今やお笑いタレントという枠には収まらない、何気ない一言が世間に注目され影響をもたらすインフルエンサー「ゆりやんレトリィバァ」。昨年12月からは本格的に活動拠点を東京からロサンゼルスに移した。その原点は、きっと生まれ育った奈良県吉野町にある。地元で工房を営む、ゆりやんの父で「エッチング幸房ソレイユ」の代表、吉田昌行さん（72）を訪問。現在、自宅兼工房は改装中で、敷地内の仮設プレハブ住宅に案内してもらい近況を伺った。
【写真】当時からすっかり「ゆりやん」です…6歳ぐらいで撮影された吉田家の家族写真
「大谷選手が婚約発表した時は、『大変な騒ぎになっている』と複数の知人から祝福の電話があって、またえらい冗談やりよったと思いました。怖いもの知らずで、突拍子もないことをする娘なんで親としてはいつも冷や冷やしています」と、はにかんだ表情で語ってくれた。
上記のセリフは、メジャーリーガーの大谷翔平選手が婚約を発表した直後に、ゆりやんが自身のインスタグラムで左手を隠しながら意味深なライブ中継した際のこと。最後は「爪切りました」と左指を見せるオチで、日本列島を幸せな笑いの渦に巻き込んだ。
吉田代表は吉野町で生まれ育ち、この地を離れたことはない。鉄道会社でのサラリーマン時代、本社（大阪市）勤務になった際も車と電車を乗り継いで2時間かけて通勤した。大阪、東京、ロサンゼルスとどんどん遠くに拠点を移していく娘とは対照的だ。よほどこの地に愛着やこだわりがあるのだと思い、尋ねてみると「住み慣れたとこやから気楽ですねん」と飾り気ない言葉が返ってきた。
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ゆりやんほどの売れっ子にもなると、決して交通便が良いとは言い難いこの吉野の実家には頻繁に足が向かないと思いきや、年に5、6回は帰って来ると吉田代表は話す。
「関西で仕事があったり、急に休みが取れたりしたときは『今から帰るわ』と不意に連絡して来ます。毎回私が駅まで送り迎えをするんですが、『極悪女王』の役作りで一番太っていた時は横（助手席）に座ったらシフトレバーが（ゆりやんの）体に当たるほどで、『後ろの席に乗ってくれ！』と頼みました（笑）。夜遅く帰って来て、翌朝早くに帰って行くこともありますし、時間があるときは何をする訳でもなく部屋でずっと寝たり、家の前の河原を散歩したりしています。ここ（実家）が落ち着くんでしょうね」
コロナ禍にゆりやんがダイエットに成功しスリムな姿を披露して間もなく、Netflixの配信ドラマ『極悪女王』の主役に抜擢され、役作りで40キロの増量に挑戦と聞いた時は親として複雑な気持ちだった。かねてよりダイエットの指導をしてくれていたトレーナーの岡部友さんの助言のもとならと安心したが、撮影中の受け身に失敗し入院することになった際は動揺した。
「撮影で頭を打ったので『病院に行って来るわ』と連絡が来ました。その後、検査入院することになりましたが、毎日ビデオ通話でやり取りしていて、呂律も回っていますし、問題なく意思疎通できるので大丈夫やろうと見舞いには行きませんでした」とコミュニケーションはまめにするものの、過保護にしないのが吉田家流だ。
ゆりやんが、父（吉田代表）に素直に何でも連絡して来るのは、子どもの頃から一日の出来事を毎日報告する父娘の決め事が習慣化し、今もそれが続いているからなのだろう。たくさん言葉を交わすことはないが伝えるべきことは伝え、話し合う。そんな父娘なのだ。
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この取材の10日程前にゆりやんは自身のインスタグラムで、「急にさびしくなった」と最初はギャグを交えて話していたが、途中で素の表情になり「ホームシックやと思います」と泣きながらライブ中継を続けた。その話題を出した途端、それまで陽気な雰囲気で話していた吉田代表の表情が一気に曇り、「よう見やんかった……」と言葉を詰まらせたと思うと、目を大きく見開き、今にも目から涙がこぼれ落ちそうになった。あまりにも突然だったので、筆者も動揺し、視線を外して心の中で5秒を数えて何事も無かったかのようにエッチング工房の話題に切り替えた。
ゆりやんが子どもの頃から夢見ていたアメリカ生活をエンターテーナーとして実現させたように、吉田代表は「もっとたくさん仕事を受注し、仕事を通じて多くの人に喜んでもらいたい」と自身の目標を語る。かといってゆりやんの名前を出して商売をするのは意にそぐわない。それを知ってか知らずか、ゆりやんは番組や自身の単独ライブでは「エッチング幸房ソレイユ」を連発し宣伝をしまくる。「恥ずかしいので、カンベンしてもらいたい」と言いながらも吉田代表の笑みはこぼれる。
互いに自身の夢にひた走っていく父娘の物語は、これから益々面白く展開されていくことだろう。
（まいどなニュース特約・北村 守康）
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