居正広問題の発覚後、ヒールとして注目を日本中から集める存在になったが、
「はっきり言って、中居問題と日枝さんの間には何の関係もないのですが、フジの風土を作ったのが日枝さんということから相談役でありながらも責任者として去就が注目されているわけです。ガバナンスに欠けているということですね」
そう明かすスポーツ紙放送担当記者は、
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「中居問題が出るまでは、いずれ寿命が来れば日枝体制は終わるから、というぐらいの局内の空気で、悪口は聞こえなかった。経営的にもうまくいっていましたしね。配当もあり、株主からも苦情は出ていませんでした。日枝の独裁性をあぶり出したのは中居の功績かもしれませんね」
フジ・メディア・ホールディングスの株式を大量保有する物言う株主は「たったひとりの独裁者が巨大な放送グループを40年近くも支配することが許されてきたのか」と疑問を投げかけた。
“ヒール日枝”を、さらにヒール化したのはメディアの責任である、と前出・一般紙社会部記者は指摘する。理由はこうだ。
「フルオープンの“やり直し会見”がありましたが、そこでジャーナリストと称する人が、日枝さんの責任を追及し、局内にいるなら出てこいとまで呼びかけ、日枝さんのイメージを悪化させることにひと役買った。悪化させることで世間のフラストレーションを高めたわけです。週刊誌も日枝さんの悪党ぶりを報じました。
ですが、日枝さんはびくともしない。そういうことを考えると、ラスボスと言われフジテレビの生殺与奪を握るのが日枝さんであるという悪の巨大化に、メディアがこぞって加担したと言えるわけです。皮肉的な見方をすればね」
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日本のメディアが醸造した日枝イメージ。そこに新たに加わった“独裁者”としての認定。物言う株主は、日枝イメージをさらに悪化させるためか、巨大メディアを40年も支配した、と断定した。その文面に悪意はないだろうか。なぜなら、社長や会長として経営に携わった期間でさえ、独裁期間として勘定しているからだ。独裁者になったのは、ぜめて相談役になって以降としないと、矛盾が生じる。
ラスボス、ヒール、独裁者
進退を連日取りざたされる日枝相談役だが、本人は共同通信の取材を受け「人事は会社が決めること」と答えた。
それを自らの辞任することを拒絶したと受け止めることもできるが、至極まともなことを言っているだけ、と受け止めることもできる。
「自分に対するイエスマンだけが出世している面があるため、日枝さんの首に鈴をつけられる役員はどこにもいません。最後の最後、日枝さん自身が、世論のフラストレーションがピークに達した頃合いを見計らって、会見し、辞任を発表する。その瞬間、世論の風向きが変わり、スポンサーにとってもCM出稿のきっかけになる。そのようなシナリオをさらに効果的に演出するためには、自らの評判が下がることは計算済みだと思いますよ。
日枝さんはその昔、絶対的経営者に対し、生きるか死ぬかのクー・デターを仕掛けた闘志ですよ。ちょっとやそっとの圧力で弱ることはない。最後は自分の判断で、自らを決すると思いますよ」
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「ラスボス日枝」「ヒール日枝」「独裁者日枝」。そう例えられる人物が退いたとき、世論は留飲を下げ、一挙にフジテレビの視界は見通せるようになる。最後の最後に至るまで、フジテレビをよみがえらせることができるのは日枝相談役だけ、という図式が出来上がりつつある。
皮肉なものだ。