松岡昌宏、『家政夫のミタゾノ』が10年愛され続ける理由は「拒否反応」 “変えない”ことにこだわり

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2025年05月11日 12:11  クランクイン!

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松岡昌宏  クランクイン! 写真:高野広美
 女装した大柄な家政夫・三田園薫が、派遣された家庭・家族の内情を覗き見し、そこに巣食う“根深い汚れ”までもスッキリと落としていく痛快“覗き見”ヒューマンドラマシリーズ『家政夫のミタゾノ』。2016年10月のドラマ放送スタートから10年にわたって、主人公の三田園薫(ミタゾノ)を演じるのは松岡昌宏。2025年3月まで放送されていた第7ドラマシーズンに続き、5月16日からは、ドラマ10年目を記念して舞台化第2弾となる『家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂』が上演される。松岡に“ミタゾノ”シリーズや舞台公演への想いを語ってもらった。

【写真】男の色気あふれる松岡昌宏、インタビュー撮りおろしショット!

◆長いキャリアを誇る松岡が舞台版『ミタゾノ』で経験した初体験とは?

 ドラマの世界観をそのままに、ミタゾノが繰り広げる激しいアクションや、知って得する家事ワザを観客の前で“生披露”する『家政夫のミタゾノ THE STAGE』。第2弾の「レ・ミゼラ風呂」は、ミタゾノら「むすび家政婦紹介所」の一行が社員旅行で老舗の温泉旅館を訪れたことから物語が始まる。レトロというよりも、かなり古いその旅館は、見た目に反し、オモテナシは群を抜くすさまじさ。その様子に何かが怪しいと次第に気づき始めた一行。ミタゾノは、旅館の経営が窮地に立たされ、過剰なオモテナシ戦略に生き残りをかけていたことを見抜く…。

――今回の舞台が決まったときのお気持ちを教えてください。

松岡:舞台が決まったのは、先日まで放送していたシーズン7をどうしようかという話をしていたときでした。「せっかくならその流れで一緒に舞台の方も」とお話をいただいて。丸9年シリーズをやらせていただいたということと、今回、いろいろなところに行けるかもしれないとお聞きして、それに食いつきました(笑)。第1弾の舞台では大阪のみで、ほかの地方を回ることができなかったんです。でも、いろいろなところでミタゾノを観てもらえるのならば、テレビで見るのとはまたちょっと違うものをお届けできるのではないかなと思っていました。僕たちの世代なら「この街にドリフが来るぞ!」というような、そんな目線で楽しんでいただけるならいいなという思いで、ドラマの後に舞台もやらせていただくことにしました。

――前回の『家政夫のミタゾノ THE STAGE 〜お寺座の怪人〜』を終えて手応えは感じましたか?

松岡:手応えとはまた違うかもしれませんが…僕は、普通の舞台では絶対にアドリブを入れないのですが、この舞台に関しては「ここで一言」という場面が多々あって、その日のネタがあるので、普段やらせてもらっている演劇と呼ばれる舞台とはまた違うものがあると思います。ある種、ライブ的な、コント的な即興も多く、それは初めて経験しました。そういう意味では、こういうものもあるという経験をできたのは大きかったと思います。普段、僕が立たせてもらう舞台はきっちり作って、できればアドリブはしない。失敗してしまったときやトラブルが起きたときにフォローするためにアドリブが必要なだけであって、僕自身はあまりアドリブを入れるのは好きではないんです。アドリブのように見えて実は全てが決まっているというのが一番面白い。この舞台もある部分では裏でキャストに振っておいて、今日はこのパターンでいこうとすり合わせをして、アドリブっぽく見せているところもあったので、そうした経験はさせていただけたなと思います。

――松岡さんとしては、またミタゾノの舞台をやるのではないかという予感はありましたか?

