「ツナグ離婚弁護士」を運営するClamppyは2月4日、熟年離婚(20年以上の婚姻期間を経ての離婚)に関するアンケート調査の結果を発表した。調査は2024年11月25日〜12月9日、熟年離婚を経験している1335名を対象にインターネットで行われた。
○熟年離婚のメリット・デメリット
熟年離婚をして感じたメリット・デメリットについて、全体の集計は以下のようになった。
全体的に見ると「金銭的に楽になった」「親戚付き合いがなくなった」といったことが主なメリットとして挙げられている。デメリットに関しては「デメリットはない」とした回答が最も多く35%、次いで「家事が大変になった」「孤独を感じるようになった」といった意見が多くあった。ただし、男女別にメリットデメリットを見ると、ランキングは大きく異なる。
メリットでは、男性のランキングは1位が「金銭面で楽になった」、2位は「親戚付き合いがなくなった」、3位は「仮面夫婦を演じる必要がなくなった」と全体と変わらないものの、女性では1位が「仮面夫婦を演じる必要がなくなった」、2位は「親戚付き合いがなくなった」、3位は「金銭面で楽になった」となった。
デメリットについても、男女ともに全体のランキングとは異なる結果となった。男性は1位が「家事が大変になった」、2位に「孤独を感じるようになった」が入り、「デメリットはない」が3位となった。
女性は1位が「デメリットはない」、2位が「金銭面で不安が出てきた」、3位に「現在の家に住めなくなった」が入っている。
○女性は男性の8倍も金銭面に不安
「金銭面の不安」を挙げた女性は、男性の約8倍いるとわかった。「熟年離婚して実家に帰ってきてから、夜勤やタイミーしか雇ってくれる会社がありませんでした」(40代女性)、「1人で稼がなくては行かないし、スキルも何も無いし、年齢的にも高齢なのでそれなりの稼ぎにしかならなく、金銭面で不安ではある」(50代女性)、「自分の収入と相手の収入があったが、自分の収入だけで生活していかないといけなくなりました」(40代女性)といった声が寄せられている。
離婚して実家に戻った場合や、それまで仕事をしていなかった場合は離婚後に仕事を探さないといけないが、熟年離婚後の40〜50代では、中々働き口がなく苦労している人が多いようだ。また、これまで相手と自分の収入を合わせて生活費にしていたのに、これからは自分ひとりの稼ぎで暮らしていかないといけないことに不安を感じている人もいた。このことから男性に比べて女性の方が、パートナーの収入に頼っている人の割合が多いとわかる。
一方、男性では熟年離婚のメリット1位に「金銭面で楽になった」がランクインしている。具体的には、「稼ぎが全て自分の趣味に使える。家族への気遣いがない分ストレスフリーで良い」(50代男性)、「生活費の大体を出していましたがそれが1人になって安くなったので良かったです」(60代男性)、「相手は買い物依存症があり借金が増え続けて行く不安を抱えていたので、その不安から解放された」(70代男性)といった回答がみられた。
婚姻時は生活費を担っていたものが、自分1人分でよくなったので楽になったという人が多いようだ。また、妻の買い物依存やギャンブルに悩んでいた人もいて、借金の不安から解放されたと安堵している人もいた。
○男性の方が家事が大変になったと感じている
熟年離婚後に家事が大変になったと答えた男性は30%いるが、女性はわずか4%に留まっている。
男性からは「今まで家事全てを任せていたので、一から家事を覚えるのが大変でした。特に料理は全くやったことがなかったので大変でした」(40代男性)、「生活すべてを一人でしなければならないというのはデメリットだと感じます。孤独ですし、新社会人が一人暮らしを始めたような希望もありませんから虚しさがあります」(40代男性)、「今まで分担していた家事をすべて自分一人でしなければならなくなったことで家事にかける時間が増えたこと。食事の栄養バランスなども自分で考えてしなければならなくなったこと」(50代男性)といった声が挙がっている。
これまで家事をすべて相手に任せていたので大変になったという人や、身の回りのことや家事炊事などすべてを1人で行うことに虚しさを感じている人も。中にはこれまで分担していた家事が自分1人にのしかかるのがデメリットと感じている人もいた。
一方、離婚のメリットについて、女性からは「家事も減り、楽でしかない」(50代女性)、「家事は全部やっていたので自分の時間が一切なかったが自由になった。何かにつけ遊びに来る義姉一家の世話をしなくてよくなったため、休日をのんびり過ごせる」(50代女性)との声が挙がっている。男性がデメリットとして「家事が大変になった」と答えている人が多い一方で、女性はメリットとして「家事が楽になった」と感じている人がいるようだ。
さらに女性に比べて7倍以上の男性が家事の負担をデメリットと感じていることから、婚姻時は女性の方が家事を負担していた人が多いとわかる。
○離婚後に孤独を感じる割合、男性は女性の5倍以上
熟年離婚後、孤独を感じている人の割合は男性は28%、女性は5%と男性が女性の5倍以上となった。
「話し相手がいないとつまらないと感じるときもある」(50代男性)、「持ち家を手放した事は、とても切ない気持ちになりました。また、子供もいたので、皆んなでの食事や色々な話をできなくなったのは孤独感を感じました」(40代男性)、「孤独は確かに感じます。20年も毎日居た相手が居ないと言うのは、何か…色々辛くなる時もありますね」(30代男性)といった声が寄せられている。
熟年離婚とは、一般的に結婚して20年以上経過した夫婦が離婚することを指す。長年一緒にいたため、急にいなくなると寂しさを感じる男性が多いのかもしれない。
