2025スーパーGT GT300富士合同テスト 改修されグラベルとなったTGRコーナー立ち上がり 2月6〜7日、静岡県の富士スピードウェイで行われたGTエントラント協会主催のGT300合同テストには、今シーズンのスーパーGTに臨むチームを中心に18台が走行したが、チーム、ドライバーたちの間で話題になっていたことがある。それは、第1コーナーにあたるTGRコーナー立ち上がりのアウト側だ。このオフに再舗装され、立ち上がりのアウト側には、グラベルが設けられている。
富士スピードウェイのTGRコーナーは、1.5kmのロングストレートの後にあるタイトなコーナーで、富士スピードウェイのレースにおいては最大のオーバーテイクポイントのひとつでもある。現在のレイアウトになった2005年ごろ、サーキットのランオフエリアは舗装され広くとられることが世界的なトレンドで、富士のTGRコーナーも広大なランオフエリアが用意されている。
そんなTGRコーナーだが、このオフにはピットロードエンドからTGRコーナー、HYUNDAIブリッジ付近まで再舗装が行われた。これに合わせ、立ち上がりのアウト側にグラベルが設置されている。富士スピードウェイのホームページ上に掲載された資料によれば、このグラベルは84メートル×2.5メートルに渡って敷かれており、FIA国際自動車連盟の指導のもと、走路外走行(トラックリミット)対策として設けられた。
サーキットのランオフエリアは、舗装化が進んだことで“走れる”ようになり、近年のレースではランオフエリアを走ってでも速さを追求する走り方が世界的に増えていた。予選を中心に映像でトラックリミット違反が判定されるが、レースでは警告が出されるまでコース外を走るシーンも多く見られる。2024年頃から、こういった走り方への対策として、スパ・フランコルシャンやイモラ等、海外のコースでも走路外走行を防ぐために舗装のランオフエリアをグラベル化することが進められており、世界的な流れとも言える。
そんなTGRコーナー立ち上がりのグラベルだが、今回のGT300合同テストが、スーパーGT車両が走行する初めてのケースとなった。ドライバーたちはどんな感想を抱いたのだろうか。
■トラックリミット対策としては有効
今回のグラベル敷設の目的であるトラックリミット対策としては概ね好意的な意見が聞かれた。グラベルにタイヤを落としてまで攻め込んでも、明らかに“損”の方が大きい。走路外走行防止にはてきめんという見方だ。
「絶対出ないようにコントロールするから、良いと思う。最初イラストで見たときは狭いのかと思ったけど、けっこう広い。あそこに入ると確実にタイムロスするから、はみ出し方をちゃんと制限する。今までは出ても平気だと思っていたから、ちょっと苦しくても“エイヤ”でいってたけど、我慢するようになるから効いていると思う(谷口信輝)」
「スパも同じようになっていますよね。ギリギリにいくだけなので、トラックリミットを気にしなくて良いので走りやすいですけどね。今はトラックリミットの判定が厳しくなっているので、ジャッジを面倒にされるくらいなら、この方が良いと思います。コースをはみ出したら損をするのが本来なので、ギリギリ落ちないところをミリ単位で攻めた方が良いと思います(藤井誠暢)」
「妥協したくないので、昨年と同じように踏んでいってるんですが、一瞬『あ、ヤバい』と思い出します。グラベルタッチくらいまではいったのですが、それ以上はやめた方が良いということですね。トラックリミット対策という意味では、ナイスアイデアだと思います(小山美姫)」
「基本はコースの外側にいっちゃいけないんだから、良いんじゃないですか? 本来は壁なんだから(松浦孝亮)」
アメリカで市街地レースを戦えば、コースアウトした瞬間にウォールにぶつかる。その経験がある松浦の意見ももっともだ。
■砂利によるクルマのダメージに懸念
ただ、万が一コースアウトした際についての意見もある。「クルマが傷つきやすいです。駆動系とかぜったいダメージがあると思うんです(堤優威)」、「僕は飛び出してないのですが、誰かが飛び出して砂利まみれになっていて、少しうざったかったですね。あと、縁石超えてすぐ砂利になるのが近すぎる気がします。もう少し間があれば良いな、と思いました。クルマが壊れることもあるんじゃないでしょうか。フォーミュラのフロアなんかは壊れそうですよね(平中克幸)」などなど。
