90年代「平均視聴率20%超ドラマ」主演・51歳俳優が久しぶりにメディアに。現役な色っぽさとスター性とは

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2025年05月13日 16:00  女子SPA!

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中国「無印良品」公式サイトより
 金城武が、久しぶりの芸能活動だと話題である。アジア映画を代表するスター俳優であり、平均視聴率が20%を超えた主演ドラマ『神様、もう少しだけ』(フジテレビ系、1998年)などの日本のテレビドラマにも出演した。

 話題を集めているのは、中国の無印良品が新たに発表した広告ビジュアル。これを俳優仕事にカウントするかはともかくとして、2017年に撮影された映画『風林火山』は公開延期状態だ。

 その近影と近況が常に話題になる金城武。男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が解説する。

◆一躍世界に知られた名作映画

 カメラがあって俳優がいる。それだけで映画という表現が成立するわけではない。カメラと被写体となる俳優の間に有機的な関係性が必要である。有機的な関係性とは、アクションと運動と換言してもいい。

 つまり、俳優が動く(アクション)。その動き(運動)をここしかないとうポジションに置かれたカメラが捉える。それを見た観客が、前のめりになって画面を見つめる。画面上を移ろう一瞬の動きを(観客が)逃さず瞳に焼き付けたいと思う衝動。この衝動が映画表現だと定義したような世界的名作がある。1994年に公開された『恋する惑星』である。

 監督は、ウォン・カーウァイ。カーウァイ監督が向ける手持ちカメラがすくい上げた金城武の名前が一躍世界に知られた映画作品だ。細かいカット割のリズムに合わせて金城武が動く。そこにはただ表現があるだけ。これが映画だという瞬間がきらめく。

◆現在の金城武が話題の映像

『恋する惑星』では、金城演じる刑事・モウが恋する相手にひたすら電話をかける冒頭場面が印象的である。相手が好きだというフード屋の前にある公衆電話を陣取り、受話器を耳にあて続ける。途中、受話器を持ちかえたりする瞬間の刹那的きらめきをカメラは逃さずに捉える。

 後景にフードが並ぶガラスケースがあり、前景の金城との光のコントラストが美しい。カメラはここしかないというポジションから、本作をきっかけに世界的俳優になる金城武の生々しい魅力を存分に引き出す。

 この冒頭場面のいくつかのショットとその積み重ね方が、金城武の取扱説明書みたいになっている。そこには金城武リアリズムとでも呼ぶべき、映画のきらめきが詰め込まれている。同作から実に30年。現在の金城が、稀有なスター性を懐かしく感じさせながら、よりあざやかな存在感を発揮している映像が話題なのだ。

◆現在51歳の金城武の魅力

 2025年3月28日、中国の無印良品で新CMが発表された。27日にウェイボー(中国最大のSNS)公式アカウントに金城の広告ビジュアルが投稿されると、久しぶりのメディア出演にわいた。SNS上ではさらに、2分間のコンセプト映像が公開され、これがまた輪をかけて色っぽい。

 開始30秒ほどまで、金城の正面ショットがなかなか映らない。手元や腰元のアップが映り、いよいよ正面ショットかと思ったら、ピンぼけショットが挿入される。早く見たいというのに、やたらじらされる。

 その分、待ちに待った正面ショットを見たときは感動ものである。感動ものなのに、さりげない。何だかじらしてごめんね。みたいな心の声が聞こえるように照れ笑いする。金城は、現在51歳の魅力をワンショットごとに丁寧にのせていく。

 そういえば、2024年にも沖縄の不動産を売却するとかで、ミステリアスな私生活を開示する近況がネット記事になっていた。今回の無印良品の広告もそうだが、時間経過を豊かな厚みとして感じさせる金城武は、いつでも話題になる、世界的スターだ。

◆次なる近影と近況を待望

 ところで、クエンティン・タランティーノ監督など、カメラと俳優と監督が三拍子揃った『恋する惑星』に熱狂した映画人は多い。日本だと、東京国際映画祭や大阪アジアン映画祭のプログラミング・ディレクターとしてでアジア映画の紹介に尽力してきた暉峻創三(てるおか そうぞう)が代表的存在。

 この間、筆者は暉峻本人から、1990年代当時リアルタイムでウォン・カーウァイ作品に接した熱気がいかにすさまじかったかを聞いた。その上で、カーウァイ作品に対する熱狂が、もし金城武が出演していなくても同じだけ生まれたのかどうかなどと疑問符を浮かべてみたくなる。

 金城とカーウァイ監督再タッグ作である『天使の涙』(1995年)では、序盤は香港の大スター俳優レオン・ライがひたすら色っぽさを振り撒くが、途中カメラがぐわっと寄って小部屋から初登場する金城がタバコを吸うアップを見ると、気持ちをもっていかれる。レオン・ライか金城武か。どっちを選ぶかなんて悩ましい! なんてどうでもいい選択に迷いながら、金城武の次なる近影と近況を貪欲に待望する。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修
俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu

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