
3月23日の放送では、フランスの海上にぽつんとそそり立つ世界遺産「コルドゥアン灯台」を紹介しました。17世紀、海上での難工事を経て建てられた灯台は、その後増築され高さは高層ビル並みの67メートルにも達しています。外観と内装には、とても灯台とは思えない美しい装飾が施されフランス国王の居室が設けられていることからコルドゥアン灯台は「海のヴェルサイユ」とも呼ばれています。しかも400年経った今も現役で船の航行に欠かせない存在なのです。灯台があるのは大西洋沿岸、ジロンド川の河口から約7キロ沖合。その周辺の海は浅いところと深いところが入り混じった難所でコルドゥアン灯台の灯りが道標となり安全な航行ができています。
【写真を見る】フランスの世界遺産“海のヴェルサイユ”400年現役の灯台「コルドゥアン灯台」 撮影スタッフが灯台守と過ごした2泊3日
灯台とワインの関係コルドゥアン灯台はフランスにとって重要な灯台の一つになってきました。というのも川の上流には世界的に有名なワインの産地「ボルドー」があるからです。そのボルドーにある川に面した三日月型の港町も「月の港ボルドー」という世界遺産になっていて、18世紀にはそこから各国へワインが盛んに運ばれました。ワインを積んだ船が川から海に出て難所を通る時に無くてはならなかったのがコルドゥアン灯台なのです。
スタッフが灯台で生活をしてみた…フランスにとって重要な灯台を守ってきたのが灯台守なのですが、現在は公務員である4人がローテーションで常に1人が1〜2週間滞在しています。灯台の周りには居住スペースである建物があり、シングル2部屋、ツイン2部屋とキッチン、溜めた雨水を使うシャワーとトイレがあります。食料と飲料水は週に1回ほど灯台守が交代する時などに船で補給され、食事は自炊。電気は通じていますが電話やインターネットなどの通信環境は良くありません。
今回、番組スタッフはコルドゥアン灯台を撮影するために灯台守と2泊3日の共同生活を送りましたので、その時のエピソードを2、3ご紹介します。
撮影初日、船にスタッフ分の飲料水と食料を積み込み、河口から灯台に向かったのですが、この時は途中で別の船に乗り換える必要がありました。というのも灯台の近くは干潮で浅瀬になっていて座礁する危険があったのです。そこでタイヤがついた水陸両用船に乗り換えて行くことになったのです。
出迎えてくれた灯台守は2人、その1人は元ジャーナリストで歴史に興味があったことと世界遺産である灯台を守るという仕事にやりがいを感じ転職したと話していました。昼食時には彼らが撮影スタッフにラザニアとガレットをご馳走してくれたのですが味は絶品。さすが美食の国フランス、腕前はかなりのものでした。そのお返しにと取材に同行した日本人の現地コーディネーターが日本製のインスタントルーを使ってカレーを作って振舞ったところ、なんと大うけでした。
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スタッフは自然の厳しさも経験しました。短い滞在日数でしたが海は激しく表情を変えたのです。街の喧騒が届かない灯台で迎えた凪の夜は、コーヒーを飲みながら海を眺めていると波音が心地よく心身ともに癒されましたが、海が荒れた夜は外に出ることはできず波と風の音がうるさくて寝不足になりました。目まぐるしく変化する天候と向き合う灯台守の仕事は想像以上に大変なものなのだろうと感じました。
実はコルドゥアン灯台は一般公開されているのです。観光ツアーがあり料金は45〜60ユーロほど。滞在は潮の関係で長くても2時間ほどですが灯台守がガイドになって灯台の歴史や建造物として貴重さなどを解説してくれます。ボルドーのシャトーと世界遺産の「月の港ボルドー」「コルドゥアン灯台」を巡る旅は、ワインと歴史がお好きな方であれば貴重な経験になるはずです。