松島聡、タイプロを終え「自分の武器になりそうだなと思うところも見えてきた」 役者業を通して「自分という人間を更新」【インタビュー】

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2025年03月26日 08:20  エンタメOVO

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松島聡 (ヘアメーク:朝岡美妃(Nestation)/スタイリスト:渡邊奈央) (C)エンタメOVO

 長澤まさみと森山未來が14年ぶりにタッグを組むBunkamura Production 2025「おどる夫婦」が4月10日から開幕する。とある夫婦の約10年間の軌跡を描く本作で、妻・キヌの弟で、普段は屈託がないものの時折情緒が乱れる光也を演じるのは、timeleszとしても活躍する松島聡。松島に役者業への思いや本作への意気込み、理想の夫婦像などを聞いた。




−本作への出演が決まり、今、この作品にどのような感触がありますか。

 まだ(取材当時は)稽古をしていない段階なので、自分の役柄も明確に固めきれていないこともあって、未知数でどんな作品になるのだろうという気持ちです。夫婦の関係性や人間ドラマをどう(作・演出の)蓬莱(竜太)さんが描いていくのか期待と楽しみが大きいです。以前、蓬莱さんが作・演出を務めた「広島ジャンゴ2022」を観劇させていただいたときに、現代社会においての人との関わり方や複雑な人間性をエンターテインメントとして描かれていたのがすごく面白いと感じました。今回はそれよりも抽象的に描くのかもしれませんが、自分の演じる役、そしてこの作品に対する理解度をどう高めていくのかが課題になるのではないかと思っています。

−蓬莱さんとはこれまでにどんなお話をされましたか。

 タイプロ(timelesz project)を見ているとおっしゃってくださいました。誰推しかは聞きませんでしたが(笑)、1ファンとして楽しんでくださっているようでした。すごく気さくでフレンドリーな方で、初めてお会いしたときから距離感を感じることなく接してくださったので、緊張せずにお稽古に参加できるのかなと楽しみです。

−今回、松島さんが演じる光也という役柄についてはどのように感じていますか。

 脳の病気で短期的な記憶がなくなってしまうという障がいを持っている青年なので、それに対する葛藤だったり、ふがいない気持ちを持っています。言語化することが難しい気持ちを持った役柄をどう伝えていくのか、まだ自分らしくどう表現すればいいのかが分からないので、蓬莱さんに引き出していただけたらと思います。

−長澤まさみさんが演じるキヌの弟役になりますが、長澤さんとの共演で楽しみにしていることは?

 (長澤は)テレビの向こう側の人というイメージです(笑)。最初にお会いしたのは、舞台を観劇しに行ったときで、少しだけあいさつをさせていただいたのですが、飾らない方でフランクに接してくださって。まだ(取材当時は)名前も覚えてもらっていない気がするので、まずは名前を覚えてもらうところから始めたいと思います(笑)。同じ静岡県出身なので、静岡のお話をきっかけに会話を作っていけたらいいなと思っています。

−では、松島さんが感じている舞台の面白さや難しさは?

 自分にない人物を演じるというところが面白さだと思います。僕は、自分と全く違う人物を演じるよりも、どこか自分とリンクできる部分を探して役と向き合っていく作業が好きなので、今回も自分自身をうまく投影して光也として生きることができればよりリアルに描くことができるのではないかと思っています。ただ、そのリンクさせるという作業はすごく大変で。なかなかハマらない瞬間も多いので、1から作っていきながらも、うまく結んでいく作業ができたらいいなと思っています。

−アイドルとしてグループ活動もされていますが、役者業をすることでグループ活動に影響や刺激があったり、その逆があったりということもありますか。

 僕はその二つは切り離して考えています。そうしないと保てないのかなと。グループ活動のときは、アイドルに振り切ってアイドルとしての自分でいますが、役者の仕事はより自分に近いのかなと思います。もちろんアイドルも自分ではあるのですが、お芝居をしているときは自分自身を見つめ直す時間が多いので、知らなかった自分も知れるし、弱いところや強いところ、恥ずかしい部分を見つめ直す時間にもなります。そして、自分をむき出しにしながら役に向き合っています。それが正しいやり方なのかは分かりませんが、やっぱり苦しい作業ではあります。ただ、自分という人間を更新していくために必要な作業なのかなと思うので、こうして舞台に出演させていただく機会をいただけるのはありがたいことだと感じています。

