共同通信杯を制したマスカレードボール(撮影:下野雄規)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆血統で振り返る共同通信杯
【Pick Up】マスカレードボール:1着
5世代を残して9歳の若さで早世したドゥラメンテ。現3歳はその最終世代で、マスカレードボールのほかに、ジュタ(若駒S)、エネルジコ(セントポーリア賞)、アスクシュタイン(コスモス賞)、ファイアンクランツ(札幌2歳S-3着)、ネブラディスク(共同通信杯-4着)などが出ています。
ドゥラメンテは現役時代、皐月賞と日本ダービーの二冠を制覇。ちょうど10年前の共同通信杯では、単勝1.8倍の断然人気に推されたものの、リアルスティールに半馬身差をつけられて2着に敗れました。マスカレードボールは父の雪辱を果たしたことになります。
母マスクオフはビハインドザマスク(スワンSなど重賞3勝)の娘で、繁殖牝馬としてすでに、マスクトディーヴァ(阪神牝馬S、ローズS/父ルーラーシップ)、トゥーフェイス(オープンクラス/父モーリス)を産んでいます。1戦1勝で引退したスガオノママデ(父ハービンジャー)も、骨折することなく無事競走生活をまっとうしていれば、かなりの活躍が期待できました。
母は「ディープインパクト×ホワイトマズル」。わずか14頭からスマートレイアー、ミッキーグローリー、カツジと3頭の重賞勝ち馬が誕生した組み合わせです。マスクオフは競走馬としては1勝にとどまりましたが、繁殖牝馬として非凡な才能を発揮しました。その好相性のカギは、ディープインパクトとダンシングブレーヴ(ホワイトマズルの父)のニックスにあり、ヘイロー、サーアイヴァー、ドローンという3つの相似な血を内包(3.5×5)していることにあります。マスカレードボールの場合、サンデーサイレンス3×3を通じてこれらを継続しています(サンデーサイレンスの父がヘイロー)。
大敗したホープフルSは体調が本物ではなく、大外枠の不利もありました。皐月賞、日本ダービーの双方で好勝負に持ち込めるはずです。
◆血統で振り返るクイーンC
【Pick Up】エンブロイダリー:1着
父アドマイヤマーズは、初年度産駒の血統登録頭数がわずか62頭。サートゥルナーリアの142頭、ナダルの98頭に比べるとかなり少ないのですが、JRAファーストシーズンサイアーランキングで3位に食い込みました。
種牡馬能力と新馬戦の成績は、個人的に強い相関関係があると考えているのですが、アドマイヤマーズの新馬戦連対率は先週終了時点で30.4%。この数字はかなり優秀で、種牡馬アドマイヤマーズの高い能力を端的に表していると思います。
牝馬のパフォーマンスが優れているのが特徴で、エンブロイダリーのほかに、ナムラクララ(紅梅S)、ジャルディニエ(アスター賞)、ルージュラナキラ(つわぶき賞)などが出ています。現時点で東京芝を得意としており、連対率は40.0%。中山の10.5%とは対照的です。
初勝利を挙げたデビュー2戦目の新潟芝1800mは、東京コースと同じく直線の長い左回りコース。勝ちタイム1分45秒5はレコードタイムでした。
3代母ビワハイジは、マンハッタンカフェのいとこにあたり、ドイツ血統にルーツを持つ名血です。現役時代にエアグルーヴを破って阪神3歳牝馬S(現在の阪神JF)を制覇しました。繁殖牝馬としても、年度代表馬ブエナビスタ、阪神JFの勝ち馬ジョワドヴィーヴル、重賞3勝馬アドマイヤオーラなど6頭の重賞勝ち馬を産んでいます。孫以降の代が重賞を勝ったのは初めて。母ロッテンマイヤーは9年前に当レースに出走して3着と敗れました。
父アドマイヤマーズは香港マイルなど3つのマイルGIを制したのですが、産駒は距離の融通性があるので、おそらくは2400mのオークスでも問題ないタイプでしょう。