「2月や4月の寒い時季の撮影もあったのですが、いしださんは休憩中でも(商店主の)衣装のままでした。マネージャーさんによれば、防寒着や温かい飲み物を渡そうとしても、『私は大丈夫だから』とお答えになるそうです。ご本人は役柄になりきっていたのですね」
そう語るのは、秋田県大仙市にある「田村商店」の田村浩祥さん。
3月11日、『ブルー・ライト・ヨコハマ』などのヒット曲を持ち、映画『火宅の人』などで活躍した歌手で女優の、いしだあゆみさんが甲状腺機能低下症で逝去した。享年76。
大阪府池田市の商店街で育ったいしださん。彼女の家族と交流のある男性によれば、
「年末年始に入院していたと伺いました。それでも1カ月ほど前には、回復されたと聞いて喜んでいたのですが……。それからまた体調を崩してしまわれたのですね。……残念です」
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最後の映画出演作となったのが昨年公開された『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』で、大仙市の商店主役を演じた。自身が経営している店を、撮影場所に提供した前出の田村さんは、いしださんの“女優としてのすごみ”を幾度も感じたという。
「レジを打つシーンで、いしださんが打ち間違えてNGとなったことがありました。すると監督が、『そのほうが面白いですね』と、おっしゃって。そこで、いしださんは“打ち間違えるシーン”を、そのとおりに再現していましたが、やっぱり役者さんはすごいなと……。
現場には子役さんもいましたが少し緊張していたのがわかったのでしょうね。いしださんや柳葉(敏郎)さんが話しかけたり、いっしょに遊んであげたりしていたのですが、すごく優しそうでした」
仕事に妥協せず、業界の一部では“気難しい女優”とも言われていたといういしださんだが、“母性の人”でもあったという。いしださんと母子役で共演している俳優の水野哲(60)はこう語る。
「’73年に東芝日曜劇場で放送されたドラマ『初蕾』でごいっしょしました。いしださんが25歳ごろ、私は8歳だったと思いますが、現場ではとてもかわいがっていただきました。
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いしださん演じる主人公のお民と、息子・小太郎は複雑な関係にあり、いしださんも役作りに腐心されたようです。
ラストシーンの撮影に入る前に、私の実母もいっしょに食事に誘っていただきました。母によればその際、いしださんは“子供へ対する愛情”“肉親としての接し方”などについて、熱心に尋ねていたそうです。ドラマで母親としてのリアリティを出すための“取材”という意味もあったのでしょう」
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