バルミューダの「高級ホットプレート」なぜ人気? 発売1年で4万5000台突破のワケ

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2025年02月13日 06:21  ITmedia ビジネスオンライン

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バルミューダの「高級ホットプレート」が人気、なぜ?

 家電メーカーのバルミューダ(東京都武蔵野市)が2023年10月に発売したホットプレート「BALMUDA The Plate Pro」(以下ザ・プレート、直販価格4万4550円)の売れ行きが好調だ。4万円台という高価格帯にもかかわらず、発売から1年で4万5000台を販売した。


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 人気の背景には、プロの料理人の知見を生かした独自のプレート構造や温度管理技術、そして同社が重視する「体験価値」を生み出すデザイン哲学があるようだ。


 ザ・プレートは、プロが使う調理器具に付属している機能を家庭用に落とし込んだ「Pro」シリーズの第2弾。同シリーズは、元シェフの入社をきっかけに、料理人の知見を取り入れた製品開発が可能となり、誕生した。


 第1弾は、2022年に発売したトースター「BALMUDA The Toaster Pro」(同3万8500円)で、レストランの厨房で使われるサラマンダー(食材を上火だけで仕上げる調理器具)機能を搭載し、話題となった。 


 今回は、家庭でおいしく本格的な料理を作るための道具としてホットプレートに着目し、「熱のコントロールを進化させると、料理のレベルも上がる」というプロの知見を取り入れながら、2年半をかけてザ・プレートを開発した。


●「蓄熱性」と「温度調整機能」で本格的な料理


 食材を焼くプレート部分は銅や鉄など、さまざまな素材で試作を重ねた。ステンレスとアルミニウムを組み合わせた3層構造のクラッド材(異なる金属を組み合わせた複合材料)を採用し、プレートの厚みは一般的な製品の2倍以上となる6.6ミリに設定した。


 その結果、高い蓄熱性を実現し、食材を置いても温度が下がりにくい仕様となった。


 一般的なホットプレートの場合、冷たい肉を置くと温度が下がってしまう。そのため、センサーが温度を一気に上げるが、肉は低温から徐々に加熱されるため、おいしい焼き加減が実現しにくくなる。


 ザ・プレートは食材を置いても温度が下がらず、一定の温度で焼き上げられるため旨みを逃さない。また、プレート全体で均一に熱を保つため、家庭の焼肉でありがちな、プレートの端が冷めてしまうという課題も解決した。


 温度設定は、160〜220度の20度刻みの4段階で制御できる。高温での焼肉や魚のソテーのほか、最低温度の160度では、自宅では難しいとされる極薄クレープづくりまで可能とするなど、調理の幅も広がる。


 和牛専門の精肉店や洋食レストランなどのプロにも使用を依頼したところ、温度コントロールの精密さが評価されるなど、料理人からも高い関心を集めている。


●家庭で「ライブキッチン」を味わえるデザイン


 デザイン面では、ユーザーが料理を楽しむ体験価値を重視し、「ホットプレートが食卓のステージになる」というコンセプトのもとで、プレートのフチをなくすデザインを採用した。その結果、薄い食材でも横から調理しやすくなるなど、想定外のメリットも生まれた。


 さらに、ステンレス製で頑丈なことから、付属の金属ヘラやナイフをプレート上で使用できるため、鉄板焼き専門店のような調理も可能となった。


 デザインの狙いについて、同社ブランドマーケティング部長の秦泉寺(じんぜんじ)里美氏は、「作る人が主役になれるような製品を目指した」と語る。


 フチをなくしたことで油ハネを心配する声もあるが、同社の検証によるとフチの有無による大きな差は見られなかったという。


●4万円台でも発売1年の販売数は想定を上回る


 商品コンセプトとデザインは早く決まったが、価格(4万4550円)については社内でも不安の声が上がっていた。しかし4万円を超えても、それに見合う体験価値を提供できると考え、実演販売にも注力。「肉を最もおいしく焼ける製品」というポジショニングを目指して、PRから積極的に取り組んだ。


 その結果、発売から1年で4万5000台を販売し、想定を上回る反響を得た。別売りでフチ付きプレートと専用フタ、たこ焼きプレートなども用意しており、発売当初はフルセット購入が7割を占めた。


 既存製品と異なり、男性の購入が目立ったほか、今回初めてバルミューダの製品を購入した人も多かったという。キッチンよりもダイニングでの使用を前提にした製品設計にしたことで、新たなターゲットに届いた。


 「プロの調理現場の機能を家庭用に落とし込んだ商品として、道具にこだわる人や料理を振る舞うのが好きな人に共感された」と秦泉寺氏は分析する。


 一方で、課題としては「使用頻度」をあげる。「何を作ればいいのか分からない」という声も寄せられており、この課題に対し、同社はトースター開発での経験を生かす考えだ。


 「パンを焼く以外の使い道」を発信したように、肉を焼くだけの道具ではなく、素材の味わいを変える、料理を楽しくする道具として用途の広さを提案していく。


●海外展開も開始


 国内での好調を受け、海外展開も始まった。韓国と台湾では製品の特徴を丁寧に伝えることで、調理道具にこだわる層から支持を得るなど滑り出しは好調だ。


 2025年春からは、グリル文化が主流の米国での販売も開始する。「米国ではホットプレート自体の浸透度は高くない。バルミューダというブランドの認知度を高めながら、製品に込めた価値を伝えていきたい」と秦泉寺氏は意気込む。


 バルミューダでは製品を開発する際、利便性やスペックだけでなく、それ以上に使用時の驚きやワクワク感を含め、生活をより良くすることを重視している。今回のザ・プレートは、「その思想を表現できた製品」だと秦泉寺氏は手応えを語る。


 米国ではブランドの認知度がまだ浸透していないなかで、バルミューダが掲げる「体験価値」をどこまで届けられるのか。長く愛される製品として、その“熱”を保ち続けられるかが試される。


(カワブチカズキ)



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