昼下がりの皇居・御所の大広間で、天皇陛下と雅子さまがモニターに映し出された高齢者が卓球を楽しむ様子を、ほほ笑みながらご覧に……。2月13日、両陛下は長崎県対馬市の通所介護施設をオンラインで視察された。
「オンラインを通じたご視察はコロナ禍で始まった試みでしたが、行動制限が緩和されて以降も、日程や交通の便などの問題から行幸啓が難しい遠隔地のご視察が可能になるため、両陛下も積極的に活用されています。こういった“令和流”の新たな取り組みは、このほかにも着実に形を見せ始めています」(皇室担当記者)
その一つが、16年ぶりとなる宮内庁公式ホームページ(以下、HP)の大刷新だった。対馬市のご視察の前日、宮内庁はリニューアルしたHPを公開した。
写真のサイズも大きく表示されるようになったほか、ビジュアル面で大きく様変わりが。「見る」「知る」「訪れる」の3つのキーワードに沿う形で、皇室のご活動やご日程、皇室の制度、参観案内などのコンテンツが閲覧できるように変化したのだ。宮内庁関係者は、
「発信している情報の中身には大きな変化はありませんが、まずデザインが大幅に刷新されました。一般の国民がふだん立ち入ることができない宮殿内の一部を360度のパノラマで見られるコーナーや、公式インスタグラムを連動して表示したり、さらにはスマートフォンでHPにアクセスしても、見やすいサイズで表示されるようになりました。
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かなり思い切ったリニューアル第1弾となったわけですが、こうした変化は天皇陛下と雅子さまのご了解のうえで進められています。民間からの中途採用者の知見も参考にして、2025年度には内容の刷新も検討されています」
両陛下が主導されたこの令和の大刷新の狙いは、どういったところにあったのか。1999年7月に開設されたHPの制作に、当時、宮内庁の行政情報化担当として携わった皇室解説者の山下晋司さんはこう話す。
「当時は毎年発行していた『宮内庁要覧』という皇室の方々の略歴や施設の概要などを掲載した冊子がありました。HPはその掲載内容をベースにしました。宮内庁のドメインの一部は『kunaicho』ですが、“kunaichou”のほうがよいといった意見が出るなど、すべてがゼロからの出発でした。HPはセキュリティを重視し、“上品でわかりやすく”などを心がけて制作しました。
その25年前のHPをベースに追加、改修を重ねてきましたが、スマホでの閲覧が多い現在には合わなくなってきていました。ですから、今回の刷新は必要不可欠だったといえます」
時代に合わせた発信の形を模索することは、皇室の未来を考えるうえでも欠かせないことだと、名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんは指摘する。
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「皇室には長い歴史に根差す伝統がありますが、その名のもとに“あぐらをかく”ような状況は、好ましいこととは言えません。象徴天皇制は、国民からの支持がなければ成り立たず、特に若い世代に皇室の存在意義を理解してもらわなければ、皇室の存続が将来的に困難になっていく可能性もあるのです。
“なぜ日本に皇室があるのか”“どういう活動をしているのか”ということを、わかりやすく若い世代に伝えるうえでも、HPの刷新という取り組みは意義が大きいことだと思います。今後の内容面の刷新においては、天皇皇后両陛下をはじめ皇室の方々の幼いころからのお言葉や行動などを丁寧に載せながら、お人柄がいっそう伝わる工夫を期待しています」
■皇室に前例のないクイズ王とのコラボ
将来を担う若者に向けて、“もっと私たちに近寄ってほしい、知ってほしい”という願いを伝えられるため、天皇陛下と雅子さまは2つ目の試みも始動されている。リニューアルしたHPの公開と同じ日、宮内庁は皇居東御苑を歩きながらクイズを解くイベント「皇居を巡る謎解きの旅 with QuizKnock」を3月18日から始めると発表した。
QuizKnock(クイズノック)とは、東大クイズ王として知られる伊沢拓司氏が中心となって運営されるウェブメディアで、スタートイベントでは伊沢氏が解説を行うという。
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皇居東御苑は、旧江戸城の本丸などがあった広大な庭園で、宮内庁が所管する美術品などを展示する三の丸尚蔵館や、皇宮警察本部庁舎などもある。皇室の歴史や伝統が息づく場所でクイズ大会が開かれることは、まったく前例のない試みだと前出の宮内庁関係者は語る。
「東御苑は1968年に初めて一般公開され、バラ園や果樹園なども楽しめるように整備されてきました。しかしそもそも、クイズ大会のような皇居内でエンタメ色を前面に打ち出したイベントは前例がありません。皇居での催し物ですから、当然天皇陛下のご了解あってのことです。
両陛下は、将来にわたって皇室を守り抜くために、現状に対して危機感を抱かれていると伺っています。HPの刷新や『謎解きの旅』も、若い世代に向けた発信の一環として重要な試みと考えられているようにお見受けしています。こうした両陛下の問題意識が、新しい取り組みに対して慎重な宮内庁を動かした原動力になっているのです」
■愛子さまのご体験が両陛下のご決断を…
さらに、皇居を舞台にした国民参加型の一大レクリエーションという着想は、愛子さまのご発案ではないかというのだ。
「愛子さまは学生時代に『オール学習院の集い』にほぼ毎回赴かれ、盲導犬体験やスタンプラリーにもよく参加されていました。ある年のスタンプラリーでは、終了時間ギリギリまでお友達と楽しまれ、キャンパス内を走られていたこともあったほどです。また幼いころにはディズニーリゾートや富士急ハイランド、近年ではおしのびでご友人らと訪問されたという東京ドームシティで、さまざまなアトラクションを体験されています。
学習院大学4年生のときには、学習院大学の学園祭をお友達と回られていましたが、同大のクイズ研究会のクイズ体験会の様子などもご覧になっていたそうです。体験型イベントの面白さを知る愛子さまが、『謎解きの旅』の実施にあたり、両陛下の決断の背中を押されたのではないでしょうか」(前出・皇室担当記者)
2月に入り、「天皇杯 第50回記念日本車いすバスケットボール選手権大会」のご観戦や、特別展「旧嵯峨御所 大覚寺」で障壁画などを鑑賞されるなど、ご一緒にお出ましの場面が多くなっている天皇ご一家。
仲むつまじく語り合われるこうした光景のように、皇室の新たなる情報発信のあり方についても、語り合われていたのだろう。前出の宮内庁関係者はこう続ける。
「天皇陛下が2018年のブラジルご訪問前に立ち寄られたアメリカ・フロリダ州の日本人が学ぶ補習校で、子供たちとクイズに挑戦されたことがありました。そうした懐かしい思い出を振り返られながら、気づかれたこともあるのかもしれません。『謎解きの旅』も、国民が楽しみながら皇室の歴史や文化などに接することができるよう、まさに天皇ご一家が楽しく語らいながらアイデアを練られていったのだと思います」
“皇居を国民がもっと身近に感じられるように”というアイデアを形にしていく新たな試み。雅子さまが天皇陛下と愛子さまと編み出されていく“令和流”の改革から、これからも目が離せない――。
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