「遺体に産んだハエの卵が…」特殊清掃業者が明かす、思わずゾッとしてしまう虫との戦い。“G”以上の耐久力を誇る“厄介な害虫”も

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2025年02月17日 09:31  日刊SPA!

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※写真はイメージです。
 特殊清掃の仕事をしていると様々な現場に遭遇する。そのなかで、手間と時間を食われる一番やっかいな天敵が虫である。ハエ、ウジ虫、ゴキブリ、シバンムシ……。
 都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、避けられない害虫との戦いについて話を聞いた。

◆ハエやウジ虫は一体どこからやってくる?

 密閉された現場でも必ず、遺体にはウジ虫が湧いている。一体、あのハエたちはどこから入ってくるのか。

「孤独死の現場など、死後発見が遅れた遺体がある現場を清掃する際には必ずハエとの戦いがあります。まず、遺体の匂いを嗅ぎつけたハエが換気扇やエアコンの隙間から入ってくるんです。

 そのハエが遺体に卵を産み、ウジ虫が発生します。ウジ虫が発生した後にさらに放置してしまうと、ウジ虫が成虫になりハエになって部屋中を飛び回るようになります。そうなると換気扇を通ってハエが隣の部屋に行ったり、共用部分に出てきます。すると、周囲の人間が『何かおかしい』となり、孤独死が発覚することは多々あります」

 ハエの被害は部屋だけでなく、排水溝の中にまで及ぶことも。風呂場の排水口を見るとハエの死骸が山のようになっているとか。

「こういう虫の被害は賃貸アパートよりも分譲マンションだと大変なんです。住宅ローンで買った家が近隣の孤独死の影響で虫だらけになってしまう。こういうケースって結構多いんですよ。当然、自分が購入した家なので、通路などの共有スペースに虫がいるのをすごく嫌がる。ですので、我々としては他の家や共有スペースへの被害を最低限に抑えつつ、完全に虫を死滅させるといった作業工程が必要となります」

 作業工程としては、まず虫の侵入経路の封鎖だ。玄関や窓、排水口などをテープなどで完全に塞ぐところから始まる。

「虫の被害で多い問い合わせは『上の階で孤独死があり、最近自分の家が臭う』『おそらく孤独死だろうが、天井からシミが出てきて虫が湧いてくるようになった』といった内容です。ハエは数ミリの隙間であれば入ってきて発生してしまうんです。

 上の階の床と下の階の天井との間にウジ虫が湧いてしまい、そこから成虫になってどんどん卵を産んで増えていくといった現象があります」

◆思わずゾッとしてしまう現場

「でも、おもしろいことにそういう狭いところで生まれたハエは飛べないという習性があるんです」

 現場を清掃中に手ではらっても飛ぶ様子を見せないという。

「飛べないハエが多い場合は駆除が楽ですね。気持ち悪いなって思うのは夏場の孤独死現場に出てくるハエです。遺体の体液などを食べてどんどん栄養をつけたのか、街中にいるハエの2倍くらいの大きさがあるんです。おそらく外に食べ物を探しに行かなくても目の前に大量の餌があるし、カロリーを消費することが少ないからだと思うんですけど。

 また、警察が現場検証している間は部屋の中のものが動かせないんですよ。その間にハエの命が生まれては消え、生まれては消えといったローテーションがあり、部屋中に大きいハエの死骸だらけといった現場になることが多々あります」

◆清掃には日数を要する

 ウジ虫にも種類があり、真っ白、真っ赤、背中に黒い点々がある個体など、さまざまである。

「布団を開いたところ、敷布団いっぱいにウジ虫が湧いていたことがありました。おそらく数千匹はいたかと思います。その数千匹が一斉に同じ方向に動き出すんですよ。暗いところに移動しようとする習性なのかもしれません。自由にバラバラに動く個体がいてもいいじゃないですか。でも軍隊のように同じ動きをするんですよね。何か集合意識が働いてるとしか思えないくらいの……生き物って不思議だなと思いました」

 ここまでハエやウジ虫の被害があると、清掃にもかなりの日数がかかってくるようだ。

「とことん部屋を綺麗にしたはずなのに、お客様からまだハエが飛んでいるとクレームが入ったことがあったんです。『布団周りなどは綺麗にしたのにな』と不思議だったのですが、原因はお風呂場やキッチンの排水口でした。おそらく、シンクや風呂場で吐血をして、血が排水溝に固まってしまっていたのが原因だと思います。こうなってしまうと、毎日現場に行ってハエが出てこないかを確認しないといけないので、かなり骨の折れる作業でした。しかもこちらのミスなので追加料金などを取ることもできず……。そこから人が亡くなる前の動き方や動線まで意識するようになりました」

◆問題はゴキブリよりもシバンムシ

 ハエの他にもゴキブリやシバンムシとの戦いが待っている。ゴキブリの駆除はそこまで難しくはないのだが、問題はシバンムシだという。

「ゴキブリの場合は薬品の散布で殺したり忌避させたりなどなんとかなるんですが、シバンムシは薬品がなかなか効かない。奴らはコンクリートの壁と、木や石膏ボードの壁の間に棲みついたりします。壁の裏までは薬品が届かないことが多いので、基本的には壁紙をはがしたりするのですが、壁って、ひどく匂いが染みついていたりしない限りは、費用もかかるので壊さないんです。

 なので、シバンムシが棲みついていることに気づかないことが何度かありました。そうやって清掃を怠ると、シバンムシが出続ける家になってしまうんですよね。基本的には、存在が確認できなくても壁の後ろにも薬品がきちんと届くような作業をするようにしています。とはいえ、目視で確認できないため、なかなか難しいんですよね」

 シバンムシが生き残ってるかどうか、餌を撒いて確認するなど、数日を要することがあるそうだ。

「虫の問題は本当にやっかいです。今までの経験上、マンションやアパートなどの集合住宅の場合、家と家の間に大量の虫がいる可能性が高いので、どうしても作業工程に数日かかる場合があります。

 そのぶん、費用もかかってきます。見積もりに害虫駆除を入れないと、実際はひどい害虫被害があったり、特殊清掃をもう一度やり直さなくてはいけないといった事例も多々あります。虫を甘く見てはいけませんね」

<取材・文/山崎尚哉>

【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦

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