−そうすると、それぞれに違う醍醐味(だいごみ)があるという感覚ですか。

 そうですね。舞台は自分のファン以外の方も見に来られます。アイドルの現場ってどこか甘えられる環境だと思いますが、舞台ではそうもいきません。僕を知らないお客さまが観劇され、僕が演じた役と作品のズレがあったときにはすごく厳しい意見をもらうこともあります。「本業はアイドルだもんね」と言われるのはすごく悔しいので、一旦切り離して、役者としての役目を果たせるように、自分自身と向き合うことに徹しています。

−ご自身では、役者としての自分の武器はどんなところにあると思われますか。

 良くも悪くも全部100パーセントの力でやってしまうんですよ、僕。0か100で、中間が取れない。何事にも全力で手を抜かない。なので、役に対しても100パーセントで向き合いたい。それが良いところでもあるのかなと思います。ただ、向き合い過ぎるがゆえに作らなくていいところまで作り込んでしまうことがあって。そぎ落としていく作業が大変です。舞台の場合は、1回振り切って作って、後から引き算をしていく方がいいのかなとは思いますが…これは言い訳ですね(笑)。

−ところで、本作への出演が発表された際、「家族のことや『自立とは何か』など、自分に向き合いながら考えることになりそうです」とコメントされていましたが、今、松島さんの中では「自立」とはどんなものですか。

 それは今も悩んでいることです。僕は13歳でデビューして今、28歳になりましたが、どのタイミングで大人になるのか分からないんです。それに自立するタイミングもよく分かっていないのだと思います。静岡から東京に出てきて一人暮らしを始めたタイミングが自立と言えるのか。親元を離れたという意味ではそうですが、僕自身はいまだに自立できている感覚もない。一人で何でもできるようになったら自立なのか。でも、僕の場合はグループ活動があって、仲間あっての自分なので、そうするといつまでも自立したくないと思っているのかなとか、いろいろと考えます。なので、僕にとっては「自立」は永遠の課題です。逆に皆さんに聞きたいです。「自立」っていつだと思いますかって(笑)。

−本作では、ある夫婦の10年間の軌跡が描かれますが、松島さんが思い描く理想の夫婦像は?

 僕は片親ということもあり、自分の両親に対するコンプレックスが、どこかにあります。僕だけでなく、どの家庭にも何らかのコンプレックスはあるのかなと思いますが、そうしたコンプレックスが解消された夫婦でありたいというのが正直な気持ちです。なので、もし僕が父親になるとしたら、「こんな父親がいいな」と思う姿を自分で体現していきたい。自分が両親に感じてきた感謝と受け取ってきた愛情ももちろん大事ですし、そこで欠けていたのかもしれないなと思う部分も備わっている夫婦でありたい。それが僕の理想と言えるのかなと思います。

−4月10日に開幕する本作。4月というと新生活がスタートする時期でもありますが、松島さんはどんな1年にしたいですか。

 今、無事に終えたプロジェクトもそうでしたが、このところ人と関わることがすごく多くて、その中で自分の至らない点っていうのもたくさん見えてきました。逆に、自分の武器になりそうだなと思うところも見えてきて。たくさんの方と出会えたことで、人としての厚みを増すことができたと思うので、そこで得たものをグループ活動や役者としてのお仕事にも生かしていけたらいいなと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

※蓬莱竜太の「蓬」の表記は、1点しんにょうが正式

 Bunkamura Production 2025「おどる夫婦」は、4月10日〜5月4日に都内・THEATER MILANO-Zaほか、大阪、新潟、長野で上演。


Bunkamura Production 2025「おどる夫婦」

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