父仔3代同一重賞制覇と「競辞苑」/島田明宏

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2025年03月20日 21:00  netkeiba

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▲作家の島田明宏さん
【島田明宏(作家)=コラム『熱視点』】

 先週のスプリングSをピコチャンブラックが勝ち、祖父ブラックタイド、父キタサンブラックとの「父仔3代同一重賞制覇」をなし遂げた。「父仔3代同一重賞制覇」がなされたのは、祖父ディープインパクト、父サトノダイヤモンド、仔サトノグランツによる2023年の神戸新聞杯以来のこと。

 日本での「父仔3代同一重賞制覇」はほかにどのくらいあるのか調べてみたのだが、見つけることはできなかった。

「父仔3代制覇」として最も知られているのは、祖父メジロアサマ、父メジロティターン、仔メジロマックイーンによる「天皇賞父仔3代制覇」だ。しかし、メジロアサマとメジロティターンが勝ったのは東京芝3200mの天皇賞(秋)で、メジロマックイーンが2回勝ったのは京都芝3200mの天皇賞(春)だった。天皇賞であることに違いはないのだが、完全に「同一重賞」なのかどうかというと、判断が難しい。

 もうひと組、惜しいところでは、祖父シービークロス、父タマモクロス、仔タマモサポートが、「父仔3代金杯制覇」を遂げている。シービークロスが勝ったのは金杯・東で、タマモクロスとタマモサポートが勝ったのは金杯・西だった。こちらは、メジロアサマ、メジロティターン、メジロマックイーンのケース以上に「同一重賞」と言うべきではないだろう。

 日本で走った馬の父系が3代、4代とつながることが多くなったのはわりと最近のことだから、完全な「父仔3代同一重賞制覇」は、これから少しずつ増えていくのだろう。

 と、書きながら思ったのだが、近年、種牡馬になるような強い馬はGIばかりを使われ、ステップレースを走ることが少なくなっている。つまり、前にも増して、父仔3代が共通して走るのはGIだけ、という傾向が強くなっているわけだ。となると、今後は「父仔3代同一重賞制覇」がそのまま「父仔3代同一GI制覇」となることが多くなるのか。「多くなるのか」と書いたが、前述した「天皇賞父仔3代制覇」を「同一」とみなさないと、「父仔3代同一GI制覇」はまだ一度も達成されていない。

 日本競馬史上初の「父仔3代同一GI制覇」は、キズナかコントレイル(ともに父ディープインパクト)の仔が日本ダービーを勝つか、イクイノックス(父キタサンブラック)の仔が天皇賞(秋)かジャパンC、有馬記念を勝つなどしてなし遂げられるのだろうか。

 GIIの「父仔3代同一重賞制覇」にも可能性がある。神戸新聞杯だ。レイデオロ(父キングカメハメハ)やエピファネイア(父シンボリクリスエス)、コントレイル(父ディープインパクト)の仔が神戸新聞杯を勝てば、めでたく「父仔3代同一重賞制覇」となる。シンボリクリスエスとキングカメハメハ、ディープインパクトが勝ったときの神戸新聞杯は2000mで、コントレイルが勝ったときは中京の2200mだったが、冒頭に記したサトノグランツの例が認められているのだから、これらの場合も「同一重賞」としていいだろう。

 さて、今週、MLB(メジャーリーグベースボール)が東京ドームで開幕した。対戦カードはロサンゼルス・ドジャースVSシカゴ・カブス。ドジャースには大谷翔平と山本由伸、佐々木朗希がいて、カブスには今永昇太と鈴木誠也と、合わせて5人も日本人選手がいる。しかも、両チームとも日本人が開幕投手と主力打者で、日本で開幕カードが行われるという、昔なら考えられなかった状況が現実になっている。

 前にも書いたが、詩人・劇作家・競馬コラムニストとして活躍した寺山修司は、1981年に行われた第1回ジャパンCを、少年時代に見た1949年の日米野球と重ねて描いている。第1回ジャパンCで、日本馬は一線級ではない外国馬に歯が立たなかった。1949年の日米野球も同様に、日本のプロ野球がアメリカの3Aのチームに一蹴された。

 日米野球に関しては、第1回ジャパンCが行われた1981年になると、日本のプロ野球がMLBのチームに連勝できるほどになっていた。寺山が少年時代に見た日米野球から32年。それからさらに44年経った今、日本人選手がMLBのトップチームの主力になっている。

 今年のサウジカップデーで、サウジCをフォーエバーヤングが制したのをはじめ、日本馬が出走した6レースのうち4つを勝ち、勝てなかったレースでも2、3着になったという状況は、44年前には想像できなかっただろう。

 競馬と野球というと、私は「球辞苑〜プロ野球が100倍楽しくなるキーワードたち〜」という番組が好きで、わりとよく見ている。あれの競馬版をグリーンチャンネルでできないだろうか。「球辞苑」は、「満塁」「延長戦」「スイッチヒッター」「アンダースロー」「ハーフスイング」「スライディング」など細かなテーマをゲストと共に掘り下げていく50分の番組だ。

 競馬版のタイトルは「競辞苑〜競馬がもっと楽しくなるキーワードたち〜」で、テーマは「馬場状態(「重馬場」「高速馬場」などでも)」「距離」「人気」「パドック」「馬場入り」「出遅れ」「ペース」「頭数」「気性難」「馬体重」「毛色」「親仔制覇」「馬柱」「上がり3ハロン」「レコード」「斤量」「ハンデ戦」「裏開催」「新人」「関西馬旋風」「外厩」「トライアル」「ダービー」「天神乗り」など、いくらでもある。

 私は、端のほうでデータを見ながらあれこれ言う編集委員の役をやりたい。

 やけに寒いと思ったら、ちらちらと雪が舞っている。花粉がひどいのに雪が降るとは、天気のほうはわけのわからない状態になっている。

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