画像提供:マイナビニュース Uber Technologiesは全世界11の都市で、6つの異なるパートナーと自律走行ロボットを使用したオンラインデリバリーサービスを展開しています。テキサス州オースティンで開催したメディアイベントではAvride(エーヴィーライド)の配達ロボットにより商用化されたサービスのデモンストレーションを取材しました。
○全米に拡大するUber Eatsのロボットデリバリーサービス
Uberによるメディアイベントは現地時間3月4日から、オースティンでWaymoの自動運転タクシーによる配車サービス「Waymo on Uber」が開始されたことを受けて実施されました。同じイベントの中でオースティンのほか、同じテキサス州のダラス、ニュー・ジャージー州のジャージーシティで展開されているAvrideのロボットデリバリーサービスを集まったメディアに見せた格好です。
オースティンでは2024年11月に始まったAvrideのロボットデリバリーサービスについて、Uber TechnologiesのHead of Autonomous Delivery and Operationsであるメーガン・ジェンセン氏が説明を担当しました。
2025年3月現在、オースティン市内では数十件のレストランやカフェなどの店舗が、Uberアプリを通じてユーザーに提供されるロボットデリバリーサービスに加盟しています。
ユーザーがUber Eatsアプリから注文を入れると、チェックアウトの段階で従来の人によるデリバリーかロボットによるデリバリーが選べます。オースティンではUberによるロボットデリバリーサービスの注文を午前10時から午後10時まで受け付けています。
ロボットによるデリバリーも、通常の場合と同様にアプリからリアルタイムで配達状況をマップ上でトラッキングしたり、配達後に評価もできます。配達員に対する「チップが不要」なところがロボットデリバリーサービスのひとつのメリットと言えるかもしれません。
ロボットが目的地に到着すると、ユーザーはアプリの画面に表示されるボタンをタップしてロックを解除。ロボットの天面のシャッターを開けて配達された品をコンテナから取り出せます。シャッターは配送中は常にロックされており、これを解除できるのは注文したユーザーだけなので、いたずらや盗難のリスクはありません。
コンテナには冷蔵・あたための機能はついていないものの、内部は断熱構造としていることから温かいものは温かく、冷たいものは冷たいままキープできます。
ジェンセン氏は、Uberが今後もAvrideのようなパートナーを拡大して配送ロボットによるデリバリーサービスを選びやすい環境を整えていくと話しています。ただ、一方ではUberのすべてのフードデリバリーがロボットだけでまかなえるようにはならないとも、ジェンセン氏は説明を付け加えています。
「Uberには人とロボットによるデリバリーの良さが活かせるハイブリッドマーケットプレイスがあります。すべての配達員の稼働率を維持し、効率を最大化しながらユーザーの体験、加盟店の成果を向上させることが可能です」(ジェンセン氏)
現在はオースティン、ダラス、ジャージーシティで計30台以上のAvrideによる配達ロボットが稼働しています。ジェンセン氏は今後「ほぼ毎月」のペースでAvrideとのパートナーシップによるUber Eatsのロボットデリバリーサービスを、全米の各都市で立ち上げながら、配達ロボットの台数も増やしたいと意気込みを語っています。
また、オースティンでロボットデリバリーサービスが選択できるのは市内中心のダウンタウンエリアに現状では限られています。今後はエリアの拡大も積極的に図るといいます。
○米スタートアップAvrideのロボットが歩道を賢く走り回る
配達ロボットの特徴については、AvrideのHead of Communicationsであるユリア・シュヴェイコ氏が概要を解説しました。
Avrideの小型配達ロボットはNVIDIAのエッジAIデバイス向けの開発キットである「NVIDIA Jetson Orin Nano Super Developer Kit」をベースに開発されています。車体には走行時に測距や障害物の検知を行うためのLiDARのほか6つのイメージセンサー、超音波センサーなどが搭載されています。
4つの車輪で"歩道のみ"を走行する仕様に最適化されており、最大時速は5km/h〜6km/hぐらいまででます。人が小走りで追い越せるぐらいのスピード感でした。
各センサーから寄せられるデータを元に、自律走行を行う際の演算処理は本体に搭載するパワフルなプロセッサーを駆使しながら、すべてデバイス単体で行います。セルラー通信等を併用しながらクラウドで処理を行おうとすると通信の遅延や切断が発生した際に事故やトラブルが発生する場合があるからです。ロボット本体にはLTEとWi-Fiによるネットワーク通信機能も内蔵していますが、これはデリバリーの注文を受けた時に行き先等の情報をインプットしたり、万一の際にロボットがリモートアシスタントに通信して助けを求める用途を想定した機能です。
シュヴェイコ氏は「Avrideの配達ロボットはとても耐久性に優れ、安全で礼儀正しいことが特徴」とも語っています。例えば、ロボットは配達の道中に物珍しさから子どもたちなどに"ちょっかい"を出されることを想定して、人が上に乗っても大丈夫なほどの耐久性を持たせています。反対に、ロボットが万一の故障の際に暴走して、周囲の人や物を傷つけないようシステムに冗長性を設けているといいます。
バッテリーはセルを交換する方式としています。1度のフル充電でおよそ30マイル(48キロメートル)の距離を走行できる目安としていますが、Uberのサービスで検証を重ねた結果、1度のフル充電の中で確実にデリバリーができる最適配達距離は約1〜2マイル(3〜4キロメートル)の範囲という設定になりました。オースティンにはAvrideのロボットを充電・メンテナンス・清掃するための点検整備場があります。
○2025年後半にはUberとAvrideの自動運転タクシーも走行予定
メディアイベントではオースティン市内のアジアンフードのレストランから、Avrideの配達ロボットが徒歩で5分ほどのビルまで注文の品を届ける走行デモンストレーションが実施されました。歩道を歩く人やペットを避けながら、歩道の信号機も正確に判別して、少しゆっくりとですが着実に目的地まで到達する優秀な配達ロボットのお仕事を筆者も目の当たりにしました。
Avrideはオースティンを拠点とするロボット系スタートアップです。元は2017年に自動運転車の開発からスタートした企業でもあることから、デリバリーロボットも企画を立ち上げてからわずか半年で完成させたとシュヴェイコ氏は振り返っています。
自動運転車の開発も続けられており、2025年の後半にはUberと組んでテキサス州ダラスで自動運転タクシーを始める計画も発表しています。なお日本でも楽天グループが東京都内晴海周辺でAvrideの配達ロボットを採用する「楽天無人配送」のサービスを2025年2月27日に開始しています。今後は世界各地でUber Eatsのスタッフとして活躍するロボットの姿が見られそうです。
取材協力: Uber Japan
著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら(山本敦)