愛媛県今治市を中心に広がった山林火災は25日、同市朝倉地区の南東部にそびえる笠松山(標高357メートル)一帯を白煙が覆う事態となった。「朝倉のシンボル」「心のよりどころ」として地元住民に親しまれる山は2008年8月、107ヘクタールの山林を焼失する火災に遭い、まだ復興の途上。山全体が緑に包まれることを楽しみにしていた住民らは「せっかくここまで来たのに」と表情を曇らせている。
08年の山林火災で、笠松山は山全体が燃えるような勢いで延焼を続け、5日後に鎮火した。今回の火災では、発生から3日目の25日夕までに214ヘクタール以上が焼失し、当時をはるかに超える被害に。朝倉北地区では24日夕から夜にかけ、計334世帯698人に避難指示が出された。
市立朝倉小学校に避難し、一夜を過ごした会社員、田所良彦さん(62)は25日朝、白煙が包む笠松山を見やりながら「どうしてもあのころを思い出してしまう。だが、当時よりも今回の方が火は近くまで迫ってきており、緊迫している」と話した。
08年の火災後、愛媛県と市、地域住民らは笠松山の復旧計画を作成した。一部は瀬戸内海国立公園内にあり、景観にも配慮しながら治山工事、防火帯の設置、ボランティアによる植樹などを分担して続けてきた。一方で「自然の回復力を活用して樹林を復活させるには60〜100年は必要」と語られた通り、緑は増えながらも火災の爪痕は各所に残る。
仲間とともに10年ほどをかけ、ヤマザクラ約2500本を市と相談しながら植樹したという同市朝倉上の造園業、越智将人さん(66)は「笠松山から朝日が昇るのを見るのが私の一番の楽しみ。桜でいっぱいにしようと思って成長を楽しみにしていた。本当にショックです」と肩を落とす。5年ほど前から山では小さな花が咲き始めたといい、「今は無事の鎮火を祈るだけ。足を運べるようになればすぐに状態を確かめに行き、手当てをしたい」と祈るように語った。【松倉展人】
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