※画像はイメージです 飛行機の場合、一部路線において期間限定で運航することはあるが、深夜発朝到着の深夜便は基本的に存在しない。だが、国際線だと長距離ではなくても深夜便が定期就航している路線も多い。
さすがに夜遅い時間のフライトのため、機内では眠る人も多いが、すぐに寝付くことができるとは限らない。なかには眠りたいのに一睡もできなかった、なんてことも珍しくない。
◆バンコクからデリーまで夜便で向かうことに
貿易会社に勤める桑沢良晴さん(仮名・32歳)が大学の卒業旅行に選んだのは、タイとインドの2か国周遊。バンコクからデリーに向かう際に利用したのは夜便だったが、「隣に座っていたインド人のせいで全然寝れませんでした」と振り返る。
「その日はバンコクの水上マーケットに行くために朝早く起きて、昼間も寺院巡りなど1日中観光していたんです。だから、空港に着いた時点で結構クタクタでした。でも、飛行機はLCCで機内食は付いていなかったため、搭乗してすぐ寝ればいいやと思っていました」
ちなみにバンコク―デリーの平均飛行時間は約4時間半。短距離でもないが長距離というほどでもない。
狭いエコノミークラスのシートだと寝られない方もいるが、彼は東京―バンコクのフライトでも爆睡。そのため、まったく心配していなかったという。
◆飛行機のエンジン音よりも大きないびきの声が
インドのLCCゆえか微かなスパイス臭が漂っていた機内はほぼ満員。桑沢さんの隣に座ったのはひげを蓄えた40代くらいのインド人男性で、恰幅のいい体格だったので圧迫感を覚えたそうだ。
「隣席の相手としてはハズレでしたね。座席のひじ掛けも最初から占領されていました。けど、私は窓側の席でしたし、壁に寄り掛かる形でスペースを確保していたため、そこまで窮屈ではありませんでした」
でも、試練は離陸前の段階で早くも訪れる。隣のインド人男性が寝入ってしまい、「グガウォ〜ッ!」という大きないびきを立て始めたからだ。
「特撮映画に出てくる怪獣の鳴き声のようでビックリしました。席は機内後方でエンジンが比較的大きいんですけど、おじさんのいびきのほうが勝っていました(笑)」
◆疲れているはずなのに、目が冴えてしまう
当時住んでいた実家は線路沿いにあり、多少の騒音はあまり気にならないタイプだったが真横でのいびきサウンドの迫力は違ったようだ。目を閉じて眠ろうと努力するもウトウト……という状況にはまったくならなかった。
「疲れているのに、逆に目がさえてしまう始末。座席モニターが付いていなかったからイヤホンは当然用意されていません。本当は卒業旅行の少し前にワイヤレスイヤホンを買ったんですけど、持ってくるのを忘れてしまう痛恨のミス。
手で耳を塞いだりしていましたが、その態勢を長時間キープも辛くて。結局、耐えるという選択肢しかありませんでした」
スマートフォンには電子書籍をダウンロードしていたので暇をつぶすことはできたが、ようやくいびきが収まったかと思えば、しばらくすると再び聞こえてくる。その繰り返しで「正直、口を手で押さえてやりたい衝動に何度も駆られました(笑)」と桑沢さん。
インド人男性は着陸まであと30分と迫ったころに目を覚まし、ここでようやく騒音から解放されたが、間髪入れずに新たな問題が発生する。起きてすぐに座席下の荷物からドーナツを取り出し、それをムシャムシャと食べ始めたのだ。
◆インド旅行の忘れられない思い出にはなったが……
「あれって食べカスが下にボロボロと落ちるじゃないですか。自分のヒザの上もカスだらけになるわけですが、おじさんは一切謝ることなく気まずそうな表情を浮かべることもなかったです。精一杯の抵抗として食べカスをおじさんに向けてはらいましたが、まったく気にするそぶりすら見せていませんでした」
現在、桑沢さんは国内外への出張や旅行で毎年50回前後飛行機に乗るそうだが、この人物ほどのひどいいびきに遭遇したことはない。食べカスについては、後にも先にもこの時のたった一度の経験だ。
「当時は『まあ、インドだし、そんなこともあるか……』と受け入れるようにしていましたが、厳密に言えば、インドに向かう機内での出来事。ただ、入国後はもっと強烈なハプニングに何度も遭遇しているため、全然大したことがないと錯覚してますけどね(笑)」
とりあえず、飛行機に搭乗する際は、耳栓やイヤホンなど耳を塞げるアイテムを準備しておいたほうがいいかもしれない。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。