
入社を後悔するような会社には入りたくないものだが、運悪く入ってしまったら早めに去るしかないだろう。東京都の60代男性は以前、社長を含め従業員が5人の会社に勤めていた。
「高齢の社長と上司、編集社員が一人で自分が入って二人、経理が一人という小さな会社です」
そこは少数精鋭とは言い難い会社だったようだ。(文:天音琴葉)
「見てみろ。編集の仕事をしたい奴はたくさんいるんだ」
高齢の社長は月に数回、顔を出す程度だったため、実質的には上司が仕切っていたというが……
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「朝来て指示を出すといなくなります。編集の同僚は『地獄だ地獄だ』とブツブツ言いながら机に向かっています。上司が会社にいる時は面接の時だけ、入社してからずっとそんな感じでした」
役に立たない上司のせいで、同僚と男性の二人だけで編集作業を行っていたようだ。上司はよく面接をしていたが、一向に新人が入ってこなかった。
「おかしいなあと思っていたら、上司が同僚に『見てみろ。編集の仕事をしたい奴はたくさんいるんだ』と言っているのを聞いて、雇う予定がないのに面接をしてると気が付きました。ハロワの登録は無料です」
上司は無料だからとハローワークに求人を出し、面接することで忙しいフリをしていたということだろうか。それとも己の自尊心を満たすための面接だったのか……。上司の思惑はよくわからないが、採用する気がないのに面接をされては、応募者も気の毒だ。また男性と同僚は、意味のない面接をする暇があるなら編集作業を手伝ってほしかっただろう。
ついに同僚は、無理が祟ったのか、アホらしくなったのか、半年ほどして職場に来なくなった。休職もしくは退職したようだ。「仕事は好き」という男性は、いなくなった同僚の分もなんとかこなしていたものの、さすがに編集者一人では大変で、代わりを雇ってもらいたかったに違いない。ところが上司は相変わらず無意味な面接を続けていたという。
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「最初から雇う気がなく、上司はなんの仕事をしているかもわかりません」
愛人との旅行費用を取引先に請求していた上司
それからしばらく経った頃、取引先からこんな問い合わせを受けたという男性。
「『取材費に京都往復と宿泊費用があるけれど、記事が無いのはどう言うことだ』と言われました。以前からそんな事例があったということです。経理の人に聞いたら上司が愛人と旅行するたびに経費をして計上しているそうです」
男性が携わっていた媒体がどういう性質のものだったのかは明かされていないが、一般的なこととして、クライアントがいる広告案件や制作請負案件で取材が必要になる場合、取引先に別途費用を請求することはある。だが当然、取材先であるはずの京都に関する記事がなければ、取引先がおかしいと気づくのは時間の問題だ。
意味のない面接ばかりして本業をサボっている上に、愛人との旅行費用を取引先に経費として請求していたことを知った男性は、心底呆れたに違いない。水増し請求や架空請求は詐欺罪に当たる可能性がある。
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すべて知った上で男性は、上司の慌てる反応を見たかったのだろうか。取引先から「京都の記事が無いのに経費が請求されてる」という問い合わせがあったと疑惑の本人に伝えた。すると驚きの言葉が返ってきたのだ。
「『記事になるほどのものがなかったとなんで言わなかった』と上司はキレてしまいました」
逆ギレされ、「やってられない」と思った男性が退職する旨を伝えたら、またしても想像の遥か上を行く返答をされたのだった。
「『いくら欲しいんだ』と怒ってしまいました」
口止め費用を渡そうとしてきた上司に軽蔑の目を向けただろう。男性が退職の意思を伝えた翌日も上司は例の如く面接をしていたそう。だがこの時は、採用する気だったようだ。さすがに編集部員なしに仕事が回らないと判断したのだろう。面接にやってきた応募者は即採用されたようだ。入社も早かったという。男性は、さっさと仕事を引き継いで退職したそうだ。
「他にも、何も仕事をしないダミー会社や、半年で社員が半分入れ替わるような会社などいろいろ経験しました」
とこぼした男性は現在、休職中だという。再就職の際には、良い会社に出会ってもらいたい。
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