北海道・知床半島沖で2022年4月に起きた観光船「KAZU �機淵�ズワン）」の沈没事故で、乗客14人の遺族ら29人が運航会社「知床遊覧船」と桂田精一社長（61）に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が13日、札幌地裁で開かれる。被告側は会社の損害賠償責任を限定的に認めつつ争う姿勢を示しており、桂田社長の過失がどこまで認められるかが注目される。
最大の争点は、事故当日の出航判断の是非だ。
「出航を中止すべき状況は明らかだった」。原告側は、運航管理者と安全統括管理者を兼務していた桂田社長が出航を止めなかったことが、高度な注意義務違反だと主張する。
訴状によると、事故が起きた22年4月23日はこの年最初の運航日で、気象庁予報は風速15メートル、波高2〜2・5メートル。同社が海上運送法に基づき作成した運航基準の出航中止条件である「風速8メートル以上、波高1メートル以上」を超えていた。
原告側は桂田社長について、「シーズン最初の運航にもかかわらず知識・経験の不十分な豊田徳幸船長（当時54歳）に知床岬までの単独航行を指示した。利益を優先し安全を軽視した」と訴えている。
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一方、被告側は出航判断は妥当だったと反論する。
昨年11月に提出された被告側の答弁書によると、桂田社長は出航前、豊田船長から、海が荒れる場合には引き返す「条件付き運航」にするとの報告を受けたと主張。「出発地点のウトロ漁港内は穏やかだった」とした上で、「途中で引き返すか、避難港に入港した場合には事故の発生を避けられた」とし、桂田社長の判断に過失はないと反論する。
運航会社については賠償責任は認めつつも請求額は争う方針だ。
また、原告側が主張の根拠とする運輸安全委員会の報告書に対し「事故の法的責任を明らかにする目的で作成されたものではなく、直ちに事実と認定することは許されない」として、信用性を争う姿勢を示している。
13日には原告の乗客家族11人が意見陳述する予定。
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事故を巡っては、桂田社長は業務上過失致死罪で起訴され、刑事責任も問われている。【後藤佳怜】
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