ミユさん(23歳・仮名)「悪質な風俗店で、搾取される女性が減って欲しい」
そう話すのは、19歳から風俗業界で働くミユさん(仮名・23歳)だ。これまでデリヘルから立ちんぼ、出稼ぎなど、あらゆる業種を経験してきた彼女は、昨年に在籍していたデリヘル『C』で不当な扱いを受けたと話す。
一体、ミユさんの身に何があったのか。悪質な風俗店の実態を聞いた。
◆独り立ちの資金のため風俗の道へ
幼少期に両親からネグレクトを受けてきたミユさんは、15歳から児童養護施設で育った。施設の決まりとして、18歳で退所を迫られたミユさんは、一人暮らしを始める貯金もなく、仕方なく実家に戻ることとなった。
ただ、実家に戻ったところで、両親との同居は苦痛だった。手っ取り早くお金を稼いで、はやく独り立ちをしたいーー。そう考えたミユさんは、若さをウリにしようと風俗業界に飛び込んだ。
最初はピンサロに入店し、慣れてきたら稼ぎを求めてデリヘルに。それ以降は大久保公園での立ちんぼや出稼ぎも経験し、件のデリヘル『C』に入店する運びとなった。
「2024年の秋ぐらいですかね。立ちんぼをしてた時に知り合った女の子がCで働いてて、かなり緩い感じで働けるって聞いてたんですよ。勤務時間中に外出しても問題ないらしく、デリヘルの方で予約が入ってなかったら、待機中にパパ活アプリで個人的にお客さんと会って、暇な時間を埋めていると言っていました。それぐらい緩いなら、デリヘルとパパ活、うまく併用して稼げるのかなと在籍を決めました」
◆内勤が特定のキャストをえこひいき
体験入店を経て、そのまま在籍を決めたものの、入店直後から違和感を覚えるようになる。
「入店した初日についたお客さんが、3日後にリピートしてくれたんです。短期間でお客さんがリピートしてくれることってわりと珍しいのですが、内勤から『え、お前みたいなのが人気なの?』って対応されたんです。普通、褒めてくれるじゃないですか。なんか嫌な感じだなあと思ってて。
それ以降も、写メ日記を欠かさず更新して、出勤時間内で予約が埋まる日も増えていきました。その時も、内勤から『お前が満枠(出勤すべての時間帯が埋まっていること)なんてあり得ない』って言われたんです」
加えて、ミユさんが疑問に感じたのは、内勤が全員のキャストに対して、ずさんな態度を取っているわけではないことだった。
「日に日に、内勤のえこひいきが激しいと感じるようになりました。内勤の2人はゴリゴリの地雷系が好みのようで、キャストの女の子も、派手髪にピアス、涙袋を強調した濃いメイクを施した娘が多かった。一般的なデリヘルなら敬遠されるような、リスカ跡やタトゥーが入った女の子も採用していましたね。ちなみに私は、ロリ感のある清楚系の雰囲気で、内勤の好みとはかけ離れていました。
露骨なのは、えこひいきされた女の子が、お店の指名比率ランキングを上位独占していたことです。ナンバー3の女の子なんか、月1回しか出勤していない時期もあったのに……です。内勤におかしいと訴えたら、『あの娘は広告塔だから』の一点張り。内勤の独断でランキングを決めたら、わたし含め他の女の子もやる気失せるなあって感じですよ。
いま思えば、私を紹介してくれた女の子も地雷系で、しっかりランキング上位に掲載されていました。それなのに実態は、週1回程度しか出勤していないし、予約が全然入っていない時間帯もある。本来なら干されるはずなのに、見た目だけで良い待遇受けているなと傍目で見ていました」
◆「お前は需要がないんだから本番しろ」と…
好みのキャストには高待遇な一方、それ以外にはずさんな態度を取る。ミユさんは、待機室で見聞きした内勤のパワハラめいた言動も明かす。
「内勤が、本番行為(最後まで性行為すること)をそそのかすことも度々ありました。見た目が好みでないキャストに対して、『お前が本指名(リピート)返せないのは本番していないからだ』とか、『お前は需要がないんだから本番しろ』とか言ってて、かなりモラっぽい発言だなあと引きましたね。
それから私の話ですが、お客さんの相手をして、店舗の待機室に戻った時、いきなり内勤から『ピザ食べる?』って渡されたんですよ。いきなりのことで戸惑っていたら、他の女の子が『やば〜い』って笑ってて。どうやらそのピザ、一回床に落ちたらしくて、嫌がらせで私に食べさせようとしていたんですよ。怒りを通り越して呆れちゃいましたね(苦笑)」
結局、働くモチベーションも下がり続け、ミユさんは入店から2ヶ月ほどで在籍を離れた。
◆30分延長で還元されるのは、たった「1000円」
今回、ずさんな風俗店の実態について、記事を通じて告発することで、身バレや誹謗中傷などのリスクも伴う。それでも取材に応じてくれた経緯を尋ねると「同じ業界で働こうとしている女性に注意喚起したかった」と話す。
「そのデリヘルは、内勤のひいきが激しいのに加えて、求人に書いてある給与体系がいい加減なんですよね。サイトによっては、給料がフルバック(コース料金を全額保証)って書いてあるんですけど、まったくそんなことはない。私の場合、60分のコースだと、大体女の子がもらえるのは5割弱から多くて6割強でした。それから延長料金も還元率が低くて、30分5000円のところ、バックで入ってくるのは1000円だけでした。
そうした求人に騙されてしまうのは、未経験の女の子が多いと思うんです。覚悟を決めて風俗を始めようと思った女の子が、いきなり悪質でいい加減なお店で働かされたら可哀想だし、何より未経験の女性を丸め込んで働かせているお店が許せない。搾取される女の子が減ってくれればいいなと思ってます」
顧客から性的消費されるだけでなく、店側からも不当に搾取されてしまう。そうした実態が蔓延っている現状が、少しでも改善されて欲しいとミユさんは主張する。
ちなみに現在、ミユさんは別のデリヘルに勤務している。聞けば、系列店が複数あるグループで、かつ風俗サイトで上位にランクインする優良店のようで、質の良いスタッフにも恵まれているそうだ。
<取材・文/佐藤隼秀>
【佐藤隼秀】
1995年生まれ。大学卒業後、競馬会社の編集部に半年ほど勤め、その後フリーランスに。趣味は飲み歩き・散歩・読書・競馬