松岡:前回の千穐楽のときに、「またやりたいね」というお話はしましたが、それはどの現場でもある社交辞令的なものだと思っていました(笑)。ただ、プロデューサーが「もっと観てもらいたい」と言っていたので、それには同感でした。せっかくだったら、いろいろなところで観てもらいたい。それだったらやるかなと。それで実現したのが今回です。

――(取材当時)稽古が始まって1週間ほど経ったと伺っています。今はどんなところに力を入れているのですか?

松岡:今はまだ探り合いです。見ての通り、闇鍋のようなてんでバラバラのキャラクターの役者が揃っているので、これを1つの鍋で調理してはたして料理がうまくいくのかというところがあります。その駆け引きを今、やっている状態なので、それが終わってから、塩コショウをしていきたいと思っています。まだ味付けはしていないです。

◆“ミタゾノ”が愛され続ける理由は「拒否反応」


――舞台とドラマでミタゾノさんを演じる上で違いはありますか?

松岡:ベーシックなものは変わりませんが、テクニカル的なものはどうしても変わってきます。舞台では、動きを大きくせざるを得ないので。ただ、自分の中では頭の中にカット割りが入っていて「上手(かみて)のお客さんはこの角度で見ているな」とか「下手(しもて)のお客さんにはこう見えているな」という絵が浮かぶので、動きは映像と変わらないと思います。もちろん、映像ならば1つの角度だけを意識すればいいのですが、舞台では、セリフを言いながら必ずみんなが見えるようにする必要があります。

――ドラマシリーズを通して、松岡さんの中で「これぞミタゾノ」という明確なビジョンやこだわりが確立されているのだと思いますが、それゆえに舞台にすることに躊躇はなかったですか?

松岡:そもそも舞台芝居を映像化したのがミタゾノのドラマです。普通のドラマではあのような芝居はしないんです。(ミタゾノのドラマは)舞台の動きだし、舞台の発声です。それを映像に撮って流しているだけなので、舞台になったからといって何も変える必要はないんですよ。「むすび家政婦紹介所」のみんなも舞台芝居なので、何も変えていない。だから、舞台にできたんだと思います。

――なるほど。今回、後輩の岡佑吏(AmBitious)さんも出演されます。初共演になると思いますが、印象を教えてください。

松岡:今回、顔合わせで初めて会って、とても自分の世界を持っている人だと思いました。めちゃくちゃ礼儀正しい子なので、なんでこんな人がこの世界にいるんだろうって思います(笑)。きっと、今、自分をどんなキャラクターにしていこうか、模索しているんじゃないのかな? だからなのか実年齢よりとても若く見えました。今、23歳でしょう? 僕が23歳のときは警視正の役をやっていたくらいなので(笑)。今の23歳は全然違いますね(笑)。きっと真逆のタイプなんだなと思います。

――ドラマがスタートして10年目になる本作ですが、こうして愛されている1番の理由はなんだと思いますか?

松岡:拒否反応だと思います、癖の強いものに対する。最初は嫌なんだけど、食べ慣れると好きな人は大好きになるという“パクチー”のようなもの。僕もパクチーは好きですが、最初は食べられなかったんです。最初からダメだとなったらそれで終わりなのでしょうが、「何、これ?」と思っていただけた方にはクセになっているのかなと。

――この10年間、さまざまなエピソードを放送してきましたが、その中で一番好きなエピソードは?

松岡:我々も現場でよくその話になるんですが、シーズン2の第3話の戸塚(純貴)くんと升毅さんが出演してくれた回が伝説的に面白かったです。でも、あのシーズンは、数字としては1番良くなかったはずなんです。なので、面白いものが数字が取れるとは限らないというのが如実に出たエピソードだったと思います。当時は金曜ナイトドラマという枠で放送していたこともあって、グイグイ攻めた話で。あまりにもくだらなすぎて、でもそれが逆に面白くて印象に残っています。

◆シリーズ開始から10年 「ミタゾノは変えない」というこだわり


――松岡さんがこのミタゾノシリーズを10年かけてやってきた中で、役者としてこのシリーズから得たことは?

