Jリーグを席巻する「相手にサッカーをさせない」戦い方 選手の創造性は薄れないか

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2025年02月18日 10:30  webスポルティーバ

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 2025年のJリーグが開幕した。ガンバ大阪対セレッソ大阪の大阪ダービーは2−5と派手な撃ち合いでスタート。非凡なセンスの持ち主である北野颯太が荒々しい得点感覚を見せる一方、宇佐美貴史、香川真司らベテランが円熟味を披露するなど、活況を呈した。

 開幕節はJリーグ過去最多の開幕入場者数を記録したようだが、全体的には"慎重な戦い"が目立った。

「相手にサッカーをさせない」

 多くのチームがそこに重点を置いていた。例年、その傾向は増しつつあり、とりわけ日本人監督に顕著である。発想の出発点が受け身的で、能動的ではない。敵のプレーを分断し、選択肢を削り、ミスを誘えるか。用心深く、周到で、効率を求めた戦いだが、言い換えれば、臆病で創造性に欠け、挑戦的でない、とも言える。

 フォーメーション的には5−4−1とお尻が重たい印象のチームが多く、「失点をしない」ありき。一方で、トランジションからのカウンターの意識は高い。守りを重視しながら、カウンターで相手を仕留める。言わば、"弱者の兵法"だ。

 その代名詞は、カタールW杯で森保一監督が用いた戦略構想だった。とにかく守りの算段を整え、相手のミスを誘発。カウンターで攻め手となる選手を前線に揃え、一発を狙う。

 ただ、監督の戦略を実行するだけだったら、世界では一敗地にまみれていただろう。今や欧州の最前線で経験を重ねる鎌田大地など有力選手たちが、ギリギリのところでボールを持つ時間を増やし、勝利の確率を上げ、ドイツ、スペインにどうにか金星を挙げた(一方、守りに回った格下コスタリカ戦では攻めあぐねて敗北し、弱者の兵法の限界を露呈した)。

 弱者の兵法は負けにくく、勝利も拾える。しかし、運の要素が強い。発展性はなく、選手の才能の開花を阻害する。

 横浜FC対FC東京戦(結果は0−1でFC東京の勝利)は、5−4−1のミラーゲームだった(3−4−2−1だという意見もあるかもしれないが、これだけ後ろが重く、サイドで相手を圧倒できる選手がいない編成は5−4−1とすべきだろう)。どちらも攻撃は単調で、ミスを恐れて蹴り、なかなかボールを前へ運べない。お互いが消耗した時間帯、終盤に展開が動いたが、それは戦力の均衡関係によるものだ。

【革新的なサッカーは望めない】

「サッカーをさせない」

 そればかりが目についた。たとえばFC東京の左ウイングバックに長友佑都がいるのは、守備重視の象徴だった。確かに相手にふたはできるが、高い位置でボールを受けても、撹乱するランニングや決定的な左足クロスはない。結局、ボールを戻すだけだった。

 一方で、俵積田晃太をサイドではなく、シャドーで使っていた。俵積田は俊足を土台にした"騎兵"であり、機動力を生かした崩し、仕掛けに特長がある。生粋のサイドアタッカーで、複合的プレーが求められるシャドーでは、無理にボールを運ぼうとしてノッキングしていた。決勝点のアシスト役だったが、偶発的と言えるだろう。

 そもそも、ポゼッションを志向したチームの補強FWがマルセロ・ヒアン(広大なスペースを生かしたプレーは得意だが、ボールを収め、気の利いたプレーは不得手)では理屈に合わない。適材適所という点でチグハグ。選手をフォーメーションに当てはめたような戦いが目立っている。あえて言えば、選手の持ち味も奪っているのだ。

 それが窮屈な感じの正体だろう。

 スペインでプレーする久保建英は、「小さい」「守備力が足りない」と懐疑的意見を向けられたこともあった。しかし、レアル・ソシエダではダビド・シルバのような左利きの選手たちと連係、攻撃的な才能を爆発的に開花させた。これはイマノル・アルグアシル監督の慧眼で、今や決定的ゴールを決めるだけでなく、高さで負けず、守備の貢献度も非常に高い。

 小さな了見では、現在の久保は生まれなかった。

「サッカーをさせない」

 その枠に囚われる限り、革新的なサッカーは望めないだろう。なぜなら、日々のトレーニングから選手に強度を中心に「リスク管理」を叩き込み、まずは「ミスをしない」という臆病さを植えつけてしまうからだ。サッカーの基本である"相手の逆を取る"という遊び心、それを実行する覚悟などは醸成されず、覚醒が見込めない。

「サッカーをする」

 その姿勢が勝負を分けたのが、FC町田ゼルビア対サンフレッチェ広島の優勝候補対決だった。

 こちらもマンツーマンに近いミラーゲームでガチガチな展開。ロングスローなどセットプレーにかける時間が長く、ロングボールも多用する。お互いが持ち味を削り合うようなじりじりした流れだった。

 そんななかで、ミヒャエル・スキッベ監督が率いる広島は、「サッカー」で上回ったと言えるだろう。走行距離、スプリント数など強度では町田を下回ったが、しつこくボールをつなぎ、ゴールに迫った。そしてトルガイ・アルスランが接戦で高い技術を見せつけ、ジャーメイン良はネットを揺らそうとする気概を見せ、見事に逆転勝利を飾ったのだ。

 サッカーをする・させない、の駆け引きのなかで、このゲームは成立している。しかし後者のコンセプトばかりが横行すると、創造性は薄れ、内容はつまらなくなる。偶発的ミスに頼って勝利を重ねる、という戦略は味気ない。

 Jリーグが真の進化を遂げるには、戦い方の革新が求められる。

このニュースに関するつぶやき

  • 攻撃サッカーが日本で流行らないのは創造性の欠如ではなく、1枚ずつ守備ラインを超えていくための理論の欠如だと思う。子供の頃から外に走らせ、裏に走らせのヨーイドンしかやってないんだから。
    • イイネ!5
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