平中の言葉にもあるとおり、富士スピードウェイからも注意事項として出されているのがコースアウトしたときに出る砂利だ。これについて懸念する声も多かった。
「一昨日のテストで知らなくて、いつもどおりいったら『すごく車高低いな』と思っていたんです。戻ってみたらホイールの中が砂利だらけになってました。『そのまま走ってたら壊れるよ』と言われて気をつけようと思いました(元嶋佑弥)」
「芝生で良いんじゃないかな? とは思いましたけどね。砂利がいっぱい出てくるし、飛び石がくるので。機能はしてるけど、やっぱり砂利が出るのがね。砂の方が良いのかも(片岡龍也)」
「GR86/BRZ Cupとかは(あの部分に)出やすいんですよね。大丈夫なクルマはあると思うんですが、巻き上げた石でガラスが割れたり、コースが汚れるのが気になります(平良響)」、「それこそ耐久レースになったらTGRコーナーが砂利まみれになっていそうです(清水英志郎)」
飛び石については「フォーミュラは危ないのではないかと思う」という声もあった。ヘイローがあるとはいえヘルメットに直接石が飛んでくることになる。ちなみにこのテストでは、一度コースアウトした車両があったが、コース上、またコース外の舗装部分に砂利が大量に出たシーンもあった。清掃も少し大変そうだと感じた。
ちなみにこれについては「外に出た時に砂利をぶちまけちゃうのが気になりますが、GT3の海外のレースでもみんな気にしないでバンバンいくくらいなので、仕方ないのではないでしょうか(富田竜一郎)」という声も。
■TGRコーナーのバトルに影響か
一方で、TGRコーナーは冒頭に記したように、富士スピードウェイでのオーバーテイクポイントでもある。これまでのレースでは、スーパーGTのみならずTGRコーナーでサイド・バイ・サイドになり、アウト側の車両は多少コース外に出ても粘り、続くコカ・コーラ・コーナーまで非常に見ごたえあるバトルが展開されることが多くあったが、こういったシーンは減るかもしれない。
「できなくなるね。かなりタイムロスすることになるから」というのは谷口。「でも、SUGOのSPコーナーのように『絶対出ないようにしよう』となるから良いと思う。SPで差されてもアウトから並んでいってやろうとはならない」とも。
「楽しさが減っちゃいますね。抜けなくなると思う。並んで外にいったら引かなければならなくなっちゃう(安田裕信)」などの意見もあるほか、バトルについては、「イン側が有利になる」という声もかなり多かった。
「バトルのときにもしアウト側に追いやられたクルマはどうすれば良いのかということです。引くべきなんでしょうけど、イン側のクルマが寄せてきたらどうするのか。裁定はしっかりして欲しいと思います。(グラベルに出たら)ヘタしたら2〜3台に抜かれることもあると思いますし、無理矢理インに入ってアウトに押し出そうということが、やろうと思えばできてしまう(堤)」
「イン側しか得しないですよね。イン側の損のなさ、アウト側の損をする感じが気になります(平良)」
「過去のレースを振り返ると、けっこう2ワイド、3ワイドで曲がって、そのまま外に出るクルマがいるわけじゃないですか。砂利に乗ったクルマがスピンして、イン側とぶつかるようなシーンがあるんじゃないかと思っちゃいます。今まではそのまま外に逃げられましたけど、外側の人は無理ができなくなりますね(平中)」
「実際、レースになったときはあそこがエスケープになっていたのですが、グラベルになって片輪が落ちてスピンした車両がいたときに、その車両に突っ込むことがあるんじゃないかと懸念しています。四脱だけしっかりとれば良いのではないのかな、と思います(坂口夏月)」
昨年までのように、アウト側でわずかにコース外に落としてでも踏んで逆転を狙う……というシーンは今季は減るかもしれない。一方で「バトルも、それを分かってやらなきゃいけない。ガードレールだったらいかないですよね。そもそもそちらに逃げられるという考えではダメだと思います。押し出されそうなったら、自分が引かなければいけない(松浦)」という声も。実際のレースがどうなるか、気になるところだ。