北海道・知床半島沖で2022年4月に起きた観光船「KAZU �機淵�ズワン）」の沈没事故で、乗客14人の遺族ら29人が運航会社と桂田精一社長（61）に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が13日、札幌地裁で開かれ、乗客家族が「多くの命を奪ったことを真摯（しんし）に受け止めるべきだ」などと意見陳述した。会社側は「過失はなかった」として請求棄却を求めた。
「なぜ責任回避ばかりなのか」「謝罪は一度もない」「2度手紙を渡したが返事もない」。法廷には原告らから3年ぶりに顔を合わせた桂田社長への憤りの言葉があふれた。
桂田社長が乗客家族と公の場で対峙（たいじ）するのは、事故4日後に開いた家族説明会以来。スーツ姿で軽く一礼して入廷した桂田社長は、犠牲者の家族や婚約者らが次々に思いを読み上げるのを、手元に視線を落としたまま聞いていた。
時折、原告が怒りに震える声で「桂田さん」と呼びかける場面も。「26人が命を落としたあの（冷たい）海の厳しさを、自分で経験してみろ！」などと語気強く迫られると、桂田社長は小さくうなずいていた。
約1時間40分の弁論と非公開の進行協議を終えた桂田社長は無言で裁判所を去り、代理人弁護士を通じ「ご遺族の皆様の意見陳述の内容は、大変重く受け止めた」などとしたコメントを出した。
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息子を亡くした原告の男性は閉廷後の記者会見で、「法廷で桂田社長は居眠りをしているようなスタイルで、原告の意見を聞いているのか分からず不快だった。自身のずさんな管理で起こした事故に真摯に向き合い、責任を果たしてほしい」と話した。【伊藤遥】
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