横浜流星「第79回毎日映画コンクールの贈呈式」第79回毎日映画コンクールの贈呈式が2月13日(木)、東京・めぐろパーシモンホールで行われた。
今回は『夜明けのすべて』が日本映画大賞、監督賞、TSUTAYA DISCAS映画ファン賞の3冠に輝いた。メガホンをとった三宅唱監督は、第77回の『ケイコ 目を澄ませて』に続き、大賞、監督賞を受賞した。
また、今回から男女の別が撤廃された俳優部門では、河合優実(『あんのこと』『ナミビアの砂漠』)、横浜流星(『正体』)が主演俳優賞を獲得している。
『正体』(藤井道人監督)で、脱獄し姿を変えながら逃走する死刑囚・鏑木慶一を熱演した横浜。藤井監督とは、長編劇場映画で3度目のタッグを組んだ。「出会って10年。お互い、何者でもなかった頃から走り続けた。『正体』はその集大成になった」と、これまでの道のりに感無量の面持ちだ。
高い評価を得ている『正体』は、興行的にもヒットを記録しており「たくさんの人の心に届き、愛していただいたことが幸せ」とファンに感謝。「これからも妥協せず、志を高く、映画人として映画業界を盛り上げられれば」と決意表明していた。
河合は『あんのこと』(入江悠監督)で日常的に親から虐待を受け、薬物中毒に陥る主人公・杏を好演。『ナミビアの砂漠』(山中瑶子監督)では“世の中も、人生も全部つまらない”そんなやり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている21歳のカナを演じ、国際的な評価も獲得した。
スケジュールの都合で贈呈式は欠席となった河合は、「全然違った志の作品ですけど、わたしたちにできたことを、一生懸命にやったつもり。大切な2作品で賞をいただき、とても光栄に思います。(受賞し)背中を押していただく大きな力をいただいた」とビデオメッセージを寄せた。
贈呈式には、山中監督が代理で出席し「河合さんの本質を見つめる力、誠実さ、細やかさ、着実な努力のたまもの」と受賞を祝し、「光が降り注ぎながら、影を見つけることができる唯一無二の俳優」だと、その稀有な存在に敬意を示していた。
3冠に輝いた『夜明けのすべて』は、瀬尾まいこ氏の同名小説の映画化。パニック障害とPMS(月経前症候群)を抱え、生きづらさを感じる男女が特別な絆を築いていく姿を描いた。NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」で夫婦役を演じた松村北斗と上白石萌音が再共演した。
三宅監督は「小説という大きな器の中で、映画を作らせてもらった」と、原作に対し感謝の言葉を送り、「作品をつくっただけでも幸せだが、互いの仕事を褒めたたえ合って、また一緒に仕事したいねと言えることがうれしい」と思いは格別。「自分の仕事は、いい現場といい作品を両立させること」だと、監督業のポリシーを語った。
助演俳優賞は池松壮亮(『ぼくのお日さま』)、カルーセル麻紀(『一月の声に歓びを刻め』)、スポニチグランプリ新人賞には越山敬達(『ぼくのお日さま』)がそれぞれ輝いた。贈呈式では、池松&越山の『ぼくのお日さま』コンビにエスコートされたカルーセル麻紀が「うわー、うれしい」と笑顔を見せる場面もあった。
池松は「初めて個人賞をいただきました。いま、喜びが押し寄せております」と心境を明かし、「敬達、本当におめでとう」と若き共演者を祝福。「この世界に物語を届けられること、この世界に必要な共感をもたらせること。そして、演じることを生業にできる幸せをかみしめて、これからも映画のなかで、真実を語り続けていきたい」と誓った。
一方、越山は「このうれしい気持ちを忘れずに、この賞に恥じないように、そして、この舞台に戻ってこられるように頑張ります」と、意気込みを語った。
また、カルーセル麻紀は「何しろ82歳ですから。この舞台に立てるとは思っていなかった。長生きして良かった」と感慨しきり。受け取ったトロフィーを誇らしげに掲げ「これを遺灰がわりにします」と、パワフルに笑いを誘った。
毎日映画コンクールは1946年、日本の映画産業の振興に寄与し、国民に映画の楽しさを広く伝えることを目的に、毎日新聞社とスポーツニッポン新聞社によって創設された映画賞。今回から、俳優部門で男女の別を撤廃するなど、賞立てや選考方法を改革した。
第79回毎日映画コンクールの受賞結果は以下の通り。
▽日本映画大賞
『夜明けのすべて』(三宅唱監督)
▽外国映画ベストワン賞
『オッペンハイマー』(クリストファー・ノーラン監督)
▽主演俳優賞 ※俳優部門は今回から男女の別を撤廃
河合優実『あんのこと』『ナミビアの砂漠』
横浜流星『正体』
▽助演俳優賞 ※俳優部門は今回から男女の別を撤廃
池松壮亮『ぼくのお日さま』
カルーセル麻紀『一月の声に歓びを刻め』
▽スポニチグランプリ新人賞
越山敬達『ぼくのお日さま』
▽監督賞
三宅唱『夜明けのすべて』
▽脚本賞
濱口竜介『悪は存在しない』
▽撮影賞
池田直矢『十一人の賊軍』
▽美術賞
林田裕至『箱男』
▽音楽賞
石橋英子『悪は存在しない』
▽録音賞
浦田和治『十一人の賊軍』
▽ドキュメンタリー映画賞
『映画 ○月○日、区長になる女。』(ペヤンヌマキ監督)
▽大藤信郎賞
『私は、私と、私が、私を、』(伊藤里菜監督)
▽TSUTAYA DISCAS映画ファン賞
日本映画部門『夜明けのすべて』(三宅唱監督)
▽同・外国映画部門
『インサイド・ヘッド2』(ケルシー・マン監督)
(シネマカフェ編集部)