一方、女性が熟年離婚したことに対して感じるメリットとして、「自分の時間を持てる様になり、子供が自立したのを機に離婚したので異性との交友関係も問題なく、気兼ねなく人生を楽しく過ごせる様になった。予定が、婚姻継続期間内に比べて何倍も入るので、1週間が長く感じられて充実している」(50代女性)、「家事は全部やっていたので自分の時間が一切なかったが自由になった。何かにつけ遊びに来る義姉一家の世話をしなくてよくなったため、休日をのんびり過ごせる」(50代女性)、「気分的に楽になりました。もう一緒に住まなくてもいい開放感」(50代女性)といったコメントが寄せられている。
女性は熟年離婚をしたことで「自分の時間が持てるようになった」「開放感がある」と感じているため、男性のように孤独を感じる割合が少ないのかもしれない。
○デメリットを感じていない割合が女性は男性よりも16%多い
熟年離婚にデメリットを感じていない人は、男性で27%、女性で43%だった。デメリットがなく、熟年離婚をして良かったと思っている人は女性の方が男性よりも16%多いとわかる。
女性からは、「義理の親の介護をしなくて済むし、慰謝料を蓄えとして自分の稼いだお金を自由に使える」(40代女性)、「自分1人の生活なので時間的余裕が多くでき、週末に友人や同僚と出かけることが多くなり、毎日が楽しくなりました。自立したはずの下の子が、離婚を機に 一緒に住んでくれているので寂しくもないので これといったデメリットもありません」(50代女性)、「様々な面でお金、時間、肉体的、精神的に自由になれました」(50代女性)など、金銭面や介護面、時間的な余裕などのメリットをあげる人が多かった。
一方男性は、「妻のギャンブルや浪費癖から解放されて金銭面でだいぶ楽になりました」(40代男性)、「私の場合は妻の宗教が離婚の大きな原因でした。私自身、全くの無宗教なので一切関係がなくなりすっきりしました。そして今は新たなパートナーを迎え充実してます」(50代男性)、「付き合いや、自分の意志以外でやっていたことをしなくなって、自分でなんでもできるのがメリットです」(60代男性)とのことだった。
男性の場合は相手のギャンブルや浪費癖、宗教などに悩まされていた人が多い印象だった。離婚することでそれらと縁を切って、新しいスタートを歩き出した人もいるようだ。また、親戚付き合いなど自分の意志ではないことをしなくて良くなり、自由になったと感じている人もいた。
女性の意見を総合すると、熟年離婚したことで女性は母や妻といった家庭内での役割や責任から解放されたと感じている人が多多かった。一方、男性は離婚をしたことで妻や親族など、個人の問題からの解放を喜んでいる印象だった。女性は離婚で自由を得て自分自身を取り戻したと感じ、男性は負担の軽減による安堵を感じているのが異なる点なのかも知れない。
○熟年離婚をするにあたって準備したこと
熟年離婚をするにあたって、準備したことは以下のランキングとなった。
しかし、この結果も男女別で見ると順位が異なる。
男性では準備をしないか、離婚条件が上位に来ているのに対して、女性はお金や離婚後の家のことを準備しているとわかる。
生活費などお金の工面について準備した人は女性では30%いるのに対して、男性では16%だった。熟年離婚のデメリットでも金銭面の不安を感じている女性は男性のおよそ8倍いるように、生活費の確保は女性の方が必要性を大きく感じているようだ。
当面のお金の工面をした人からは、「派遣社員から正社員に職場を変更して、離婚後の生活費を確保」(40代女性)、「当時、住んでいた家は売却し、慰謝料に上乗せする形にしてもらいました。仕事は、パートだったので正社員の雇用先を探し、新しく見つけた雇用先の近くで新しい賃貸物件を探しました。慰謝料や財産分与など金銭的なことに関しては、義理の両親達が口を挟んできたおかげで分割ではなく義理の両親が一括で支払ってくれました。親権に関しては、子供達の自立を機に離婚したので、大きく揉めることもありませんでした」(50代女性)といったコメントが寄せられている。仕事を変えた人や、家を売却して慰謝料に充ててもらうなど、さまざまな方法で生活費を工面したようだ。
○離婚後の仕事はどうした?
熟年離婚後の仕事をどうしたかについてのアンケート結果を見ると、86%の男性が今の仕事を継続しているのに対して、女性は59%だった。反対に、新しい仕事を始めた人は女性は33%いるが、男性は9%と男性の方が婚姻時に働いていた職場でそのまま働き続けているとわかる。
○熟年離婚、誰に相談した?
年金分割や財産分与、慰謝料などの離婚条件について話し合いをした人は男性の方が多く、さらに弁護士に相談している割合も女性より男性の方が多くいるとわかった。
誰かに相談した割合は総じて女性の方が高いものの、弁護士への相談割合のみが男性の方が高くなっている。
「財産分与の方法や手続きが解らなかったし、後々のトラブルを回避したかったから」(50代男性)、「後で揉めたくなかったからです」(40代男性)、「法律の専門家に相談した方が確実だなと思ったからです」(50代男性)など、弁護士に相談した理由としては、トラブル回避のためとコメントした人が多くいた。また、男性の意見のなかには慰謝料・財産分与・養育費など支払うものが多いため、さまざまな話し合いや処理を確実にしたかったらというものもあった。
○特に準備しなかった男性は女性の倍以上
離婚にあたって特に準備をしなかった男性は35%いた。一方女性は15%と、準備をしなかった男性は女性の倍以上いるとわかった。ただし、先述したように熟年離婚に対しては、男性の方が女性よりもデメリットを感じている人が16%多いということもわかっている。
また、準備をしておらず、デメリットも感じていない男性の中には、「今までは妻がいて話す相手がいたが離婚して誰も近くにいないので孤独を感じる」(50代男性)、「たまに寂しい気持ちになる事があります」(50代男性)と、寂しさや孤独を感じている人が多くいた。(Yumi's life)