『犬と戦争』完成披露 山田あかね監督「なかったことにはしたくない」支援のクラファンも開始

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2025年02月12日 13:51  cinemacafe.net

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『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』完成披露舞台挨拶 ©『犬と戦争』製作委員会
2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻からまもなく3年、ドキュメンタリー映像作家の山田あかねが監督を務めるドキュメンタリー映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』の完成披露試写会が実施され、山田監督とセルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使が舞台挨拶に登壇した。

現地に赴き、約3年に渡り取材を続けた山田監督は、完成披露試写会という日を迎え、「最初は映画を撮ろうと思って行ったわけではなく、とりあえず撮影しようと決めて行きました。3年が経ち、映画が完成して“嬉しいです”と言ってしまうと、今も戦争が続いているので素直に“嬉しい”とは言えないのですが、完成した映画を皆さんに観ていただけたらと思います」と葛藤する正直な気持ちを語った。

■「動物たちも被害者」駐日ウクライナ大使が思い語る
そして今回、駐日ウクライナ大使を務めるセルギー・コルスンスキー氏が本作の応援に駆けつけた。

すでに本作を鑑賞している大使は、観客へ向けてウクライナの現状を交えながら、「この映画は、実は鑑賞中に辛い気持ちになる部分もあります。皆さんがご存知の通り、ロシアがウクライナに対して戦争を仕掛けてから、3年が経とうとしております。もちろん多くの被害を受けているのは罪のない民間人ですが、彼らと同様に、彼らが飼っている動物たちも被害者であります」とコメント。

「そして実際に何が起きていたかを世界に知らせるために、山田あかね監督が勇気を持って、ウクライナやポーランドに取材に行きました。ウクライナで動物を助けようと様々な活動をしている人がいる中、ロシア軍は動物たちを殺すこともありました。日本でペットを飼っている人は非常に多い。そして、ペットの誕生日をお祝いする家族もいます」と話す。

「犬を飼っている人として、動物が好きな人として、涙を流しながらこの映画を観ました。この戦争がどれだけ大変なものなのか、どのようなものが悪と言えるのかを理解するためには、本作のような映画を観る必要があると思います」と、戦争に対する悲痛な思い、そして動物への愛という、2つの大きな感情を表すスピーチを披露し、会場からは拍手が。

大使の言葉に対し、山田監督は「ありがとうございます。3回ウクライナに行った中で、現地の人たちといろんな話をしたり、近くでミサイルが落ちることもあり、本当に大変なことになっていると身をもって理解しました」と現状に言及。

「私が撮ったのは犬の話なので、そこまで人間の苦しみを描けたかわかりません。でも、動物たちも大変な思いをしていることは、大きな歴史の中でも忘れ去られてしまうような出来事かもしれませんが、なかったことにはしたくないので、この映画を作らせていただきました。大使も犬が大好きということですが、私も犬が大好きです。犬が被害に遭うのがとても心苦しいので、そうならないよう本作を作りました」と、本作にかける覚悟の思いを述べた。

■「大変なことより温かい思い出の方が印象深い」と監督
山田監督自身のキャリアについて、犬や猫の命をテーマにした作品を撮ろうと思ったきっかけを聞かれ、「私は犬がとても好きで、犬が死んでしまった時にとても悲しくて他の事ができなくなった。でも、死んだ犬のことを嘆いていても仕方がないので、これから助けられる命をテーマに作品を作ろうと思ったことがきっかけです。うちの犬が亡くなったのが2010年なので、15年ほどこのような活動が続いてますね」と答える。

続けて、本作の製作から撮影・完成までをふり返ることに。まず、戦時中のウクライナに行こうと決意したきっかけについては、2011年の東日本大震災をきっかけに「被災地や災害時に動物がどのような状況に置かれるのかを10年ほど取材してきました」と言い、「今回は戦争なので、どうしても人間が優先で動物の命は後回しになるだろうと考えました。それと同時に、現地の人たちは動物を置いて逃げたりするのだろうか、一緒に逃げることはできるのだろうかと、そういうことを知りたいと思ったんです」と答え、これまでの経験と繋がる理由を明かす。

そして、実際にウクライナでの取材で大変だったことをふり返り、「撮影中に泊まっていたホテルの近くにミサイルが落ちました」と明かしながらも「どんな街に行っても、“よく撮影しにきてくれた”、“世界にこのことを伝えてくれ”、“自分たちがどんな被害に遭っているが伝えてくれ”と撮影を歓迎してくれたんです」と監督。

「“私は犬猫を撮りにきただけで、報道のジャーナリストではないんです”と伝えても、“犬猫を撮りにこんなところまで取材に来てくれてありがとう”とハグしてくれるんです。だから、大変なことより温かい思い出の方が印象深いです」と答え、現地の人々の温かさに触れたエピソードを明かした。



さらに、現地の犬たちの様子について聞かれると「戦地などに行くと車の音で人間だとわかると寄ってくるんです。フードがあるとさらに喜んで集まってくるんです。ご飯があって、寝るところがあって、今日生きてるから幸せだ、というところに動物の生命の強さを感じました。人間が戦争に遭って大変な思いをしているときに、生きている犬の飛び跳ねている姿を見て気持ちが楽になったりするので、そのような基本的な部分を犬から教わっているような気がします」と監督。

「動物を救っている人たちは、動物を救う分、動物から救われているんですよね」と語り、動物と人間の関係性について、取材を経ての学びを教えてくれた。

■「映画を観た方にも覚えていてほしい」
そんな本作を通して、どのようなことを伝えたいかと聞かれ、「犬や猫など小さな命を助けたいと思う気持ちは全世界共通だということがまず一つです。そして、本編の冒頭では衝撃的な映像が流れます。私はこの映像をなかったことにしたくないと思ったのでこの映画を撮ったわけですが、戦争の中で人間が受ける大きな被害というのは歴史に残りますが、動物などの小さな命はおそらく忘れ去られてしまいます。せめて、私は覚えていようと思うし、映画を観た方にも覚えていてほしいです」とコメント。

そして「もう一つ何かできることとしたら、ウクライナの動物のために寄付をするなど一歩踏み出していただけたら、世界は少し良くなるんじゃないかと思います」と熱い思いを語った。

最後の挨拶では、「たくさんの人に映画を観ていただきたいです」と話し、「3年が経ちメディアでの扱いが減るとみんなも忘れてしまうんですよね。でも、世界ではまだ戦争が続いているということを知ってもらいたいです。毎日考えるのは大変かもだけど、たまにはそんな国のことを考えてもらえたらと思います」とウクライナへの想いを語り、会場からの温かな応援のもと舞台挨拶を終了した。

<クラウドファンディングについて>
本作の公開に合わせて、山田監督からウクライナの動物(主に犬と猫)のためのクラウドファンディングの開始が発表された。

監督は動物好きとして知られる俳優の石田ゆり子と一緒に動物愛護団体「ハナコプロジェクト」を運営しているが、新たに映画本編で紹介されているウクライナの動物愛護団体ために寄付を募る。

今回の支援は、映画『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』内でも紹介されている動物愛護団体「フボスタタ・バンダ」と「ブレイキング・ザ・チェイン」に寄付される。

『犬と戦争 ウクライナで私が見たこと』は2月21日(金)より全国にて公開。





(シネマカフェ編集部)

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