
掃除や防災、ペット用品などの開発・製造・販売を行う「サンコー」(和歌山県・角谷太基代表)の社員らが今年1月、能登半島地震の被災地に訪れトイレの状況について調査したところ、いまだにトイレが使用できない世帯があることが分かりました。
このため仮設トイレが設置されているところがありますが、高齢者からは「段差があること」や「和式でトイレがしづらい」といった声が上がっていたとのこと。また携帯トイレを持っていても使い方がわからない人も一定数おり、携帯トイレの普及とセットでその使い方を啓発する必要性を、現地に赴いた社員らは感じたといいます。
同社によると、地震発生時はトイレの水が流れず、常に詰まっている状態に。しかし、被災者らは我慢できなかったことから詰まっている状態のトイレで排せつを続け、衛生面における課題も深刻化している状況だったとのこと。実際に、能登町災害対策本部の報告書には被災者が最も困ったことは「トイレ」と記載があり、防災用トイレの備蓄率が低く、トイレの回数を減らすために水分を控えることで便秘症状が発生するなど、二次被害も確認できたそうです。
防災用トイレの備蓄率わずか約22%
また一般社団法人日本トイレ協会の調査によると、災害に備えた備蓄状況については、懐中電灯66. 5%、非常食43.4%に対し、防災用トイレは22. 2%という調査結果が出ており、全国的にもトイレの備蓄率が低いことが判明。さらに、備蓄していると回答した人でも、一人あたりの備蓄回数が9回以下の回答が53.1%となり、経済産業省が推奨する一人あたり35回分の備蓄数を大きく下回る結果となりました。
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トイレの備蓄率が低いため災害発生後の数日間、仮設トイレが届いていない期間においては、自らたまったトイレの汚物をかき出すことも。「サンコー」は「防災用トイレの必要性を住民が自分ごととして認識し、国や自治体が防災用トイレの重要性や活用方法を啓発していく取り組みが必要」と訴えます。
今後、同社は防災用トイレの普及を通じた災害に強い社会の実現に向けて、多角的に取り組みを展開していくとのこと。具体的には「継続的に各地で開催される防災イベントに積極的に参加し、地域・国民の皆様に防災用トイレ備蓄を促し、同時に簡易トイレの使い方を発信していきたい」といいます。このほか災害発生後に、被災地に必要な物資が十分に届くよう、和歌山県や海南市など地元の自治体や、スーパー、ドラックストア、ホームセンターなど民間企業と連携し、備蓄体制の構築に努めるそうです。
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阪神淡路大震災をきっかけにアウトドア用から防災用にリニューアル
「サンコー」はマイカーブームで車に乗る人が増加し、さらにキャンプの流行により車で遠出する人も増え、渋滞時の困りごとを解決する商品として、子ども向けの携帯用ミニトイレの販売を開始。その後、アウトドア用品として折りたたみ式の簡易トイレを販売しました。
阪神淡路大震災をきっかけにアウトドア用の簡易トイレが防災用として多く使用されたことにより、防災用品へパッケージリニューアルし本格的に販売をスタート。 ここ数年は地震など災害が頻発することから防災用品の需要が高まり、2023年・2024年度の2年間で防災用トイレを含め防災用品に関しては約120万個の販売実績だそうです。
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(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)