日本人が歯を失う原因で最も多いのが歯周病。
歯周病で治療を受けている患者数は、約8,604,000人(「令和2年 患者調査の概況」より)。
また、15歳以上の日本人の約2人に1人は歯周病を患っているという(「令和4年 歯科疾患実態調査」より)。
もはや国民病ともいえる歯周病だが、単なる口の中のトラブルに収まらない可能性があるという衝撃の事実が。
日本大学の研究チームの研究によると、歯周病の原因菌がインフルエンザウイルスの感染を促す働きがあることが明らかになった。
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この研究に携わった日本大学歯学部の神尾宜昌准教授はこう語る。
「近年、高齢者において口腔内をきれいにするとインフルエンザにかかるリスクが下がるという研究結果が出ていました。今回は、そのメカニズムを明らかにするために研究に着手しました。
歯周病の代表的な原因菌のジンジバリス菌は、タンパク質を分解する酵素を分泌します。その酵素がウイルスの感染に及ぼす影響を、イヌの腎臓由来の培養細胞を使い調べました。
その結果、この酵素がウイルス表面にあるタンパク質を分解し、細胞に感染できる形状に変化させることが判明したのです」
この酵素の働きを阻害する成分を加えると、ウイルス表面のタンパク質は分解されずに、感染率も抑えられたという。
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「また、口腔内が汚いとインフルエンザの罹患率が高まることがわかっています。
歯周病がインフルエンザにかかる理由のひとつの可能性として、まだこれから解明しなければいけない点は多いですね」(神尾さん、以下同)
高齢者が自分で歯磨きをする場合に比べ、歯科衛生士による歯の清掃をするとインフルエンザを発症するリスクが約10分の1になるというデータもある。
「特に高齢者はインフルエンザになった後、口の中の菌が肺に入り込んで起こる誤嚥性肺炎にかかりやすいこともわかっています」
最悪死に至る肺炎を起こす要因にもなるインフルエンザを防ぐうえでも、口腔内ケアをして歯周病を防ぐことは重要なのだ。
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この口の中で悪さをするジンジバリス菌の増殖を抑制するには、緑茶に含まれることで広く知られているカテキンが効果的だという。
このカテキンが、緑茶だけでなくりんごにも含まれると教えてくれたのは、管理栄養士の滝野香織さんだ。
「りんごには、りんごポリフェノールという成分が含まれています。りんごポリフェノールは、カテキンがいくつかつながったプロシアニジンが主成分となっています。
強い抗酸化力を持つ水溶性の成分で、活性酸素を除去する力に優れており、血流改善やコレステロール値の低下・抑制などにも役立つ成分です」
■りんごポリフェノールが多く含まれる皮も食べる
りんごは空気に触れて茶色くなるとプロシアニジンやポリフェノールの一部が失われて抗酸化力が落ちるため、変色する前に食べることが大切だという。
そこで滝野さんに、食べることでジンジバリス菌の増殖の防止が期待できる、りんごを使った簡単レシピを3品考案してもらった。
「りんごポリフェノールは、特に皮に多く含まれているので皮まで食べるとより効果的。今回紹介しているレシピもすべて皮付きでつくっています」(滝野さん、以下同)
また、プロシアニジンは体内での持続力がないため、一日の中で何回かに分けて食べるとよい。
紹介したレシピは夕飯の副菜にもピッタリなラペ、朝食やお手軽ランチに重宝するトースト、間食に最適なホットミルクの3つのバリエーションがあるので、さまざまな時間帯で楽しみながら、プロシアニジンの効果を享受できる。
「りんごに含まれるカテキンを摂取することで悪玉菌を減らし、ビフィズス菌や乳酸菌といった善玉菌が増加して腸内の環境が改善されます。
その際に食物繊維を一緒に取ると乳酸菌のエサとなり、より善玉菌が増えて腸内環境が改善され免疫力がアップ。歯周病菌への抵抗力が高まります。
また、乳酸菌とカテキンを一緒に摂取すると、カテキンの体内への吸収も促進されます」
口の中の汚れを放置すると、インフルエンザの感染も招いてしまう。歯周病対策を万全にしよう。
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