NHKマイルCを制覇したパンジャタワー(撮影:下野雄規)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆血統で振り返るNHKマイルC
【Pick Up】パンジャタワー:1着
現3歳が初年度産駒の新種牡馬は、今年の春、エンブロイダリー(桜花賞/父アドマイヤマーズ)、パンジャタワー(NHKマイルC/父タワーオブロンドン)と2頭がGI馬を出しました。
父タワーオブロンドンは、ミスタープロスペクター系のレイヴンズパスを父に持つ持込馬(外国で種付けされて日本で生まれた馬)で、4代母マーガレセンにさかのぼるファミリーは世界屈指の名牝系です。現役時代にスプリンターズSを制覇したほか、セントウルSと京王杯スプリングCでコースレコードを樹立。後者で樹立した1分19秒4という東京芝1400mのレコードタイムは、先日、トウシンマカオに破られるまで6年間も生き続けました。サンデーサイレンスともキングカメハメハとも無縁なので、ほぼどんな繁殖牝馬とも交配できるメリットがあります。
母クラークスデールは不出走馬ですが、ダービー馬ロジユニヴァースの4分の3妹(母が同じで父同士が親仔)で、マキャヴェリアンを3×3で持つというユニークな配合構成です。マキャヴェリアンはきわめて影響力の強い超良血馬で、ストリートクライ、ハルーワスウィート、ホワイトウォーターアフェア、ソニンクなどの父となっただけでなく、シャマーダル、ダークエンジェル、メーマス、ゾファニーといった海外の名種牡馬の母の父でもあります。同じく“マキャヴェリアン3×3”を持つ馬には、仏二冠を制して種牡馬としても大成功しているロペデヴェガがいます。
タワーオブロンドン産駒は、これまで芝では1400mまでしか勝ったことがありませんでした。マイル戦以上の芝で初めて挙げた勝ち星がGI制覇となっています。
◆血統で振り返る京都新聞杯
【Pick Up】ショウヘイ:1着
父サートゥルナーリアは現3歳が初年度産駒の新種牡馬。ショウヘイはファンダム(毎日杯)に次ぐ2頭目の重賞勝ち馬となりました。種牡馬同期のアドマイヤマーズ(エンブロイダリー)、タワーオブロンドン(パンジャタワー)、モズアスコット(ファウストラーゼン)、ナダル(メルキオル)なども重賞勝ち馬を出しており、この世代は優秀です。
サートゥルナーリアは現役時代に皐月賞、ホープフルSなどを勝ちました。兄のエピファネイア、リオンディーズがすでに種牡馬として結果を出しているので、産駒がデビューする前から生産界での評価も高かったのですが、期待にたがわぬ活躍ぶりを見せています。
母オーロトラジェはミッキークイーン(オークス、秋華賞)の半妹にあたる良血。「母の父オルフェーヴル」は連対率19.9%、1走あたりの賞金額198万円ときわめて優秀。わが国で供用された種牡馬に限定すると、2015年以降、母の父として400走以上した種牡馬のなかで、連対率は1位、1走あたりの賞金額は4位。ブルードメアサイアーとして前途洋々です。
ショウヘイは450kg台の小柄な馬体ですが、大舞台向きの底力あふれる血統構成で、ここにきて馬が良くなっているので、次走の日本ダービーでも侮れない一頭でしょう。