
3月12日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「日本を名指し“通貨安政策”と“トランプ関税”の生活への影響」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆トランプ大統領が日本の通貨安政策を名指しで批判
浜崎:今回、宗さまには「日本を名指し“通貨安政策”と“トランプ関税”の生活への影響」についてお話しいただきます。
やしろ:トランプ大統領の動きが連日ニュースになるほど活発ですが、ついに日本の通貨安政策を批判してきました。そもそも通貨安政策とは何でしょうか?
宗正:為替レートを金融政策や為替介入などを通じて、人為的に意図的に切り下げる政策のことを通貨安政策と言います。日本円であれば円安の方向に誘導していくことになります。その結果、輸出関連企業の売上が伸びたり、外国に投資している資産の相対的な価値が上昇したりします。
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やしろ:今も含めて、実際に日本は通貨安政策を取ってきたのでしょうか?
宗正:大前提として、この通貨安政策っていうのは本来取ってはいけないものなんです。為替市場や株式市場のようなマーケットには、人為的で意図的な介入をしてはいけない。ただ、そうは言っても「為替介入」ってよく聞きますよね。あれは完全に人為的で意図的な介入になりますが、緊急避難的なときにだけ、基本的には諸外国の了承を得て許される特別なものなんです。
近いところでは、2022年以降に円安が急速に進みましたよね。円安による急激な物価高を抑えるために、日本の政府・日銀はドル売り円買いの為替介入を実際におこないました。ただドル売り円買いで円を買うということは、円高のほうに誘導している訳で、円安政策の正反対なんですよ。
やしろ:なるほど。
宗正:つまり通貨安政策ではなく、言ってみれば通貨高政策なんです。それが今の政府・日銀、日本の政治家の言い分です。ただ、このトランプ大統領の発言がもっと以前からのことを指しているのであれば、それは間違いではないかもしれません。2013年からつい最近まで政府・日銀が進めてきた異次元緩和策とも呼ばれる「大規模な金融緩和政策」がありました。
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やしろ:詳しくは分かりませんが、トランプ大統領の発言があった頃はドル円が150円ぐらいでしたが、数日で146円ぐらいまで動きましたよね。
宗正:そうなんですよね。「円安に誘導するな、けしからん!」とトランプ大統領が言った途端に、為替市場も円高に向かうと。
やしろ:彼の言葉1つで、数円ほど動かす効果があったってことですよね。
宗正:トランプ大統領が今できないことはもう何もないでしょうね(笑)。
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◆今後はトランプ大統領から“個別の指摘”が増える?
やしろ:いずれにしても、トランプ大統領が日本を名指しで批判してきたのは就任後初めてということですが、どのような意図があるのでしょうか?
宗正:政治的な交渉を「ディール」とビジネス用語で呼ぶトランプ大統領のことですから、さまざまな思惑もあり、水面下ではいろいろな動きを探っている可能性があります。一律関税や追加関税の対象国としてメキシコ・カナダ・中国と来ましたが、これはアメリカの輸入額の大きさの順なんですよ。いよいよ日本の番が回って来ても全然おかしくはありません。
12日の午後1時には、鉄鋼、アルミニウムに25%の関税がついに発動となりました。例外措置はないため、つまり日本も含まれているんです。特に日本の鉄鋼製品のアメリカへの輸出規模は大きいですから、それだけ日本国内の関連企業が受ける影響も大きなものになりそうです。
やしろ:そうなんですね。
宗正:通貨安政策で日本を名指しで批判しつつ、先ずは全ての国を対象にした鉄鋼とアルミニウムの関税を発動しました。今後は日本に対して個別に何らかの対応をしてくる可能性が高いと見ておいた方が良さそうです。
◆相互関税による日本への影響は…
やしろ:そして最近、トランプ大統領が相互関税という言葉を使っているようですが、これはトランプ関税とは別物なのでしょうか?