松岡:普段、出演させてもらっている他のドラマだったら、今のご質問に「こうですね」と言えるのでしょうが、この作品に限っては、こだわったのは最初のシーズン1のときに作ったであろうキャラクターを変えないことなんですよ。あまり色付けもせず、作ったキャラクターを淡々とこなしていくことが求められているのかなと感じるとともに、どこまでやれば喜ばれるのかを考えてきただけでした。観ていただいている方から「こんなところが好き」と言っていただきますが、そこに媚びることはなく、変えることはしない。そのオリジナリティーの中で、背景を少し変えて、パートナーを変えていくことをしてきました。パートナーが変わることで見え方が変わってくるんですよね。彼女たちのセリフの言い方が変わることによって、それを受けるこちら側が変わらなくても、彼女たちが変えてくれるから見方がちょっと変わってくる。そういうことなんです。もし、こだわりを聞かれるのであれば、「ミタゾノは変えない」ということなのだと思います。

――変えたいという思いはなかったですか?

松岡:変えるならやめます。

――変えない難しさは感じますか?

松岡:それはないです。むしろ、変えない方が楽です。だってキャラクターがずっと一緒なわけですから。役作りがいらないんです、この作品は。

――では、本作に限らず、松岡さんが舞台に立つことの面白さ、舞台でのお芝居の魅力はどんなところに感じているのですか?

松岡:元々、自分は舞台はやらないって言っていた人間なんですよ。芸能人になって有名人になりたかったので、それが歌手だろうがタレントだろうが役者だろうがなんでもよかったんです。有名になれればいい。舞台は観てくださる方の人数が限られてしまうので、だからテレビに出たい。ただ、もし道を歩いていて、知らない方から「松岡くんじゃない!?」と言われるようになったら舞台に出ると言っていました。24歳のときに、巣鴨でロケをしていておばちゃんたちに「松岡くん!」と言われて、それで「舞台をやらせてください」と言って、劇団☆新感線の『スサノオ〜神の剣の物語』をやることになりました。僕はそれまで舞台はやっていないんです。それくらいはっきりしていたんですよ。

実際に、舞台に出演させていただき、その世界を味わって感じたのは、やっぱりライブが好きだということでした。ライブをやっていないと、自分の中でズレが出てくるんですよ。ライブは好きだし、そこをずらしたくないなという思いから舞台を続けるようになったというのが一つありました。ちょっとかっこいいことを言うのであれば、映像だけだと芝居が偏るんです。映像の芝居になってしまう。逆に、舞台だけだと舞台の芝居になってしまう。なので、映像も舞台もやる。偏らせたくないと思って、3年に1回くらいのペースで舞台もやらせてもらっていました。

――ここまでお話を聞いてきて、松岡さんがミタゾノの舞台版を作るにあたって、一番気にかけているのは、テレビのファンの方がどう思われるのかなというところなのかなとも感じたのですが。

松岡:そうですね、ミタゾノというキャラクターがあるので。例えば、テレビで見ていた「ドリフ大爆笑」と生で観るドリフのコントはおそらく違うものだったと思います。同じように違うものではあると思いますし、それを全部受け入れてもらおうとは思わないけれど、「ドラマの方が良かったよね」と言われるのは避けたい。出演させてもらう側としては、せっかくだったら「舞台も面白いね」にしなくてはいけないと思っています。来てくださった方に、「やっぱりドラマでいいわ」と思われたくないという気持ちで臨んでいます。

(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)

 舞台『家政夫のミタゾノ THE STAGE レ・ミゼラ風呂』は、東京・EXシアター六本木にて5月16日〜6月8日、大阪・森ノ宮ピロティホールにて6月13〜17日、石川・七尾市文化ホールにて6月21・22日、愛知・東海市芸術劇場 大ホールにて6月28・29日、広島・上野学園ホールにて7月5・6日、宮城・名取市文化会館 大ホールにて7月12・13日上演。
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