アストンマーティン・レーシングが公開したアストンマーティン・ヴァルキリーAMR-LMHのシェイクダウン時の様子 ハリー・ティンクネルは、2月末にWEC世界耐久選手権デビューを控えているアストンマーティンの新型ヴァルキリーAMR-LMHが、これまでのテストで見た証拠から「優れた可能性」を持っていると確信していると語った。
この英国人ドライバーは、新たに結成されたハート・オブ・レーシング・チームが運営するアストン・ハイパーカー・チームの最初のふたりのドライバーのうちのひとりとして発表され、シーズンを通してトム・ギャンブルと、一部のイベントではロス・ガンとともに、007号車をシェアする。
■LMH規定は「ミスが少ない」?
マルチマチックと契約しているティンクネルは、2023年半ばにプロトン・コンペティションがカスタマーとなって以来ポルシェ963をドライブしてきたが、LMH(ル・マン・ハイパーカー)プログラム開始に伴いアストンに移籍することとなった。
昨年7月に英国で初走行して以来、ヴァルキリーの開発に携わってきた33歳の彼は、今月開催されるWEC開幕戦のカタール1812kmレースで待望のレースデビューを迎えるが、この車両の性能には楽観的だ。
「クルマの開発は順調に進んでいる」とティンクネルはSportscar365に語った。
「このクルマのDNAが強力であることを願っている。(規則導入から)2、3年遅れて登場するのは当然容易なことではないし、そこに学習曲線があることは間違いない。どんな開発プログラムでも、あと数カ月は必要だろうけど、どこかの時点では(レースシーズンを)開始しなければならない」
「昨年末にはカタールでテストしたが、もちろん真新しい車両であれば、コースに出るたびに学習していくものだ」
「常に細かいトラブルやあらゆる問題があるが、全体として開発曲線は良い上昇傾向にあると思う」
「カタールにはできる限り良い状態で行けると思うし、本当に興味深いね。まだ他のクルマとコースを走ったことがないので、どうなるかは本当に分からないよ」
ティンクネルは、アストンで初めてLMH規定に従って作られたクルマでレースをすることになる。これまでの彼のハイパーカーでの経験は、LMDh規定のポルシェ963のみだ。
「昨年運転したLMDh(ポルシェ)と比べて、このクルマのフィーリングを考えると、間違いなく良いポテンシャルがあると思う」とティンクネル。ヴァルキリーは963とは異なる運転スタイルを必要とするかと尋ねられると、彼はLMDh車は一般的に運転が難しいと考えられていると指摘した。
「確かに(ポルシェとは)違うが、それがLMH対LMDhの問題かどうかは分からない」
「LMDhのドライバーで、運転しやすいクルマだと言う人は多くないと思う。とても、限界に近いものだ。本当に優秀なドライバーでも、ミスやクラッシュを多く目にすると思う。運転が難しいんだ」
「フェラーリやトヨタと比べると、彼らLMHのクルマの方が、ミスが少ないと思う。どうなるか興味深いね」
彼はさらにこう付け加えた。
「LMHカーは、ストックのLMDhから始めるのではなく、白紙の状態から始めるので、そこに利点がある可能性はある。だが、他の部分では欠点もある。正直、本当に分からないのが面白いところだ」
「でも、このクルマは見た目も音も素晴らしいし、チャンピオンシップに多様性があるのは素晴らしいことだと思う」
ティンクネルは、2020年のル・マン24時間レースでアレックス・リン、マキシム・マルタンとともにGTEプロクラスで優勝したクルーの一員となって以来初めて、再びアストンマーティンと仕事ができることを嬉しく思っていると付け加えた。
「戻ってこられて本当にうれしい」とティンクネルは語った。
「一緒にレースをしたのは1回だけだが、かなりうまくいった! 本当に楽しみにしている」
「ファクトリーチームで総合優勝を目指して再び戦えるのは、僕のキャリアの中で本当にエキサイティングな時期だ。願わくば、今後何年もそうあり続けたいと思っている」
なお、アストンマーティン・レーシングはそのSNS上で2月上旬より、シルバーストンでのシェイクダウン時の様子を写真・動画で公開。こちらはWEC向けのカラーリングや各種デカールが確認でき、今月後半にカタールで始まる公式テスト“プロローグ”、そして開幕戦への期待を高めている。