日中外相会談に臨む中国の王毅共産党政治局員兼外相(左)と岩屋毅外相=22日午後、東京都千代田区(代表撮影) 日中韓3カ国は22日の外相会談で、貿易や投資など経済面の連携強化を打ち出した。トランプ米大統領の高関税政策で世界経済の不確実性が高まる中、それぞれ2国間に懸案を抱えつつも一致点を見いだすことを優先。ただ、北朝鮮への対応などでは溝も露呈した。引き続き首脳会談の年内開催を模索するが、先行きにはなお不透明感が漂う。
「3カ国間で外交の協力推進を確認した」。岩屋毅外相は22日夜、記者団に日中韓外相会談の成果を強調。これに合わせて行われた日中外相会談などにも触れ、「課題や懸案の解決に向け、率直で実りの多い議論だった」と手応えを口にした。
日本は、対話を通じた対中関係の安定を目指している。国内経済の低迷に苦しむ中国が、投資呼び込みを狙って「日本との関係改善を望んでいる」(政府関係者)と分析。両国の間合いを詰めるため、要人同士で頻繁な接触を図った。
石破茂首相は昨年10月にラオスで李強首相、同11月にペルーで習近平国家主席と会談。岩屋毅外相も同12月に訪中し、王毅共産党政治局員兼外相の来日に道筋を付けた。
もっとも、中国側には別の思惑も見え隠れする。「米国第一」を掲げるトランプ氏との間で今後、米中対立が激化する可能性をにらみ、日米韓3カ国の関係にくさびを打ち込むことだ。
実際、日中韓外相会談では立場の隔たりも垣間見えた。会談後の共同記者発表で、日韓両国は「北朝鮮の非核化」の重要性を強調。これに対し、中国は慎重な言い回しに終始した。
日中外相会談でも、日本産水産物の輸入再開や拘束邦人の解放など、日本側の重視する懸案で具体的な進展はなかった。中国側は歴史問題に言及するなど強硬姿勢も示し、日本外務省幹部は「日中韓首脳会談の実現に向け、一つでも二つでも進めていくしかない」と身構える。
一方、改善基調が続く日韓関係は、尹錫悦大統領の弾劾訴追の行方が影を落とす。関係改善を主導した尹氏が退陣した場合、韓国側で歴史問題が再燃するリスクを日本側は警戒している。
韓国内政の混乱は、北朝鮮と対峙(たいじ)する日米韓連携にも影響しかねない。「こちらは見守ることしかできない」。日本外務省関係者はこう嘆いた。

日中韓外相会談の冒頭であいさつする岩屋毅外相=22日午前、東京都港区の外務省飯倉公館(代表撮影)

日中韓外相会談の冒頭であいさつする中国の王毅共産党政治局員兼外相=22日午前、東京都港区の外務省飯倉公館(代表撮影)

日中韓外相会談の冒頭であいさつする韓国の趙兌烈外相=22日午前、東京都港区の外務省飯倉公館(代表撮影)