宗正:実際に発動されれば、紛れもなくトランプ関税の中の1つということになると思います。アメリカからの輸入品に高い関税をかけている相手国に対してアメリカも高い関税をかける、相互に同じ税率をかけ合うのが相互関税の典型的な考え方です。
同じ輸入品には同じ税率の適用といった方法以外にも別の形があります。税率の差の分だけ別の製品に追加関税をかけるという方法もありますし、相手国の平均税率に応じて、追加で課税するなんて方法もあります。
トランプ大統領は最近、相手国の為替政策も相互関税適用の根拠になると言い始めているので、通貨安政策で批判しはじめてきたことには注意が必要ですね。
やしろ:相互関税が現実になると、日本にはどのような影響が出るのでしょうか?
宗正:今お話しした相互関税の形の違いでその影響の度合いも変わってきますが、現実的に可能性として高いのは、それぞれの輸入品目の税率を同じにする形、原則的にはこの形になると思うんですよね。こうなる可能性が一番高いというのが、一般的な見方です。
ただトランプ大統領は、第一次政権のときにこんなことを言っているんですよね。「日本に輸出する米国産牛肉には約38%の関税がかけられているのに対して、日本の自動車をアメリカに輸入する際の関税は『事実上ゼロ』だ」と。
当時のこの考え方が今も変わっていなければ、米国産の牛肉に38%の関税をかけているのだから、日本の自動車にも38%の関税をかけますよと言い始める可能性もなくはないんですよね。
やしろ:交渉の1つ目として、そのカードを切ってくることがあるかもしれないですね。
宗正:そうなんです。自動車は日本を代表する輸出産業ですから、日本経済への影響は計り知れません。
◆景気悪化につながる可能性
やしろ:相互関税も含むトランプ関税ですが、我々の生活にはどのような変化をもたらしそうですか?
宗正:日本だけではなく、アメリカ国民の生活にも物価高という動きを通じて悪い影響を及ぼします。個人消費の悪化は、どこの国でも景気の低迷につながります。視点を少し変えてみると、今年に入ってアメリカの株式市場は軟調に推移していますが、アメリカの株式市場の動きは世界経済に連動しているため、今や世界経済の足かせになりつつあります。最近のトランプ大統領は「一時的なアメリカの景気後退も容認する」といった内容の発言もしています。
やしろ:そうですね。それでアメリカも日本も株価が下がっていますよね。
宗正:つまりトランプ関税による企業業績の悪化、株式市場の低迷などの行き着く先は、日本の景気の悪化ですから、当然生活に与える影響は良くないです。トランプ関税に関わる対応というのは、もはや経済的な課題というよりも完全に政治的な課題です。日本の政治家も対米政策としての認識で取り組まないと、とんでもないことになります。
やしろ:日本の政治家の方々にとっては、ある意味では手腕の見せどころというか、気概の見せどころというか、日本国民我々の生活をどこまでイメージして頑張ってくれるかという、本当に正念場ですよね。
宗正:こういうときのための政治家です。
やしろ:個人個人でいろいろな思いがあるかもしれないですが、我々も日本の政治家を応援していかないといけません。1ヵ月後、2ヵ月後に何が起きるかまったく分からないですもんね。
宗正:関税についてのトランプ大統領の発言は、昨日と今日で言っていることが全然変わってくるのも普通ですからね。
やしろ:関税の流れで、トランプ大統領は日本の消費税についても言及していますよね。消費税自体は日本政府からしたら撤廃したくない訳じゃないですか。
だからそこだけは触らせないように、関税については他のところで条件を飲む……といったような駆け引きもあるのでしょうか?
宗正:日本やアメリカ、欧州各国が加盟する世界貿易機関(WTO)という組織があります。WTOは相手国によって関税率を調整してはいけないというルールを定めているので、先程お話した相互関税自体も違反行為になってきます。トランプ大統領はその事実も分かった上でやっているんだと思うのですが、そんな状況なので日本の消費税の言及に関しても、ディールの1つではないでしょうか。
やしろ:トランプさんは国連やWHO、WTOも含めて、アメリカが脱退してもいいというカードをちらつかせていますよね。
宗正:その種の団体は、アメリカが最も多額の運営費用を出していたり、主導権を握っているケースが大半です。「アメリカが抜けたら他の国でやってください」となる前に、アメリカが抜けた時点で事実上の解散となる可能性がありますね。
やしろ:なるほど。勉強になりました。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月〜木曜17:00〜19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ〜)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/
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